3/2 今週の見通し-ウクライナと米経済指標が焦点へ-
2014/03/02
先週はウクライナ情勢による地政学的リスクと3月の米国経済指標待ちでフローが主体の週となりました。ウクライナ情勢については、週末にロシアが治安維持を目的に軍事介入を行う可能性もあり、緊張感が高まっています。時系列でみると
- 国連安保理でウクライナ情勢の非公式会合(3/1)
- 欧米側がクリミア半島のロシア軍の動きに懸念表明(3/1)
- ロシア軍装甲車、クリミア半島の駐留地外で走行(3/1)
- プーチン露大統領、議会に軍の行動同意を求める(3/1)
- ロシア上院、軍行動を全会一致で承認(3/2)
- ウクライナ、ハリコフ州でロシア系住民と暫定政権支持者が衝突(3/2)
- パン国連事務総長、関係者の対話呼びかけ(3/2)
- トゥルチノフ・ウクライナ大統領代行、潜在的な攻撃の可能性を想定し、ウクライナ軍に万全な戦闘準備態勢に入るよう指示した(3/2)
- ウクライナを巡り米ロ首脳会談(3/2)
- オバマ米大統領、同盟国と電話会談(3/2)
- 国連安保理、激しい応酬合戦(3/2)
となっています。地政学的なリスクの高まりと紛争は欧米の取っ手の懸念材料となり、財政が破綻しているといっても過言ではないウクライナに対して、資金援助の必要もあり、紛争に発展した場合には、欧州の負担増は避けられず、ユーロの下落につながるものと思います。また、リスク回避の動きは円買いにつながりやすいため、クロス円が弱含みとなる可能性があります。今週は米国の雇用統計を週末に控えていることもあり、米国悪天候の影響を見るのと、ウクライナ問題の2つが焦点となると思います。
【ドル/円】
(c)source: uedaharlow ltd.
先週は狭いレンジの動きながら、テクニカル的なサポートの水準を下回り、102円台前半の重さが感じられる週となりました。2月に発表された米経済指標は弱いものが多く、ドル売りの材料となってもおかしくは買ったのですが、市場心理は悪天候との見方から積極的にドルを売り込むまでには至りませんでした。むしろ、公表されたシカゴIMMポジションは小幅な円ショートの増加となっています。ただ、先月大幅に悪化した製造業ISMの発表が明日予定されていて、先行指標となる新規受注に至っては、13.2ポイントの大幅低下となっているため、肝心の製造業ISMも50を割り込む可能性が高いといえそうです。50割れは昨年5月以来となりますが、昨年は6月には50を回復と、景況感の悪化は一時的なものにと留まっています。一方、米国の雇用統計は15万増を市場は予想しているようです。悪天候による影響度合いを判断する重要な月となりますので、今月市場予想から下振れしているようだと、FRBの追加緩和縮小ペースに対しての修正の見方が出てくると思いますので、ドルの下落につながる可能性が高まります。チャートでも一目均衡表(日足)の雲を下抜けしてから、雲の中に戻れずにいます。転換線と基準線と雲がほぼ同じ位置(102.15-25円)に位置しているため、ここが重くなり、2/17安値の101.388円を下抜けすると2/4安値の100.757円、200日移動平均線の100.16円近辺まで下押ししてもおかしくないと思います。
【ユーロ】
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週末に発表されたユーロ圏2月消費者物価指数(HICP)が市場予想の前年比0.7%より僅かに上振れする0.8%となったことなどから、ユーロ/ドルは1.38ドル台前半へと上昇、ユーロ/円も140.50円を回復しました。ただ、週末に緊張が高まっているウクライナ情勢を週明けの市場がどのような判断をするかがまずは注目されます。ウクライナ東部とクリミア半島の分離独立も含めて、自体が混迷を深めるとユーロ売りにつながるものと思います。一方、今週木曜日に開催されるECB理事会では、先週のHICP速報値が上振れしているものの、ECBが目標としている物価目標の2%には及ばず、1%に届かない状況が5か月連続となっています。今回のECB理事会で政策金利を0.10%か0.15%利下げするとみる市場参加者もおり、利下げではなく追加緩和を期待する向きもいます。ドラギECB総裁は27日にユーロ圏はデフレに陥っていないことは明白と発言していることなどから、ウクライナ情勢が不安定な中で手段を使う可能性はほとんどないと思っています。