週末に発表された米雇用統計は失業率が6.71%、非農業部門雇用者数が19.2万人の増加となりました。今回発表された雇用統計では過去2か月の非農業部門雇用者数が上方方修正(2月:+17.5万人⇒+19.7万人、1月:+12.9万人⇒+14.4万人)されました。失業率は労働参加率が増加した半面、失業者数も増加したため、小幅に悪化しています。
項目 | 1月 | 2月 | 3月 |
雇用者数増減 |
+144 |
+197 |
+192 |
雇用者数 |
137,539 |
137,736 |
137,928 |
財生産 |
18,876 |
18,916 |
18,941 |
民間サービス |
96,831 |
96,979 |
97,146 |
政府 |
21,832 |
21,841 |
21,841 |
失業率 |
6.58% |
6.72% |
6.71% |
労働参加率 |
63.0% |
63.0% |
63.2% |
source:U.S. Bureau of Labor Statistics
米国の雇用統計からは、非農業部門雇用者数が19.2万人の増加となり、更に過去2か月分が上方修正されたことから、FRBがFOMCで量的緩和縮小を継続することが示されたとみられる一方で、時間当たり賃金が横ばいとなったこと、非正規雇用の増加が雇用者数を押し上げていたことは、市場のFRBによる利上げ時期前倒し期待を低下させたようです。ただ、米株価は週末調整と来週から本格化する米決算発表を前にした利益確定(?)とみられる売りに押され、NYダウが160ドル弱下落した流れが継続するかどうかが注目されます。また、ユーロは追加緩和の話題がどこまで継続するか、豪ドルは週後半の失業率、新規雇用者数が注目されることになります。
【ドル/円】
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先週は米ISM景況指数の小幅悪化などがあったものの、ADP雇用調査など雇用に関しては期待感が出たこと、本邦の景気対策への期待もあり、ドル/円は本年1/23以来の104円乗せとなりましたが、週末にはNYダウの160ドルの下落などにより103円台前半まで押し戻されました。上にも書きましたが、米国の雇用統計はヘッドラインこそよかったものの、非正規雇用が増加していたこと、時間当たりの賃金は横ばいにとどまったことで、市場はややネガティブな反応となっています。
今週は日銀の7-8日に金融政策決定会合が予定されていますが、前回の黒田日銀総裁の発言からは、今回会合での追加緩和の可能性はほとんどありません。ただ、今月30日の経済・物価情勢の展望の公表と併せて追加緩和実施への期待もあることや、黒田日銀総裁の記者会見で、追加緩和に対するヒントが出てくる期待もあると思われますので、ドル/円は底堅く推移することが予想されます。また、9日(日本時間10日午前3時)に公表される米FOMC議事録は、タカ派的な内容だったことで、これが再評価される可能性がありますが、4/3高値の104.112円を上抜けていくほどの力はないものと思います。週末のミシガン大消費者信頼感指数が注目されると思いますが、トレンドを作るまでのインパクトはないため、レンジの動きを予想しています。
チャートでは一目均衡表(日足)の遅行線が雲の上限に押さえられて下落、ストキャスティクス(スロー)は90以上でデッドクロスしました。直近サポートとみられていた3/7高値の103.751円を下抜けたこともあり、雲の上限の103.096円がサポートとならない場合には、転換線(102.917円)と基準線(102.658円)、21日移動平均線(102.605円)がある102円台後半までの下落の可能性が高まります。
【ユーロ】
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先週はユーロ圏消費者物価指数(HICP)が前年比+0.5%に低下、ECB理事会後のドラギECB総裁の記者会見では、
- ECBは更なる追加緩和を排除しない
- ECBは量的緩和策(QE)についても、今日、協議を行った
- 先月は量的緩和について特に議論しなかった
- ECBは、マイナス預金金利の可能性について協議した
- マイナス預金金利、本日の議論で関心が高かった
と発言、市場は予想以上のハト派的な内容にユーロ売りに反応しました。ただ、週末にコンスタンシオECB副総裁は「前日の理事会で量的緩和(QE)をどのように実施するかについての詳細は協議しなかった」、クーレECB専務理事は「ユーロ圏経済の回復継続に低金利は必要ながら、量的緩和は当面は不要である」と発言、これらのことからは量的緩和(QE)は幅広く議論されたものの、一般的な内容にとどまったとの見方ができるということです。ということは、むしろ先月のECB理事会の消費者物価の下振れは一時的な減少とECBが認識しているとの見方が正しいのではないかと思います。
