5/12 米経済指標にドルは反応薄か
2014/05/11
【今週の見通し】 先週はドラギECB総裁が理事会後の定例記者会見で「ECB理事会、次回行動とることに心地よく感じている」とこちらは追加緩和を行う可能性が高いことを示唆、ウィーラーRBNZ総裁は講演で、NZドルの水準が持続可能ではないことと、NZドル売り介入を行う可能性があることにも言及、豪も含めて自国通貨高を牽制する発言が声明が相次ぎました。ただ、イエレン米FRB議長が議会証言で「金利が正常化するまで長い時間がかかる」とハト派的な発言を行っていることで、米経済指標がよいことに対する感応度は低くなっているように見えます。次週は米国の小売売上高、NY連銀製造業景気指数や消費者物価指数の発表が予定されていますが、米長期金利の上昇がみられなければ、引き続きドル上昇は抑えられる可能性が高くなると思います。
5月の中旬以降は、市場の方向感が見えにくい中では、ファンドの半期の決算が早めに出てくることも考えられ、シカゴIMMポジションで偏っている円ショート、ポンドロング、NZドルロングは解消の動きから各々円高、ポンド安、NZドル安につながる可能性があることに注意。
【 EUR/USD 】
ウクライナ情勢は、東部のドネツク州とルガンスク州で本日、自治権拡大の住民投票が実施されます。プーチン・ロシア大統領の呼びかけにもかかわらず、両州の親ロシア武装勢力は住民投票を強行に実施、開票後は勝利宣言を行う見通しとなっています。ウクライナ暫定政権、欧米側は住民投票は無効としており、暫定政権と武装勢力との新たな衝突も懸念されます。これまでウクライナ情勢は市場では不透明として、材料視されませんでしたが、先週のECB理事会以降では、強力な材料とはなっていませんが、弱含みの材料と捉えても良さそうです。
一方、ECB理事会後のドラギECB総裁の記者会見は、
- 為替相場については議論した
- 低インフレ・低水準の経済活動の下でのユーロ上昇は深刻に懸念される問題
- ECB理事会、次回行動とることに、心地よく感じている
- ECB理事会、行動をとる前にインフレ見通しを確認へ
と発言、6月のECB理事会で、レフィ・レートの引き下げ、預金ファシリティ・レートの引き下げ(マイナス金利)などが実施されるのではないかとの期待が高まり、ユーロ売りに反応しています。この状況は次週も続くことと思いますが、13日(火)のドイツZEW景況感調査や14日(水)のドイツ、フランスの消費者物価指数で下振れ(ドイツは改定値)が示されると、期待をさらに高めることになりそうです。一方、15日(木)には1-3月期GDP(ユーロ圏、フランス、ドイツなど)が発表されるため、現時点での市場予想では、ユーロの下げ止まりの要因となる可能性がありますが、戻りは一時的にとどまるのではないでしょうか。ただし、追加緩和後もユーロ安が継続するとの見方は市場には少ないように思います。
ユーロ/ドル日足のMACDがデッドクロスしました。ストキャスティクス(スロー)を追随した形なので、ユーロの下げが続く可能性が高いことが示されていると思います。一目均衡表(日足)では、雲の下限が1.3722ドルに位置しているため、ここを下抜けた場合には、4/4安値の1.3672ドルから2/12安値の1.3562ドル近辺まで下落するものと思います。雲がサポートとなった場合には、基準線の1.3832ドル近辺まで戻るものとみています。
【 USD/JPY 】
先週は週前半にスペインのサービス部門PMIの上振れなどを受けてユーロ/ドルのドル売りをきっかけにドル売りが強まったことから、ドル/円は4/14以来となる一時101.44円まで下落しましたが、4/11安値の101.32円手前での買い意欲は強くサポートされました。イエレン米FRB議長は7日、8日の米議会での証言で
- 高いレベルの緩和は引き続き正当化される
- 今年の成長率は昨年から加速する
- 第一四半期の景気鈍化は一時的なもの
- FRBは景気が回復する限り量的緩和の縮小を行う
- 量的緩和の縮小が終了してから金利が正常化するまでかなりの時間がかかる
- 利上げ開始に関する具体的な時期はない
- FRBはインフレを抑制するために緩和策を縮小することが可能
- FOMCは2%のインフレ目標を明確にコミット
などと発言、長期間の金融緩和が正当化されるとの認識を示しています。このところの米国の経済指標とドル/円の動きを見ると、米経済指標でよい内容が示された場合でもドルの上昇は一時的となり、上昇が長続きしないことが示されています。米10年債利回りも2.6%を一時割り込むなど、米景気の回復が米長期金利を押し上げていないこともドルを重くしている要因のようです。5月米FOMCも行われないため、同議長の講演などで市場のセンチメントが変わるような状況がないと、ドル/円の上値は限定されることになりそうです。もっとも、ユーロがドラギECB総裁の記者会見で6月の追加緩和を示唆したと受け止められていることで、ユーロ/ドルでのドルの底堅さは保たれるとみられるため、101円割り込むドル安につながる可能性は低いと思います。
テクニカル分析では21日移動平均線を下抜けた4/8以来、同線(5/9現在は102.16円)がレジスタンスとなっています。ただ、ストキャスティクス(スロー)はゴールデンクロスをしていることで、短期でみれば反発の可能性もあります。戻り目処は21日移動平均と一目均衡表(日足)の転換線が位置する102円台前半(102.16円から102.23円)か、基準線と雲の下限が位置する102円台後半(102.71円から102.78円)近辺と思われます。一方、下方向では3/3の101.21円がサポートとみられますが、この下にまとまっているストップロスをひっかけると、2/4安値の100.76円近辺までの下げがありそうです。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
EURUSD |
1.357 ~ 1.39 |
USDJPY |
100.6 ~ 103.2 |
GBPUSD |
1.661 ~ 1.699 |
AUDUSD |
0.925 ~ 0.95 |
NZDUSD |
0.851 ~ 0.874 |
■重要イベント 5/12(月) 08:50日本 3月 国際収支-経常収支 08:50日本 3月 国際収支-貿易収支 03:00米国 4月 月次財政収支 5/13(火) 14:30中国 4月 小売売上高 y/y 18:00ドイツ 5月 ZEW景況感調査(期待指数) 18:00ユーロ圏 5月 ZEW景況感調査 21:30米国 4月 小売売上高 m/m 21:30米国 4月 輸入物価指数 m/m 21:30米国 4月 輸出物価指数 m/m 5/14(水) 18:00ユーロ圏 3月 鉱工業生産 m/m 21:30米国 4月 卸売物価指数(PPI) m/m 5/15(木) 08:50日本 1-3月期 実質国内総生産(GDP)速報値 年率換算 14:30フランス 1-3月期 国内総生産(GDP)速報値 q/q 15:00ドイツ 1-3月期 国内総生産(GDP)速報値 q/q 17:00ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)月報 18:00ユーロ圏 4月 消費者物価指数(HICP)改定値 y/y 18:00ユーロ圏 1-3月期 四半期域内総生産(GDP)速報値 q/q 21:30米国 5月 NY連銀製造業景気指数 21:30米国 4月 消費者物価指数(CPI) m/m 21:30米国 前週分 新規失業保険申請件数 22:15米国 4月 鉱工業生産 m/m 23:00米国 5月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 23:00米国 5月 NAHB住宅市場指数 5/16(金) 08:00米国 イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長講演 21:30米国 4月 住宅着工件数 年率換算件数 21:30米国 4月 建設許可件数 年率換算件数 22:55米国 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 ※m/m = 前月比、q/q = 前期比、y/y = 前年比
経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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