1/13 今週の見通し-引き続き米長期金利の動向に注目-
2013/01/13
【全体】
週前半は円の売られ過ぎの調整が入りましたが、ドル/円ではチャート上の最初のサポートで支えられて、円売りのトレンドが継続し、週末の日本の経常収支が赤字となったことで円売りが加速しています。次週も15日に開催される有識者会議で日銀総裁の候補もしくはふさわしい人物像が示された場合には円売りが継続する可能性があります。また、週末に発表されたシカゴのIMM通貨先物は非商業ポジションのロングが減少していることが示されていますが、出遅れていた実需が円売りを進めていると思われることで、トレンドの転換の可能性が低いと見られます。ユーロはECBのメンバーが利下げを希望していなかったことが明らかになるとユーロの買い戻しが続いていることに加え、イタリアやスペインの国債利回りが低下していることから楽観的な見方が広がっています。2月下旬までは市場にリスク要因が出てくる可能性が低いことで、市場のセンチメントの改善を好感したドル売りと円売りの可能性があります。その一方で米国をはじめとして消費者物価指数などの注目度の高い経済指標の発表もあることから、米国の長期金利の動向が為替相場を主導しそうな可能性があります。
【ドル/円】
(c)UH standard chart
先週前半は円売りの調整となりましたが86円台後半から切り返し、2010年6月以来となる89円台ミドル手前まで上昇しました。月足の一目均衡表では雲の下から中に入ってきました。チャート上では2010年5月の高値の94.980円が視野に入ってきました。週末に発表された本邦の経常収支が10か月ぶりに赤字となったことも海外勢の円売りを誘っているようです。また、安倍首相が「デフレ円高脱却のため、政府日銀が連携する大胆な金融政策が不可欠」「日銀が供給した資金を使うため、政府自らが率先して需要を作り景気の底上げをする」などと発言していることや4月に任期満了となる日銀総裁の後任については、15日に有識者らの意見を聞く会議を開催すると本日のNHKの番組で表明したこともあり、具体的に大胆な金融政策を実行できる候補者の名前が挙がってくると更に円売りにつながる可能性があります。経済指標は15日の小売売上高、NY連銀製造業景気指数、16日の消費者物価指数、鉱工業生産、17日の住宅着工件数、住宅許可件数、18日のミシガン大消費者信頼感数と毎日注目度が高いものがあります。米長期金利の動向にも関心が集まってきていることから、16日の消費者物価指数は特に注目されるものと思います。ドル/円については円売りが進みやすい環境にあることから、調整があったとしても88円か87円台までの調整にとどまるのではないかと思います。
【ユーロ】
(c)UH standard chart
ユーロは10日のECB理事会で市場で一部出ていた政策金利の引き下げは実施されず、ドラギECB総裁の定例記者会見では政策金利の据え置きが「全会一致」であったことや利下げの要請がなかったことなどが明らかになるとそれまでの1.31ドル台から1.32ドル台後半へと上昇し、スペインの10年債利回りが5%を割り込むと週末には1.33ドル台後半まで一時上昇しました。週足の一目均衡表では転換線にサポートされ、雲の上抜けをうかがうところまで来ています。遅行線も雲の中に入ってくることから、ユーロの上昇継続の可能性が高くなってきているように思います。ユーロ/円は2011年5月医らの119.340円まで上昇したこともあり、こちらも強い上昇トレンドが出ていると思います。2013年1-3月期のユーロの成長見通しは弱いものの、市場の楽観的な心理に支えられていることや日本の追加緩和継続の見方が強いことから、116円台までの多少の買われ過ぎの調整は出てもおかしくはないものの、イタリアの総選挙でベルルスコーニ氏が正式に出馬表明をしなかったことなども足元のリスク軽減につながっていると思います。ユーロ圏では14日の鉱工業生産、17日の建設支出がありますが、それほど注目度は高くないと思います。
【ポンド】
(c)UH standard chart
ポンドは次期英中銀総裁に就任するカーニー現カナダ銀行総裁は金融政策に対してGDPターゲットを含めたフレームワークに関する昨年12月の発言などが材料視され、ポンドは対ドルで調整色を強めましたが木曜日には大幅に反発しました。英国では15日に消費者物価指数、18日には小売売上高の発表が予定されていて、小売売上高はクリスマス商戦が好調だったことで、ポンド買いにつながる可能性があり、チャート上では1/2の高値の1.63805ドルを上抜けられるかどうかです。上抜けに失敗した場合には1.5990ドル近辺までの調整が予想されます。一方対円では、週末には144.409円まで上昇しています。201年4月以来の水準まで上昇していることで、調整の可能性がありますが1/2の高値の142.744円近辺まででとどまれば、2009年8月の高値の163.060円を目指していくものと思います。
