4/20 今週の見通し-本邦株価への期待で円売り地合いか-
2014/04/20
市場が注目していたイエレン米FRB議長の講演(NYのエコノミック・クラブ)は、
- FOMCメンバーの予想は失業率が2016年末時点で5.2%-5.6%に、インフレ率が1.7-2%になっているというもので、私も妥当と考えている。
- 労働市場のゆるみがみられ、この緩みを埋めるのには2年以上かかる
- 景気回復局面はこれまでにないくらい緩やかである
- 資産購入ペースは、見通しの著しい変化に応じて正当化される場合は調整する構えだ
- フォワードガイダンスの変更は新たな指針は見通しの変化への対応で生じる可能性のある政策の調整を説明するのにも適している
- 雇用およびインフレが目標から遠いほど、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジが現行水準に維持される公算が大きい
と、総じてみるとハト派的な内容でした。一方、中国の1-3月期GDPは前年比7.4%と市場予想の7.3%よりは小幅良かったことで市場は楽観的になりました。日本円に関しては、麻生副首相兼財務相などが「GPIFの運用見直しを早ければ6月にも実施する」と発言していることなどで円売りに反応しています。
週初は市場参加者がまだ戻っていないことで小動きとなることが予想されますが、実質の週明けとなる火曜日以降は、中国4月のHSBC製造業PMI速報値に注目が集まるものと思います。また、24日(木)早朝にはNZ準備銀行による金融政策の発表があり、0.25%の利上げが予想されていますが、予想通り利上げされたとしても、先週発表された1-3月期消費者物価指数の下振れ、中国の経済指標が下振れしていていた場合には、NZドルの調整が続く可能性が高まります。
【ドル/円】
(c)source: uedaharlow ltd.
先週発表された米国の住宅関連指標は、NAHB住宅市場指数が47(市場予想50)、住宅着工件数は94.6万件(市場予想97万件)、建設許可件数は99万件(市場予想101万件)と軒並み下振れし、住宅に関しては悪天候の影響とはいえない内容となっていました。もともと中西部や南部での悪化も見られていたため、悪天候というのは少々無理があったのだと思います。むしろ、3月はFOMC後のイエレン米FRB議長の記者会見を受けて長期金利などが上昇したこともあり、こうした金利上昇要因と、雇用統計でも示されているように非正規雇用が雇用の数字を押し上げている現実では、先行指標となる住宅も重たさが感じられても不思議ではないと思います。今週も中古住宅販売(22日)、新築住宅販売(23日)が発表されますが、横ばいか多少の減少となれば、ドルの上値を押さえる可能性があります。こうした中で市場は、先週の鉱工業生産が市場予想より上振れ、設備稼働率が79.2%へ上昇していたことで、耐久財受注(24日)に注目しているようです。
本邦では、通関ベースの貿易収支(21日)、4月の東京都区部消費者物価指数(25日)の発表が注目されると思いますが、貿易収支については21か月連続の赤字となると思われ、赤字額も再び1兆円を超えてくると思いますが、これまでのところ、赤字額の増加による円売りの反応は限定されているため、大きな影響はないと思います。むしろ、消費税引き上げ後の東京都区部消費者物価指数が注目され、消費税の影響を差し引いた物価の上昇が小幅にとどまるようであれば、来月以降に発表される全国消費者物価指数への期待もしぼむことが考えられて、日銀の目標達成が難しくなるとして、日銀の追加緩和期待につながり、円売りバイアス継続となるのではないかと思います。
チャートでは一目均衡表(日足)の雲下限が102.47円、21日移動平均線が102.48円とこの2つがレジスタンスとして機能しているような状況です。一方、4/11安値が101.32円と3月安値の101.20円近辺のサポートが機能しました。どちらを先に抜けるかということになりますが、基準線が102.66円、雲の上限が103.09円にあるため、チャート上からはドルの上値が押さえられる可能性が高く、しばらくは101.20円から103.10円のレンジ内での動きが予想されます。
【ユーロ】