また、ドラギECB総裁の定例会見では、「あらゆる措置について検討している」という前回の内容を踏襲するものと思われ、市場の反応も限られるのではないでしょうか。チャートでは一目均衡表(週足)の転換線でサポートされていることから1.36ドル台では底堅く推移することが予想されます。ただ、昨年10/28高値が1.38322ドル、12/27高値が1.38922ドルと1.38ドルで上値を押さえられていることから、ここを上抜けると1.40ドルを目指すものと思います。ユーロ/円は一目均衡表(日足)の雲の中を推移していて方向感がありませんが、55日移動平均線(141.055円)で上値を押さえられています。雲の厚みがなくなってくることでどちらかに抜け出ると思いますが、遅行線が雲に接近していることから、下抜けの可能性が高いと思います。基準線の138.966円近辺が足元のサポートとなると思います。
【ポンド】
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ポンドは下げ基調からの切り返し、週末にはロンドンフィキシングに絡むポンド買いもあり、1.67ドル台ミドルまで上昇しました。今週は英中銀(BOE)の金融政策委員会(MPC)が行われますが、既に先月のインフレレポート(フォワードガイダンス)で、ILO方式の失業率目標を事実上撤廃(幅広い指標を注視することを決定)、低金利政策の維持し、景気支援を優先することが示されています。インフレレポートでは成長率見通しを上方修正していることもあり、今週発表される製造業、建設業、サービス業の各PMIが市場予想より上振れすれば、ポンド買いにつながるものと思っています。ただ、ウクライナ情勢が英国の景況感を多少なりとも悪化させている可能性があり、またウクライナ情勢の緊迫化は欧州の一員としての英国にも影響を与えることから、ポンドの弱含みの要因となることが予想されます。ポンド/ドルは一目均衡表(日足)の転換線を回復してきました。このまま上昇して、2/17高値の1.68209ドルを上抜ければ、2009年8月の1.7040ドル近辺まで上昇するものと思います。ポンド/円は一目均衡表(日足)の転換線を上抜いてきました。まずは12/30高値の174.835円を目指すと思いますが、ここを抜けられないと、ダブル天井となって調整が続くことが考えられます。
【豪ドル】
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シドニーで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議で成長率見通しを現行より2%上積みするとの声明の内容を受けた資源需要期待で週前半は買われましたが、週後半には豪の民間設備投資の大幅下振れで、豪ドル/米ドルが0.90ドルを維持できませんでした。今週は4日の豪準備銀行(RBA)金融政策委員会が開催されますが、議事録では「豪ドル安はバランスの取れた成長を達成するために必要とされる」「現状を考慮しつつ現状の政策維持を継続することが賢明」「一定期間の安定的な金利が賢明である可能性」などとなっているため、大きな変更はないものと思います。一方、景気の減速傾向が見えている中国はオフィシャルの製造業PMIが50.2と市場予想よりは若干いいものの、前月の50.5から低下し、約8か月ぶりの低水準となっています。3日にはHSBC製造業PMI改定値、4日には住宅建設許可、5日には10-12月GDP、6日には貿易収支、小売売上高の発表が予定されていることで、指標の結果に振り回されそうです。総じて経済指標が良ければ、豪ドルの下値も限定的となると思います。豪ドル/米ドルは1/13高値の0.90848ドルと2/18高値の0.90799でダブル天井となり、一目均衡表(日足)の転換線を下回っています。基準線が0.88698ドルに位置していることで、ここを下抜けると、昨年12/18安値の0.88158ドルがサポートとなるとみられます。豪ドル/円は一目均衡表(日足)の雲がレジスタンスとなり下落、基準線の僅かに上まで下落してきています。このまま基準線を下抜けすると、2/3安値の88.223円と2/18高値の92.970円を100%としたフィボナッチ61.8%押しとなる90.048円から76.4%押しとなる89.395円近辺まで下落するものと思います。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
