3/23今週の見通し-リスク許容度低下で円買い優勢か-
2014/03/23
先週の米FOMCでは、市場の予想通り100億ドルの緩和縮小が決定されましたが、声明文では「失業率が6.5%を下回っても相当の間、現在のFFレート誘導レンジを維持することが適切になる公算が大きいと委員会は引き続き予想している」としていた数値基準(定量的)を「委員会は、雇用とインフレが使命に整合的な水準に近づいた後でも、かなりの間、経済状況がFF金利を委員会が長期的に正常だと見る水準よりも下に維持することを正当化する可能性があると現在予想している」と定性的に変更しています。その後のイエレンFRB議長の記者会見では、声明の中の「しばらくの間」について、「しばらくとは定義が難しいが『6か月程度』」と述べたことで、2015年春にも最初の利上げが実施されるのではとの印象を市場に植え付けました。そのため、新興国通貨などではドルが買われやすくなっています。
一方、クリミア自治共和国については、ロシアがウクライナ空軍基地を制圧するなど、支配を進めていること、ウクライナ暫定政権はトゥルチノフ大統領代行が「戦う用意がある」と発言するなど緊張が高まっています。24日にはオランダでG7首脳会議が開催され、制裁強化などが議論されるようですが、制裁強化となれば、緊張の高まりから、リスク回避の動きにつながりやすいものと思います。
【ドル/円】
(c)source: uedaharlow ltd.
ロシアのクリミア支配が進む中、ロシアへの制裁の度合いが不透明なことや、今回のウクライナでの大規模デモなどを主導した極右政党が支持を広げる勢いなど、足許で地政学的リスクが高まっています。明日24日のオランダG7首脳会議で、制裁の内容などが話し合われる予定ですが、現状からさらに踏み込んだ制裁とならなければ、ウクライナ暫定政権が行動を起こすリスク、踏み込んだ制裁となった場合のロシアの報復リスクとどちらに転んでもリスクが伴うため、積極的にはドルが買えない状況と思います。一方、米FOMCを先週終えて、市場は利上げ時期を2015年の春という捉え方をしていると思いますので、今週はS&P/ケースシラー住宅価格指数、新築住宅販売、耐久財受注、10-12月実施GDP確定値などの発表予定があります。日本も失業率、全国消費者物価指数などがありますが、市場へのインパクトはあまりないものと思っています。むしろ、本邦消費税引き上げ1週間前で日経225平均株価も調整気味とみられるため、全般的には円高にバイアスがかかりやすいものと思っています。チャートでは一目均衡表(日足)の雲、転換線、基準線が集まる102.30-40円近辺がレジスタンスとなっています。雲の下限では3日連続で止められているため、先週安値の101.20円近辺とのレンジ継続と思いますが、これらレジスタンスを上抜ければ雲上限の103.09円近辺まで上昇すると思います。
【ユーロ】
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週末にファンロンパ欧州連合大統領は「新興市場国の危機でユーロは資金の逃避先となっている。(域内の)輸出業者には高過ぎる水準だ」とユーロ高を牽制する発言をしています。今月13日には、ドラギECB総裁もユーロ高を牽制する発言をしており、大っぴらではないにしても、欧州要人からもユーロ高を牽制する発言が出だしていることで、1.40ドルを目前としたユーロは買いにくくなったと思います。また、先週の独ZEW景況感調査はウクライナ情勢を反映してか大幅に下振れしていたことで、今週発表される独、ユーロ圏などのPMI、独IFO景況感調査も下振れの可能性が高いとみられます。28日(金)発表の独消費者物価指数速報値も注意で、市場予想通り低下していると、ユーロ圏の消費者物価指数の低下が連想され、今月のECBでは空手形にもならなかったECBの利下げ期待が再び高まってくるものと思います。チャートでも週後半には1.37ドルちょうど近辺まで一時下落するなど、チャートの形も悪くなっています。加えてMACDはデッドクロス、一目均衡表(日足)は転換線と基準線を下に抜けています。米FOMCで2014年春の米国の利上げの可能性が示されたこともユーロ売りバイアスが続き、1.37ドルを割り込んでくるのではないでしょうか。ユーロ/円はレンジの動きを続けており、一目均衡表(日足)の雲の上限がかろうじてサポートとなっています。ただ、基準線(141.284円)、転換線(141.938円)がレジスタンスとみられ、遅行線も雲の中を推移していることから、どちらかというと、レンジからややユーロ安にバイアスがかかると思います。