今週はユーロ圏では7日にドイツ鉱工業生産、9日にドイツ貿易収支、10日にフランス鉱工業生産と消費者物価指数の発表が予定されているものの、注目度がそれほど高くないため、量的緩和の話題だけで更なるユーロ売りにつながる可能性は低いのではないかと思っています。
ユーロ/円は3/7高値の143.778円に届かず(143.446円止まり)反落、一目均衡表(日足)の転換線と基準線を僅かながら下抜けしました。雲の上限が140.948円にあり、雲の厚みがあるため、この付近ではサポートされるのではないかと思いますが、遅行線が雲の中に入っているため、3/28の安値の139.966円近辺まで下落するかもしれません。ユーロ/ドルは1.38ドル台では21日移動平均線に止められ、一目均衡表(日足)の転換線がレジスタンスとなって、雲の上限まで下落してきました。雲の厚みがなく、一時下抜けていることで、2/27安値の1.36428ドルがサポートとならない場合には、1/20安値の1.35072ドル近辺まで下落する可能性もあります。
【ポンド】
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英国は先週発表され製造業PMIが55.3(予想56.7)、建設業PMIが62.5(予想63.0)、サービス部門PMIが57.6(予想58.2)と市場予想から悪化となっています。週前半にはM&Aなどの要因で堅調推移となっていましたが、これによりポンド/ドルは1.66ドル後半から1.65ドル後半まで、ポンド/円も173円前半から171円前半まで調整となりました。今週は、英中銀の金融政策員会(MPC)が予定されているものの、これまでのカーニー英中銀(BOE)総裁らの発言からは、政策金利および、資産買入れプログラムの変更はないものと思われ、市場も特に注目はしていないとみられます。
むしろ、8日(火)の鉱工業生産や9日(水)の貿易収支の内容が注目されるのではないでしょうか。ただ、英国の景気に関しては中長期的に強いとの見方が強いため、足元の景気悪化についての反応はそれほど検挙ではないでしょう。加えてECB理事会およびドラギECB総裁の記者会見ではハト派的な内容となっていたことで、ユーロ/ポンドではポンドがサポートされると思われます。ポンドが主体というよりも、引き続き外的な要因でポンドが選好されるかどうかが決まると思われます。そのため、注意したいのは米株価が調整入りした場合で、となると、ポンドの調整が大きくなる可能性があります。
ポンド/円は一目均衡表(日足)の転換線(170.746円)と基準線(170.662円)に接近してきています。これに21日移動平均線が170.310円にあるため、このレベルはそこそこサポートが厚いと思われますが、ここを下抜けた場合には雲の上限の169.30円近辺までの下落も予想されます。一方、上は4/3高値の173.123円が足許でのレジスタンスと思われ、3/7高値の173.561円を超えられていないため、戻りは鈍くなるのではないでしょうか。ポンド/ドルは4日れんぞの下落となり、一目均衡表(日足)の雲の中に入ってきました。足許では雲の下限が1.65352ドルがサポートとみられますが、これを下抜けると3/24安値の1.64640ドル近辺までの下落が予想されます。戻りは2/17高値の1.68209ドルから引いたトレンドラインの1.6720ドル近辺と思います。
【豪ドル】
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豪ドル/米ドルは上昇一服かと思われましたが、週末に0.9307ドルまで上昇、豪ドル/円は週末に一時96.50円まで上昇したものの、96円は維持できませんでした。中国の景気刺激策期待が豪ドルを支えている面がありますが、直近の豪ドル上昇については、スティーブンス豪準備銀行(RBA)総裁や豪準備銀行(RBA)での声明などで、豪ドル高牽制発言が依然と比べトーンダウンしていることで、豪ドル高は黙認去れていると市場では見ていると思います。先週発表された中国の製造業PMIおよび非製造業PMIはどちらも僅かながら50を上回っていることで、直ぐの景気刺激策は実行されないと思いますが、期待が残る以上は豪ドルが底堅く推移することが予想されます。今週は10日(木)に豪の失業率、新規雇用者数と中国の貿易収支の発表が予定されていますので、市場はこの日に注目していると思います。雇用に関しては、7日のANZ求人広告件数の発表を見たいと思います。先月は同件数が前月比で5.1%の伸びとなっていたこともあり、ここで市場の期待度がはっきりすると思われます。一方で、先月の大幅な上昇が一時的なものなのかどうかも見極めたいところで、スティーブンス総裁は、雇用の下振れに注意との発言を行っていることもあり、注意をしたいところです。