99.7 ~ 103.1 |
ユーロ/ドル |
1.349 ~ 1.392 |
ユーロ/円 |
136.2 ~ 142.4 |
ポンド/円 |
166.4 ~ 172.8 |
豪ドル/円 |
88.9 ~ 92.8 |
NZドル/円 |
84.1 ~ 86.2 |
南アランド/円 |
9.2 ~ 9.7 |
■重要イベント 3/3(月) 10:45中国 2月HSBC製造業PMI改定値 17:30スイス 2月 SVME購買部協会景気指数 17:50フランス 2月 製造業PMI改定値 17:55ドイツ 2月 製造業PMI改定値 18:00ユーロ 2月 製造業PMI改定値 18:30英国 2月 製造業PMI 18:30英国 1月 消費者信用残高 18:30英国 1月 マネーサプライM4 m/m 22:30カナダ 1月 鉱工業製品価格 m/m 22:30カナダ 1月 原料価格指数 m/m 22:30米国 1月 個人所得 m/m 22:30米国 1月 個人消費支出 m/m 23:00ユーロ ドラギ欧州中央銀行総裁記者会見 00:00米国 2月 ISM製造業景況指数 00:00米国 1月 建設支出 m/m 3/4(火) 08:50日本 2月 マネタリーベース y/y 09:30豪 10-12月期 経常収支 09:30豪 1月 住宅建設許可件数 m/m 10:30日本 1月 毎月勤労統計調査-現金給与総額 y/y 12:30豪 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 18:30英国 2月 建設業PMI 19:00ユーロ 1月 卸売物価指数 m/m 3/5(水) 09:30豪 10-12月期 GDP q/q 17:50フランス 2月 サービス部門PMI改定値 17:55ドイツ 2月 サービス部門PMI改定値 18:00ユーロ 2月 サービス部門PMI改定値 18:30英国 2月 サービス部門PMI 19:00ユーロ 1月 小売売上高 m/m 19:00ユーロ 10-12月期 GDP改定値 q/q 22:15米国 2月 ADP雇用統計 00:00カナダ カナダ銀行(BOC)政策金利 00:00米国 2月 ISM非製造業景況指数 04:00米国 米地区連銀経済報告(ベージュブック) 3/6(木) 09:30豪 1月 貿易収支 09:30豪 1月 小売売上高 m/m 20:00ドイツ 1月 製造業新規受注 m/m 21:00英国 イングランド銀行(BOE)金利発表 21:00英国 3月 英中銀資産買取プログラム規模 21:30米国 2月 チャレンジャー人員削減数 y/y 21:45ユーロ 欧州中央銀行(ECB)政策金利 22:30ユーロ ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁定例記者会見 22:30カナダ 1月 住宅建設許可件数 m/m 22:30米国 10-12月期 四半期非農業部門労働生産性改定値 m/m 22:30米国 前週分 新規失業保険申請件数 00:00カナダ 2月 Ivey購買部協会指数 00:00米国 1月 製造業新規受注 m/m 3/7(金) 14:00日本 1月 景気先行指数(CI)速報値 14:00日本 1月 景気一致指数(CI)速報値 15:45スイス 2月 失業率 16:00ドイツ 1月 卸売物価指数(WPI) m/m 16:45フランス 1月 財政収支 16:45フランス 1月 貿易収支 17:15スイス 2月 消費者物価指数(CPI) m/m 17:15スイス 10-12月期 四半期鉱工業生産 y/y 20:00ドイツ 1月 鉱工業生産 m/m 22:30カナダ 1月 貿易収支 22:30カナダ 2月 失業率 22:30カナダ 2月 新規雇用者数 22:30カナダ 10-12月期 四半期労働生産性指数 q/q 22:30米国 2月 非農業部門雇用者数変化 m/m 22:30米国 2月 失業率 22:30米国 1月 貿易収支 05:00米国 1月 消費者信用残高 m/m 経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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