5/18 米長期金利が主導の展開は変わらず?
2014/05/18
【今週の見通し】 ECBによる追加緩和観測、英国のインフレレポートでは英中銀が従来通り2015年4-6月期の利上げを想定している(利上げを急がない)ことが示され、イエレン米FRB議長は、必要な限り緩和的な政策を行うなどと発言していることで、債券買いが継続して、長期金利の低下から、円が買われる動きとなっています。 今週も為替自体の材料というよりは米国の長期金利の動向を睨んだ動きとなるものと思われます。そういう意味では、21日のイエレン米FRB議長の講演が手掛かりになると思います。 一方、米長期金利の上昇を阻む要因としては、
- ウクライナ情勢(25日の大統領選挙の実施や東西分裂の可能性など)
- ベトナムと中国の間での緊張感の高まり(ベトナムから中国人の退去など)
- トルコの炭鉱事故で政権批判が強まっていること
- ブラジルでのワールドカップサッカー開催に反対するデモ
での地政学的リスクや新興国への懸念による質(安全資産)への逃避での米国債買いや、これまで米国の早期利上げ期待で売られていた米国債先物の買戻しや新規の買いが金利を押し下げているようです(シカゴIMM通貨先物の、TREASURY BONDSのロングは105,001枚⇒123,862枚、ショートは69,324枚⇒61,185枚へと合計で27,000枚ネットのロングが増加しています)。 米長期金利が押さえられる状況が続けば、ドルの上値も重くなり、相対的にみると、追加緩和の期待が剥落した円と、政策金利を据え置いている豪ドル、利上げの期待が高いNZドルなどが先行されることになりそうです。
【 EUR/USD 】
先週もECBの要人などによる追加緩和を示唆する発言が聞かれました。ただ、市場は追加緩和を織り込むような形でユーロ売りが進んでいます。週末に発表された13日現在のシカゴIMM通貨先物のユーロのポジションでは、ユーロのロングが1週間で3.5万枚減少、ネットのポジションではロングからショートへ転換しています。ただ、ユーロのロング(ネットではない)が8.4万枚残っていることで、ロングの解消が続くことによるユーロの一段安の可能性もあり得ます。直近では本年2/4にロングが6.8万枚まで減少したことがあります。
一方、ウクライナ情勢は、ドネツクなど東部では親ロシア派の住民投票結果を受けて、親ロシア派は改めてウクライナから独立を宣言、25日に実施予定の選挙には参加しないことを表、選挙管理委員への脅迫や投票用紙が配達されないなど、選挙の実施が危ぶまれています。また、暫定政権との対話も拒否していることで、東西分裂の危機も出ているため、地政学的リスクが高まれば、ユーロ売りにつながる可能性もあります。先週はウクライナがガス料金を支払わなければロシアがウクライナ経由での欧州向けの天然ガスの供給を止めるとの通知から一時ユーロ売りにつながった経緯もあるだけに、今後の動向にも注意が必要となります。
経済指標では、22日(木)のドイツ、フランス、ユーロ圏の製造業、サービス部門のPMI速報値が注目されそうです。先週発表されたドイツZEW景況感調査が大幅悪化していたことが大きな要因ですが、さらにPMIまでもが悪化しているようだと、更なる物価の低下要因となり、デフレのリスクが高まるため、ECBの追加緩和期待につながることになり、ユーロを押し下げることになりそうです。
ユーロ/ドルは日足の一目均衡表の雲の下抜けをしていること、4/4安値の1.3671ドルを下抜けしていることで、軟調な動きが予想されます。遅行線も厚みのない雲の下限まで下がってきていることから、弱含みとなりそうです。ただ、週足の一目均衡表の基準線の1.3696ドルでかろうじて支えられていることと日足のストキャスティクス(スロー)でゴールデンクロスしていることで、5/15安値の1.3646ドルでサポートされると、雲の中に戻る可能性はあります。
【 USD/JPY 】
今週は20-21日の日銀金融政策決定会合と21日のイエレン米FRB議長の講演が注目されるだろう。黒田日銀総裁は、15日のコロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所東京コンファレンスでの「デフレ脱却に向けて」の講演の中で、
- 15年度中心の期間に物価目標2%に達する可能性は高い
- 本年度後半から物価は再び上昇傾向をたどる
- 中長期的な予想インフレが高まってきている
- 債券市場の流動性が極度に低下していると認識せず
- 債券市場の安定に向けて必要に応じて適切な対応を取っていく
