9/17の週の見通し -リスク・オンの流れが目先続くか-
2012/09/19
■今週の見通し 【全体】 先週はドイツ憲法裁判所が条件付きながらESMに対して合憲の判断を行ったこと、オランダの総選挙で与党の自由民主党が第1党となったこと、米国のFOMCでMBS(住宅債券)購入のQE3が発表されたことなどから、リスク・オンの流れとなり、ユーロ/ドルが5/4以来の1.31ドル、ユーロ/円が5/14以来の103円を一時回復しました。ユーロ圏への懸念の後退と追加緩和による資金供給で株価が主導する形でのリスク・オンの流れとなっています。また、週末は本邦日銀の追加緩和期待もあり、ドル/円は反発、クロス円は大幅に上昇しています。このため、17日の週はドイツZEWやNY連銀製造業景気指数などが改善傾向を見せるとリスク・オンの流れが継続しやすいものと思います。その一方で、ユーロ圏財務相会合ではスペインの救済が先送りされるなど、リスクが見えにくくなっていることに注意が必要です。
【ドル/円】 ドル/円は米FOMCでの追加緩和を受けたドル安から一時77.126円まで円高が進みましたが、安住財務相、中尾財務官からの円高けん制発言と18-19日に予定されている日銀の追加緩和期待から週末には78円台前半まで戻しました。日銀の追加緩和には期待がある一方で、総裁、副総裁、審議委員などからは積極的な発言は聞かれていませんし、日銀へ圧力がかかっているようにも感じられません。このため、9月の金融政策決定会合では景気見通しを引き下げるだけにとどめ、10月の展望レポートの発表と追加皮の実施という動きが想定されます。ただ、市場では2011/8/4に日銀による追加緩和の実施と、政府・日銀によるドル買い介入が実施されたことが記憶に残っているため、9/16には一時的に警戒が高まり、ドル/円は79円を試す動きになる可能性があります。ただ、追加緩和が見送られれば再び77円を試しに行くものと思います。
【ユーロ】 テクニカル分析では21日移動平均線からの乖離率がユーロ/円では+3.31%、ユーロ/ドルが+4.26%に達しています。+3%以上は過熱感が出ていると判断できるので、ユーロは楽観的になりすぎている可能性があります。その一方で、シカゴIMMの通貨先物非商業ポジションでは、ユーロのショートポジションは解消が進んでいるとはいえません。実需の資金が動いて、次に投機の資金が動いてくることも考えられますので、18日に発表される独ZEW景況感調査が改善を示すようであれば、ユーロ/ドルで1.35ドル手前、ユーロ/円で105.40円近辺までの上昇がありそうです。
【ポンド】 先週発表された英国の貿易収支、失業保険申請件数がどちらも改善を示していることに加え、ユーロ圏の懸念の後退、米国の追加緩和によって、ポンドの上昇が続きました。ポンド/ドルでは本年4月の下落前の水準となる1.62ドル台まで戻しています。ポンド/円では本年3月からの半値を戻した水準ですが、一目均衡表(週足)の雲の上限となる128.45円近辺を上に抜けていかないと、雲の下に抜け出る可能性が高くなり上値を押さえられることになりそうです。18日の消費者物価指数(予想は前月比で+0.5%)、20日の小売売上高指数(予想は前月比-0.3%)が注目されますが、小売売上高指数が予想より悪化した場合はポンドの上値が押さえられるでしょう。、
【豪ドル・NZドル】 豪ドル、NZドルも米のQE3決定で上昇しています。リスク・オンにセンチメントが変わったものの、欧州通貨に比べると両通貨ともに出遅れ感があります。NZドルはイングリッシュNZ財務相がNZドル高けん制発言を行っているものの、NZ準備銀行(RBNZ)は政策金利を2.5%で据え置くとともに、政策金利は適切としています。このため、リスク・オンの流れが継続した場合にはNZドル買いは継続すると見られ、NZドルは66.50円近辺まで上昇するものと思います。豪ドルは先週、大手鉱山会社が借入金返済の返済を要請したとの報道で一時下落したものの、週末には対ドルで約1カ月ぶりとなる1.06ドルまで上昇しています。18日の豪準備銀行(RBA)金融政策会合議事要旨公表には注意が必要ですが、よほど10月の利下げを示唆する内容でもない限り、リスク・オンの流れが継続する間は豪ドルも堅調な動きが継続すると思います。
■今週の予想レンジ
Ccy |
Low(下) |
|
High(上) |
ドル/円 |
77.10 |
~ |
79.30 |
ユーロ/ドル |
1.2930 |
~ |
1.3330 |
ユーロ/円 |
