3/9 今週の見通し-ユーロ、ポンドは手掛かり少ない-
2014/03/09
先週週末に発表された米国の雇用統計は市場の予想に反して、非農業部門雇用者数が増加、失業率は小幅の悪化となりました。一方、イエレン米FRB議長が注目している27週以上の失業者数は384.9万人で37.0%と1月より20万人増加、12月の推移準まで戻っています。
■非農業部門雇用者数(単位:千人)
項目 | 12月 | 1月 | 2月 |
雇用者数増減 |
+84 |
+129 |
+175 |
雇用者数 |
137,395 |
137,524 |
137,699 |
財生産 |
18,811 |
18,872 |
18,894 |
民間サービス |
96,730 |
96,814 |
96,954 |
政府 |
21,854 |
21,838 |
21,851 |
失業率 |
6.68% |
6.58% |
6.72% |
労働参加率 |
62.8% |
62.9% |
63.0% |
米国の非農業部門雇用者数の増加は、今月18-19日に開催される米FOMCでの100億ドルの追加緩和縮縮小を裏付けるものとなりそうです。また、週前半には本邦日銀の金融政策決定会合(現状維持の公算が高い)、週末に発表された中国2月の輸出が前年比18.1%減少していたこと、ウクライナのクリミア自治共和国で16日にロシアへの編入を求める住民投票が実施される(クリミア・タタール人は編入に反対)ことなどで、これを認めないウクライナ暫定政府・欧米とロシアの対立が深まるようであれば、リスク回避の動きにつながりやすくなります。
【ドル/円】
(c)source: uedaharlow ltd.
日経新聞電子版に「公的年金、途上国で投資 高利回り狙う-世銀と連携、アフリカなどでインフラに-」が出ていました。GPIFが世界銀行グループの国際金融公社と日本政策投資銀行と共同で途上国のインフラや未上場会社などに投資する方向で調整に入っているようです。先週、厚労省の草案で「国内債に偏った資産構成の見直し」が入っていたことで円売りに繋がった経緯があり、この材料が週初めの円売りに繋がるかどうかです。一方、本邦の経常赤字と貿易赤字は増加予想となっていることで、市場予想以上に赤字が増加していた場合には円売りに反応すると思います。一方、10-11日で予定されている日銀金融政策決定会合では、消費税引き上げ前に追加緩和を実施する可能性は低いと思われるため、一部の期待は失望に繋がるものと思いますが、影響は限定されると思います。むしろ、注目は13日の米小売売上高、週末の雇用統計が市場予想を上振れしていたことで、悪天候の影響がほぼ終わったとの見方が市場に出ているため、市場予想より下振れした場合にはドル売りにつながるものと思います。チャートでは一目均衡表(日足)のねじれに差し掛かるため、このまま雲の上に抜け出て上昇が加速した場合には1/2高値の105.434円を目指していくものと思います。
【ユーロ】
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ECB理事会で市場が持っていた追加緩和の方向性すらも否定されたため、週末にはユーロ/ドルが1.39141ドル、ユーロ/円143.778円まで一時上昇しました。ECBは2014年の成長見通しを1.1%から1.2%へ引き上げています。今週はフランスの鉱工業生産、ドイツの貿易収支、フランスとドイツの消費者物価指数速報値の発表が予定されていますが、先週のECB理事会で当面、追加緩和の可能性がなくなったことから注目度は低いものと思います。一方、ウクライナ情勢は欧米とロシアの政治的な駆け引きに終始、ロシアとの関連が深い欧州は経済制裁にも及び腰となっているため、こちらも材料視されないと思います。ただ、クリミア自治共和国では16日に住民投票が予定されているため、週後半には地政学的なリスクが意識され、ユーロの上値が押さえられるものと思います。ユーロ/ドルは一目均衡表(週足)の転換線でサポートされ、5週連続の上昇となっています。昨年12/27高値の1.38922ドルを上抜けていることから、2011/10/31以来となる1.40ドル台への上昇する可能性が高くなっています。ユーロ/円は一目均衡表(日足)の雲の上に抜け出たことから、昨年12/27高値の145.670円を目指していくものと思います。ただ、雲のねじれに差し掛かることから反転の可能性も僅かにあります。
【ポンド】
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ポンドは先週の英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)では、政策金利が据え置かれました。不動産関連が好調なことから、発表される英経済指標もよい内容となっていますが、ECBの追加緩和の可能性が足許低くなったことから、ユーロ/ポンドでのポンド売り、週末の米雇用統計の上振れからドル買いとなったことで、ポンドの上値が押さえられました。今週は、11日(火)の鉱工業生産指数の発表が予定されているくらいで、目立った材料がありません。13日(木)の米小売売上高などの英国以外の要因で動くと思われます。ポンド/ドルは一目均衡表(日足)の転換線がサポートとなり、底堅く推移しています。2/17高値の1.68209ドルと2/24安値の1.65814ドルの間でレンジの動きとなっているため、抜けた方向に動き出すと思われます。ポンド/円は一目均衡表(日足)の雲の上に抜け出ています。まだ上昇にも過熱感がないことで、1/2高値の174.835円を上抜ければ2008年10月以来の175円台への上昇となると思います。