【豪ドル】
(c)UH standard chart
豪ドルは10日に発表された中国の貿易収支が大幅な改善を見せていたことから、その前日に発表された豪の貿易収支が悪化していたものの対ドル、対円で上昇しましたが週末は金や銀などの商品価格が下落したことから調整となりました。今週は17日の失業率、新規雇用者数の発表が予定されていることから、予想以上に雇用が悪化した場合には調整色が強くなると思います。一方、18日には中国の10-12月のGDPや鉱工業生産、小売売上高の発表が予定されていることから、これが回復傾向を見せれば豪ドルが買われる可能性があり、対ドルでは昨年9月の高値の1.06213ドルを上に抜けることができるかに注目です。対円では94.521円まで週末に上昇していることもあり、1/7の高値の92.837円近辺まで調整がある可能性もありますが、そのまま上に抜けた場合には、ひとまず2007年の高値の107.850円と2008年の安値の55.010円を100%としたフィボナッチ76.4%戻しの95.335円近辺がめどとなりそうです。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
88.4 ~ 91.7 |
ユーロ/ドル |
1.317 ~ 1.348 |
ユーロ/円 |
116 ~ 121.8 |
ポンド/円 |
141 ~ 145.9 |
豪ドル/円 |
92 ~ 95 |
NZドル/円 |
74 ~ 76.3 |
南アランド/円 |
10.2 ~ 10.6 |
■注目イベント 1/14(月) 09:30 豪 11月 住宅ローン件数 16:00 ドイツ 12月 卸売物価指数(WPI) 19:00 ユーロ圏 11月 鉱工業生産 1/15(火) 08:50 日本 12月 マネーストックM2 09:01 英国 12月 英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格指数 16:00 ドイツ 12月 消費者物価指数(CPI)改定値 16:45 フランス 11月 財政収支 18:30 英国 12月 卸売物価指数(食品、エネルギー除くコアPPI) 18:30 英国 12月 消費者物価指数(CPI) 18:30 英国 12月 小売物価指数(RPI) 19:00 ユーロ圏 11月 貿易収支 22:30 米国 12月 卸売物価指数(PPI) 22:30 米国 12月 小売売上高 22:30 米国 1月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 00:00 米国 11月 企業在庫 1/16(水) 08:50 日本 12月 国内企業物価指数 08:50 日本 11月 機械受注 14:00 日本 12月 消費者態度指数・一般世帯 17:15 スイス 11月 実質小売売上高 19:00 ユーロ圏 12月 消費者物価指数(HICP)改定値 20:00 南ア 11月 小売売上高 21:00 米国 MBA住宅ローン申請指数 22:30 米国 12月 消費者物価指数(CPI) 23:00 米国 11月 対米証券投資(短期債除く) 23:15 米国 12月 鉱工業生産 23:15 米国 12月 設備稼働率 00:00 米国 1月 NAHB住宅市場指数 1/17(木) 08:50 日本 11月 第三次産業活動指数 09:30 豪 12月 新規雇用者数 09:30 豪 12月 失業率 17:15 スイス 12月 生産者輸入価格 18:00 ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)月報 19:00 ユーロ圏 11月 建設支出 22:30 カナダ 11月 対カナダ証券投資額 22:30 米国 前週分 新規失業保険申請件数 22:30 米国 12月 住宅着工件数 22:30 米国 12月 建設許可件数 00:00 米国 1月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 1/18(金) 06:45 NZ 10-12月期 四半期消費者物価(CPI) 11:00 中国 10-12月期 四半期国内総生産(GDP) 11:00 中国 12月 鉱工業生産 11:00 中国 12月 小売売上高 13:30 日本 11月 鉱工業生産確報値 18:30 英国 12月 小売売上高指数 22:30 カナダ 11月 製造業出荷 23:55 米国 1月 ミシガン大学消費者態度指数速報値 経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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