- 物価目標への道筋から外れる懸念があれば躊躇なく調整を行う
- 株式市場の動向は注意してみていく
- 雇用や名目、実質GDPを勘案し金融政策を行っていく
などと発言、今回の金融政策決定会合でも追加緩和の可能性はほとんどありません。また、黒田日銀総裁の記者会見でも上記のような内容を繰り返すものと思いますので、市場へのインパクトはないものと思っています。ただ、日経225平均株価が14,000円を割り込む水準まで下落すれば、緩和期待が高まる可能性があります。一方、イエレン米FRB議長は、5/7-8の議会証言で
- 高いレベルの緩和は引き続き正当化され
- 雇用環境は満足できる状況からほど遠い
- 今年の成長率は昨年から加速する
- 第一四半期の景気鈍化は一時的なもの
- かなりの度合いの緩和は依然正当化される
- 労働市場にはかなりの規模のたるみがある
- 2%を継続して下回るインフレ率はリスクにつながる
- 労働市場は満足できる水準からはほど遠いが、状況は改善している
- FRBは景気が回復する限り量的緩和の縮小を行う
- 量的緩和の縮小が終了してから金利が正常化するまでかなりの時間がかかる
- 利上げ開始に関する具体的な時期はない
と、緩和状態が長期にわたることを繰り返すものと思います。ドル/円の方向としては、下向きバイアスがかかり、2月からの安値の101円前半(3/3の101.20円)の下抜けを試すことが予想されます。ただ、上にも書きましたが日経225平均株価の下落は、本邦政府によるの日銀への追加緩和圧力を高めることが連想されるため、一方通行での円高に進む可能性は低くなるものと思います。
テクニカル分析ではストキャスティクス(スロー)が50未満でデッドクロス、MACDはシグナルから下放れています。2月中旬からの101.20-30円がサポートとなっていますが、週足の一目均衡表の遅行線がロウソク足の下抜けをする可能性が高くなっているため、バイアスは下向きのように思います。サポートを下抜けた場合には2/4安値の100.75円がターゲットとなりますが、昨年9月高値の100.60円も意識されるため、このレベルでは下げ止まるのではないでしょうか。一方、週足の一目均衡表の転換線と基準線が102.50-60円に位置していますので、ここでは戻りが押さえられるのではないかとみています。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
EURUSD |
1.352 ~ 1.38 |
USDJPY |
100.5 ~ 102.7 |
GBPUSD |
1.67 ~ 1.693 |
AUDUSD |
0.928 ~ 0.946 |
NZDUSD |
0.851 ~ 0.87 |
■重要イベント 5/19(月) 18:00ユーロ圏 3月 建設支出 m/m 5/20(火) 15:00ドイツ 4月 生産者物価指数(PPI) m/m 5/21(水) 未定日本 日銀金融政策決定会合、終了後決定内容発表 15:30日本 黒田東彦日銀総裁定例記者会見 23:00ユーロ圏 5月 消費者信頼感速報値 00:00米国 イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長講演 03:00米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 5/22(木) 10:45中国 5月 HSBC製造業PMI速報値 16:00フランス 5月 製造業PMI速報値 16:00フランス 5月 サービス部門PMI速報値 16:30ドイツ 5月 製造業PMI速報値 16:30ドイツ 5月 サービス部門PMI速報値 17:00ユーロ圏 5月 製造業PMI速報値 17:00ユーロ圏 5月 サービス部門PMI速報値 17:30英国 1-3月期 四半期国内総生産(GDP)改定値 q/q 21:30米国 前週分 新規失業保険申請件数 23:00米国 4月 中古住宅販売件数 年率換算件数 23:00米国 4月 景気先行指標総合指数 m/m 5/23(金) 15:00ドイツ 1-3月期 国内総生産(GDP)改定値 q/q 17:00ドイツ 5月 IFO企業景況感指数 23:00米国 4月 新築住宅販売件数 年率換算件数 ※m/m = 前月比、q/q = 前期比、y/y = 前年比
経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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