中国の貿易収支は市場予想が18億ドルの黒字と、前月の229.9億ドルの赤字からは大幅に回復する見通しです。上にも書きましたが中国の一連の経済指標は悪化しているとまで入っていないので、よほどの悪化がない限りは景気対策への踏み込みはないものと思います。そのため、期待感は続くものの、対ドル、対円で調整が出やすい週となるのではないでしょうか。また、米株価が調整となると豪ドルの調整となる可能性は高くなります。
豪ドル/円はストキャスティクス(スロー)が90以上でデッドクロスしているものの、連続上昇となっていることで信頼性は全くありません。一方、移動へ金銭、一目均衡表(日足)からは上昇トレンドが示されていることで、2013年4月高値の105.42円と2013年安値の86.407円を100%としたフィボナッチ61.8%戻しの98.12円まで中期的に上昇する可能性があります。豪ドル/米ドルは一目均衡表(週足)では基準線(0.9208ドル)がサポートとなりました。日足では転換線(0.92128ドル)が足許サポート、ストキャスティクス(スロー)は70以上ながら、ゴールデンクロスをする可能性があります。3/28高値の0.92944ドルを上抜けて0.93ドル台に一時入ったことで、上昇が続く可能性が高くなったと思われます。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
101.2 ~ 104.2 |
ユーロ/ドル |
1.358 ~ 1.382 |
ユーロ/円 |
138.4 ~ 142.8 |
ポンド/円 |
167.5 ~ 173.6 |
豪ドル/円 |
94.3 ~ 96.7 |
NZドル/円 |
87.2 ~ 89.9 |
南アランド/円 |
9.5 ~ 9.85 |
■重要イベント
4/7(月)
08:50日本 3月 外貨準備高
14:00日本 2月 景気先行指数(CI)速報値
14:00日本 2月 景気一致指数(CI)速報値
16:15スイス 3月 消費者物価指数(CPI) m/m
19:00ドイツ 2月 鉱工業生産 m/m
4/8(火)
未定日本 3月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI
未定日本 日銀金融政策決定会合
08:50日本 2月 国際収支・経常収支
08:50日本 2月 国際収支・貿易収支
10:30豪 3月 NAB企業景況感指数
14:45スイス 3月 失業率
15:30日本 黒田東彦日銀総裁定例記者会見
15:45フランス 2月 財政収支
15:45フランス 2月 貿易収支
16:15スイス 2月 実質小売売上高 y/y
17:30英国 2月 鉱工業生産指数 m/m
17:30英国 2月 製造業生産指数 m/m
21:15カナダ 3月 住宅着工件数
21:30カナダ 2月 住宅建設許可件数 m/m
4/9(水)
10:30豪 2月 住宅ローン件数 m/m
15:00ドイツ 2月 貿易収支
15:00ドイツ 2月 経常収支
17:30英国 2月 貿易収支
23:00米国 2月 卸売在庫 m/m
03:00米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
4/10(木)
08:01英国 3月 英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格指数
08:50日本 2月 機械受注 m/m
10:30豪 3月 失業率
10:30豪 3月 新規雇用者数
未定中国 3月 貿易収支
15:45フランス 2月 鉱工業生産指数 m/m
15:45フランス 3月 消費者物価指数(CPI) m/m
17:00ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)月報
20:00英国 英中央銀行(BOE)金利発表
21:30カナダ 2月 新築住宅価格指数 m/m
21:30米国 前週分 新規失業保険申請件数
21:30米国 3月 輸入物価指数 m/m
21:30米国 3月 輸出物価指数 m/m
03:00米国 3月 月次財政収支
4/11(金)
08:50日本 日銀・金融政策決定会合議事要旨
08:50日本 3月 マネーストックM2 y/y
08:50日本 3月 国内企業物価指数 m/m
10:30中国 3月 消費者物価指数(CPI) y/y
10:30中国 3月 生産者物価指数(PPI) y/y
15:00ドイツ 3月 消費者物価指数(CPI)改定値 m/m
15:45フランス 2月 経常収支
21:30米国 3月 卸売物価指数(PPI) m/m
※m/m = 前月比、q/q = 前期比、y/y = 前年比
経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。