101.30 |
~ |
104.80 |
ポンド/円 |
125.70 |
~ |
128.40 |
豪ドル/円 |
81.60 |
~ |
83.50 |
NZドル/円 |
64.10 |
~ |
66.50 |
南アランド/円 |
9.35 |
~ |
9.80 |
|
【先週の振り返り】 《月》週明けの東京時間帯は週末に発表された中国の鉱工業生産などの指標の悪化から、豪ドル/円が81.104円、豪ドル/米ドルが1.03632ドルでギャップ(窓)をつけて下からオープンした以外はドル/円が78.220円、ユーロ/円が100.162円、ユーロ/ドルが1.28033ドルで週末とほぼ同じ水準でスタートしました。朝に発表された本邦の4-6月期実質GDPが0.7%と下方修正されたものの、貿易収支が赤字額が3736億円と予想の4395億円より良かったことで、反応は限定的となりました。ドル/円は終日を通して約15銭の値幅と動意に欠け、ユーロ/円、ユーロ/ドルともにロンドン時間までは小動きで推移しましたが、NY時間にはNYダウが下落したことから、ユーロ/円が99.826円、ユーロ/ドルが1.27545ドルまで下落しました。
《火》東京時間帯は目立った材料がなかったこともあり、ドル/円は78.18円から78.25円での非常に狭いレンジの動きとなり、ユーロ/円は99.82円から100.03円まで、ユーロ/ドルは1.2760ドルから1.2794ドルまでのレンジの動きとなりました。ロンドン時間にはドイツ憲法裁判所がESMの判断については延期せず9/12に判断としたことから、ユーロ/円が100.236円、ユーロ/ドルが1.28183ドルまで上昇しました。しかし、ドル/円が仕掛け的なストップロスをつけて77.94円まで下落すると、ユーロ/伝は99.520円、ユーロ/ドルは1.27679ドルまで下落しました。NY時間には格付け期間ムーディーズが「債務削減交渉がまとまらない場合は『Aaa』から『Aa1』に格下げも」との見解を示したことでドル売りとなり、ドル/円は77.701円まで下落、ユーロ/ドルは1.28705ドルまで上昇、ユーロ/円は100.103円まで上昇しました。
《水》東京時間帯はアジアの株価が堅調推移となったことや、ドル/円の77円台での本邦実需の買いが入ったこともあり、ドル/円は77.962円まで一時上昇しましたが、78円を前に戻りは鈍くなりました。ユーロ/円は100円台前半、ユーロ/ドルは1.28ドル台ミドル近辺で底堅く推移しました。ロンドン時間に入ると、ドイツ憲法裁判所がドイツのESM批准を条件付きながら承認したことで、ユーロ/円が99.750円、ユーロ/ドルが1.28152ドルと直前に急落したレベルから100.640円、1.29362ドルへと上昇しました。NY時間に入ると、ドル/円が77.961円まで戻す場面が見られましたが続かず、ユーロはショイブレ独財務相による「ESMは銀行免許を持つことはできない」などとの発言に上値を押さえられたこと、米FOMCを前に様子見気分が強まったことで、ドル/円は77円台後半、ユーロ/円は100円台前半、ユーロ/ドルは1.29ドル手前で小動きとなりました。
《木》東京時間帯は早朝に発表されたNZ準備銀行(RBNZ)の政策金利は2.5%の据え置きで、声明文も前回と買わなかったことでNZドルは小動きとなりました。FOMCを夜間に控えていたこともあり、ドル/円は77円台後半、ユーロ/円は100円台ミドル近辺、ユーロ/ドルは1.29ドル台前半で小動きとなりました。ロンドン時間序盤には中尾財務官が「為替の投機的な動きは看過できない」と発言したものの影響は限定的となりました。NY時間には発表された米新規失業保険申請件数が市場予想より悪かったことで、ドル/円が77円ミドルを割り込んで77.430円まで下落すると、ユーロ/円も99.890円まで連れ安となりました。日本時間1:30に発表された米FOMCでは政策金利は現行で据え置かれたものの、MBS(住宅証券)を毎月400億ドルを期限なしに買いいれることを発表、2014年後半までの超低金利継続見通しを2015年半ばまで延長しました。発表直後には各通貨とも値動きが荒くドル/円が77.126円から77.739円、ユーロ/円が99.491円から100.331円、ユーロ/ドルが1.28536ドルから1.29608ドルの間で上下しました。その後のバーナンキ米FRB議長の記者会見では、「時期尚早の緩和解除はせず」「FOMCは雇用問題を完全に解決する手段を持たず」「FOMCは主たる手段はバランスシートと対話」と発言したことから、ドル売りとなり、ドル/円は77.369円まで下落、ユーロ/円は100.770円、ユーロ/ドルは1.30015ドルまで上昇しました。