【豪ドル】
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豪ドルは豪準備銀行(RBA)の金融政策では、声明で豪ドル高を牽制していたものの、「不快なほど高い」という強い調子ではなかったことや豪経済に対する楽観的な見方が示されていたことなどで豪ドル買いにつながり、その後発表された豪の貿易黒字が市場の予想以上の内容となっていたことなどで豪ドルは豪ドル/米ドルが0.91ドル台、豪ドル/円は昨年11月以来となる94.470円まで上昇しました。今週は13日(木)は豪の失業率と新規雇用者数の発表が予定されています。また、中国の工業生産、小売売上高などの発表が予定されています。これらがよければ豪ドル高になると思われますが、対ドルで豪ドル高が進むとスティーブンス豪準備銀行(RBA)総裁らが「豪ドル高牽制発言」を行ってくる可能性がありますので、豪ドルの上値も限定されると思われます。豪ドル/米ドルは一目均衡表(日足)の雲の上に抜け出て、1/13高値の0.90848ドルを上抜けました。昨年12/10高値の0.91622ドルを上抜けていけば、昨年11/13高値の0.94466ドルが目標となると思います。豪ドル/円は昨年12/10高値の94.216円を上抜けました。足許では10/22高値の95.673円が目標となると思います。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
102 ~ 104.8 |
ユーロ/ドル |
1.371 ~ 1.408 |
ユーロ/円 |
140.6 ~ 145.6 |
ポンド/円 |
169.9 ~ 174.8 |
豪ドル/円 |
91.9 ~ 95.6 |
NZドル/円 |
86.1 ~ 89.3 |
南アランド/円 |
9.3 ~ 9.8 |
■重要イベント 3/10(月) 06:45NZ 10-12月期 四半期製造業売上高 08:50日本 1月 国際収支-経常収支 08:50日本 1月 国際収支-貿易収支 08:50日本 10-12月期 四半期実質GDP改定値 14:00日本 2月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI 16:45フランス 1月 鉱工業生産指数 17:15スイス 1月 実質小売売上高 21:15カナダ 2月 住宅着工件数 3/11(火) 08:50日本 2月 マネーストックM2 09:01英国 2月 英小売連合(BRC)小売売上高調査 09:30豪 2月 NAB企業景況感指数 未定日本 日銀金融政策決定会合 15:30日本 黒田東彦日銀総裁定例記者会見 16:00ドイツ 1月 貿易収支 16:00ドイツ 1月 経常収支 17:15スイス 10-12月期 四半期鉱工業生産 18:30英国 1月 鉱工業生産指数 18:30英国 1月 製造業生産指数 18:30英国 カーニー英中銀(BOE)総裁発言 19:00南ア 1-3月期 四半期 南アフリカ経済研究所(BER)企業信頼感指数 23:00米国 1月 卸売在庫 3/12(水) 08:50日本 1月 第三次産業活動指数 08:50日本 2月 国内企業物価指数 09:30豪 1月 住宅ローン件数 14:00日本 2月 消費者態度指数 15:30フランス 10-12月期 非農業部門雇用者改定値 17:00南ア 10-12月期 四半期経常収支 18:30英国 1月 貿易収支 19:00ユーロ圏 1月 鉱工業生産 03:00米国 2月 月次財政収支 3/13(木) 05:00NZ NZ準備銀行(RBNZ)政策金利 08:50日本 1月 機械受注 09:01英国 2月 英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格指数 09:30豪 2月 新規雇用者数 09:30豪 2月 失業率 14:30中国 2月 鉱工業生産 14:30中国 2月 小売売上高 16:45フランス 2月 消費者物価指数(CPI) 18:00ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)月報 21:30カナダ 10-12月期 四半期設備稼働率 21:30カナダ 1月 新築住宅価格指数 21:30米国 2月 小売売上高 21:30米国 2月 輸入物価指数 21:30米国 前週分 新規失業保険申請件数 23:00米国 1月 企業在庫 02:00ユーロ圏 ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁発言 3/14(金) 08:50日本 日銀金融政策決定会合議事要旨 13:30日本 1月 鉱工業生産確報値 16:00ドイツ 2月 消費者物価指数(CPI)改定値 17:15スイス 2月 生産者輸入価格 21:30米国 2月 卸売物価指数(PPI) 22:55米国 3月 ミシガン大学消費者態度指数速報値 経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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