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ウクライナ情勢は17日のウクライナ・米・EU・ロシアの4者協議では「ウクライナでの暴力の即時停止」を呼びかける共同声明を採択、今後も4者協議を続けることで合意しました。これを受けて、地政学的なリスクがやや後退、キエフにある民間調査会社が実施したウクライナ東部と南部の地域のドネツクやオデッサなどの主要な都市で暮らすおよそ3200人を対象にした調査では、80%以上の住民が、武装集団の市庁舎などの占拠を全く支持しないと回答(ただし、ウクライナ暫定政権への不信感も強いことが浮き彫りとなっています)、クリミアのようにロシアの実効支配を望まないことが地政学的リスクを低下させたと思われることで、当面は材料とならないと思われます。
先週はユーロ圏の消費者物価指数の改定値(前年比)が0.5%と速報値通り、ドイツZEW景況感調査が43.2と市場予想より小幅悪化となったこと、ユーロ圏の要人からのハト派的な発言がみられたものの、ユーロ/ドルは1.38ドル、ユーロ/円は140円台前半で底堅く推移しました。今週は23日(水)のドイツ、フランス、ユーロ圏の製造業とサービス部門のPMI(購買担当者景気指数)速報値、24日(木)のドイツIFO景気動向指数が注目されると思われます。また、24日にはドラギECB総裁の講演も予定されているため、同総裁のユーロ高牽制発言の可能性もあり、ユーロの上値が限定的になるのではないかと思われます。
ユーロ/円は一目均衡表(日足)の雲でサポートされたものの、基準線の141.71円ではレジスタンスにあっています。雲の厚みが増してくるため、下値は引き続き雲の下限の140.00円でサポートされるとみています。基準線を上抜ければ、3/7高値が143.77円、4/2高値が143.46円となっていることで、143円台前半までは上昇すると思います。ユーロ/ドルは一目均衡表(日足)の転換線でサポートされましたが、週末は転換線が切り上がったため下抜けしています。2/3安値の1.3642ドルを起点とするサポートライン、3/13高値の1.3966ドルを起点とするレジスタンスラインでの三角保合いとなっているため、上の1.388ドル、下の1.372ドルのどちらかが抜けたほうにトレンドが出ると思います。
【ポンド】
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先週は英政府統計局(ONS)から発表された失業率(ILO方式)が6.9%と前3か月(改定値)から0.2%改善したこと、2月の週当たり平均給与(ボーナス含む)も前年比で1.9%の上昇となり、拡大していることを受けて、ポンド/ドルは2009年11月以来となる1.68405ドルまで上昇、年初来高値も更新しました。
今週は25日(金)に3月の小売売上高の発表が予定されています。前月は同指標が予想以上となったことでポンド買いにつながりましたが、英小売協会(BRC)が発表している小売売上高調査(前年比)が2か月連続で市場予想を下回り、-1.7%へと低下しているため、小売売上高も市場予想の前月比-0.4%から下振れする可能性があります。ただ、市場では、先週のイエレン米FRB議長の講演で米国が低金利政策を続ける可能性が高いことが示され、一方の英国はフォワードガイダンスで定めた(のちに変更)失業率目標の7.0%を達成したことで、利上げの可能性が高い通貨として主要通貨の中では先行されやすいものと思います。
ポンド/円は一目均衡表(日足)の雲でサポートされています。上は3/7高値の173.56円、4/3高値の173.12円がレジスタンスとみられますが、1/2高値の174.83円を起点とするレジスタンスラインと、2/4安値の163.87円を起点とするサポートラインの三角保合いとなっています。172.90円と169.95円のどちらかを抜けた方向にトレンドが出るものと思います。ポンド/ドルは緩やかな上昇トレンドが継続、昨年8月に雲の上抜けをして以来、3度雲の中がサポートとなりました。雲の厚みがないことから、今後はサポートとなるか微妙ですが、まだ雲の上限(1.661ドル)までは若干距離があることから、その手前の1.6720ドル(転換線)、1.6650ドル(基準線)のサポートがあります。
【豪ドル】