《金》東京時間帯はアジアの株価が上昇する中で、ドル/円は77円台後半で推移、ユーロ/円は100.65円近辺から101.40円近辺へ上昇、1.2980ドル近辺から1.3050ドル近辺へと上昇しました。ロンドン時間も欧州株価の堅調な推移を背景としてリスク・オンからユーロ/円が102.287円、ユーロ/ドルが1.31209ドルへと上昇すると、ドル/円も78.230円まで連れ高となりました。NY時間には、米8月の消費者物価指数は市場予想通りの前月比0.6%となったものの、小売売上高が前月0.9%と予想を上回ったこと、米ミシガン大消費者信頼感指数が79.2と予想より大幅に良かったことでドルが買われ、ドル/円は78.389円、ユーロ/円は103.012円、ユーロ/ドルは1.31675ドルまで上昇しました。クローズはドル/円が78.387円、ユーロ/円が102.886円、ユーロ/ドルは1.31261ドルでした。
■日、週、月、年データ ※表をクリックすると拡大します。
source: uedaharlowfx
■注目イベント 9/17(月) ・ 08:01 英国 9月 ライトムーブ住宅価格 前月比 ・ 17:00 ユーロ圏 7月 経常収支 ・ 18:00 ユーロ圏 7月 貿易収支 ・ 21:30 カナダ 7月 対カナダ証券投資額 ・ 21:30 米国 9月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 9/18(火) ・ 10:30 aud 豪準備銀行(中央銀行)、金融政策会合議事要旨公表 ・ 17:30 英国 8月 消費者物価指数(CPI) ・ 17:30 英国 8月 小売物価指数(RPI) ・ 18:00 ユーロ圏 9月 ZEW景況感調査 ・ 18:00 ドイツ 9月 ZEW景況感調査(期待指数) ・ 19:00 南ア 7-9月期 四半期 南アフリカ経済研究所(BER)消費者信頼感指数 ・ 21:30 米国 4-6月期 四半期経常収支 ・ 22:00 米国 7月 対米証券投資(短期債除く) ・ 23:00 米国 9月 NAHB住宅市場指数 9/19(水) ・ 07:45 NZ 4-6月期 四半期経常収支 ・ 未定 日本 日銀金融政策決定会合 ・ 14:00 日本 7月 景気一致指数(CI)改定値 ・ 14:00 日本 7月 景気先行指数(CI)改定値 ・ 17:00 南ア 8月 消費者物価指数(CPI) ・ 17:30 英国 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨 ・ 18:00 ユーロ圏 7月 建設支出 ・ 20:00 南ア 7月 小売売上高 ・ 21:30 米国 8月 住宅着工件数 ・ 21:30 米国 8月 建設許可件数 ・ 23:00 米国 8月 中古住宅販売件数 9/20(木) ・ 07:45 NZ 4-6月期 四半期国内総生産(GDP) ・ 08:50 日本 8月 貿易統計(通関ベース) ・ 13:30 日本 7月 全産業活動指数 ・ 15:00 ドイツ 8月 生産者物価指数(PPI) ・ 15:00 スイス 8月 貿易収支 ・ 16:15 スイス 4-6月期 四半期鉱工業生産 ・ 17:00 ユーロ圏 9月 製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値 ・ 17:00 ユーロ圏 9月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI)速報値 ・ 17:30 英国 8月 小売売上高指数 ・ 21:30 米国 前週分 新規失業保険申請件数 ・ 未定 南ア 南アフリカ準備銀行(中央銀行)政策金利 ・ 23:00 米国 9月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 ・ 23:00 米国 8月 景気先行指標総合指数 ・ 23:00 ユーロ圏 9月 消費者信頼感(速報値) 9/21(金) ・ 21:30 カナダ 7月 卸売売上高 ・ 21:30 カナダ 8月 消費者物価指数(CPI) ・ 21:30 カナダ 8月 消費者物価指数(CPIコア) 経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
|