【ポンド】
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他の通貨に比べて指標の発表の多い週となります。英中銀(BOE)は先週公開した金融政策委員会の議事録では、政策金利(0.5%)・資産買入れプログラム(3,750億ポンド)の据え置きを全会一致(9対0)で決定、「インフレ率が向こう18-24カ月の間に2.5%を上回る確率は50%未満との見方で全メンバーが一致した」「ポンドの過去1か月の上昇で、確率はむしろ少し下がった」と、当面利上げの可能性がないことを示唆しました。ポンド高については、「主要貿易相手国・地域と比較して英経済見通しがますます良好だと引き続き見なされれば、この段階的な通貨上昇継続は可能だろう」と容認する姿勢を示しましたが、ポンド自体は弱含みで推移しています。今週は、消費者物価指数、小売売上高指数、10-12月期GDP確定値の発表が予定されています。英産業連盟(CBI)が20日発表した3月の製造業の業況調査は+6と改善していたものの、輸出向けが不振、乗用車生産は増加したものの逆に国内向けが不振(輸出向けは好調)となっていたことで、ミックスな状態のため、予測は難しいものの、小売りが好調であれば、ポンドの反発につながる可能性があります。一方で、クリミアの地政学的リスクはポンドにも影響を与える可能性が高く、こちらは円高バイアスがかかりやすいとみられますので、どちらかといえば、ポンドは対ドル、対円で下向きバイアスが継続すると思います。ポンド/ドルは一目均衡表(日足)の転換線が基準線を下抜け、遅行線がロウソク足を下抜け、雲の中に入ってきました。雲の厚みがない中で、雲を下抜けすると、2/5安値の1.62495ドル近辺まで下落する可能性が高まります。ポンド/円は。一目均衡表(日足)の雲の中を推移しています。上には転換線(169.935円)、基準線(170.662円)のレジスタンスがあります。雲の下限が167.998円に位置しており、こちらを下に抜けると、遅行線が雲とぶつかる165.734円近辺まで下落する可能性があります。
【豪ドル】
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先週発表された豪準備銀行(RBA)金融政策の議事録では、賃金伸びが鈍化しているとし、この状態が続けばインフレ率は目標に沿った水準を維持するとの見方を示しました。ただ、この内容は声明でも示されていたため、材料視はされず、クリミア問題や米FOMCなどの外部要因が主体となる方向感のない動きに終始しました。今週も豪ではインパクトを与えるような経済指標の発表が予定されていないことで、方向感が出にくい展開が予想されます。ただ、週末に中国の上海短期金利が期末要因ながら、大幅に上昇しており、理財商品の大型のデフォルトリスクも燻っていることで、週初に発表される中国HSBC製造業PMIが市場予想を下回ると、これらの懸念から豪ドル売りにつながる可能性があります。ただ、これまでの豪ドルの動きを見ていると、下落も一時的となるのではないかと思っています。豪ドル/米ドルは一目均衡表(日足)の基準線が0.90131ドルに位置していることや雲の上限が0.89130ドルにあることから、このレベルではサポートされると思われます。豪ドル/円は一目木の雨氷(日足)の基準線が92.260円、転換線が92.363円で足許サポートされています。ここを下抜けても雲の上限が91.220円にもあるため、このレベルと93円近辺でのレンジの動きが続くと思われます。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
101 ~ 103.2 |
ユーロ/ドル |
1.36 ~ 1.389 |
ユーロ/円 |
139.4 ~ 142.4 |
ポンド/円 |
166.6 ~ 170.7 |
豪ドル/円 |
90.7 ~ 94.1 |
NZドル/円 |
85.4 ~ 88.9 |
南アランド/円 |
9.1 ~ 9.6 |
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