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今週は、23日(水)の豪1-3月期消費者物価指数と中国4月HSBC製造業PMIが注目されるものと思います。消費者物価指数は豪準備銀行(RBA)がターゲットとしている2~3%を僅かですが上抜ける予想となっています。豪準備銀行(RBA)は議事録の中で「金利を一定水準で安定的に維持することが最も賢明な経路となる見通し」としているため、即座に利上げ期待につながるとは思えませんが、利下げサイクルが終わったとのイメージにはつながると思います。そのため、豪ドルが買われる可能性が高くなると思われるものの、豪ドルが0.95ドルを超えてくると、政府・準備銀行から豪ドル高牽制発言が出てくる可能性もあり、豪ドルの上値が限定的となるのではないでしょうか。また、シカゴIMM通貨先物のポジション状況でも、ロングは6週連続で増加(ロング転換後2週連続で増加)しているため、指標の悪化があればポジションの調整につながってもおかしくはありません。
豪ドル/円は4/8安値の95.02円を一時下抜けたものの、95円ではサポート、一目均衡表(日足)の転換線を挟んで狭いレンジの動きとなりました。ストキャスティクス(スロー)は50以下でゴールデンクロスとシグナルとしてはどっちつかずの状態です。95円のサポートか4/4高値の96.50円のどちらかを抜けないと新たなトレンドにはつながらないと思います。豪ドル/米ドルは一目均衡表(日足)の転換線を下抜けたため、4/10高値の0.9460ドルが足許の天井とみられます。またMACDがデッドクロスしていることで、4/3安値の0.9204ドルから基準線の0.9227ドルあたりまで調整が出てもおかしくないと思います。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
101.3 ~ 103.1 |
ユーロ/ドル |
1.371 ~ 1.391 |
ユーロ/円 |
140 ~ 142.8 |
ポンド/円 |
169.5 ~ 174.4 |
豪ドル/円 |
94.3 ~ 96.7 |
NZドル/円 |
86.9 ~ 88.9 |
南アランド/円 |
9.5 ~ 9.85 |
■重要イベント 4/21(月) 08:50日本 3月 貿易統計(通関ベース) 4/22(火) 14:00日本 2月 景気先行指数(CI)改定値 14:00日本 2月 景気一致指数(CI)改定値 18:00ユーロ圏 2月 建設支出 m/m 21:30カナダ 2月 卸売売上高 m/m 22:00米国 2月 住宅価格指数 m/m 23:00米国 4月 リッチモンド連銀製造業指数 23:00米国 3月 中古住宅販売件数 年率換算件数 23:00ユーロ圏 4月 消費者信頼感速報値 4/23(水) 10:30豪 1-3月期 四半期消費者物価(CPI) q/q 10:45中国 4月 HSBC製造業PMI速報値 16:00フランス 4月 製造業PMI速報値 16:00フランス 4月 サービス部門PMI速報値 16:30ドイツ 4月 製造業PMI速報値 16:30ドイツ 4月 サービス部門PMI速報値 17:00南ア 3月 消費者物価指数(CPI) m/m 17:00ユーロ圏 4月 製造業PMI速報値 17:00ユーロ圏 4月 サービス部門PMI速報値 17:30英国 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨 21:30カナダ 2月 小売売上高 m/m 23:00米国 3月 新築住宅販売件数 年率換算件数 4/24(木) 06:00NZ NZ準備銀行(RBNZ)政策金利 08:50日本 3月 企業向けサービス価格指数 y/y 15:00スイス 3月 貿易収支 15:45フランス 4月 企業景況感指数 17:00ドイツ 4月 IFO企業景況感指数 18:00ユーロ圏 ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁講演 18:30南ア 3月 卸売物価指数(PPI) m/m 21:30米国 3月 耐久財受注 m/m 21:30米国 前週分 新規失業保険申請件数 4/25(金) 08:30日本 3月 全国消費者物価指数(CPI) y/y 08:30日本 4月 東京都区部消費者物価指数(CPI) y/y 13:30日本 2月 全産業活動指数 m/m 13:30日本 2月 第三次産業活動指数 m/m 17:30英国 3月 小売売上高指数 m/m 22:55米国 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 ※m/m = 前月比、q/q = 前期比、y/y = 前年比
経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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