11/12 週の見通し -ギリシャ融資、スペイン支援要請のリスク継続か-
2012/11/11
【全体】 先週は、米大統領選挙は事前の予想に反して接戦ではなく、オバマ大統領の勝利となりましたが、市場は米国の「財政の崖」に対する懸念とギリシャの融資延期、フランスの格下げ懸念などユーロに対する懸念からリスク・オフのセンチメントとなり、円とドルが買われる展開となっています。今週は、米国の小売売上高などの発表があるものの、市場が米国や欧州の政策に対して安心できる材料が出てくるのかが注目されるものと思います。特に16日に国債の償還を迎えるギリシャに対する融資が延期された場合のデフォルト懸念にどう対処してくるのかがセンチメント改善のカギを握ると見られます。
【ドル/円】
(c)UH standard chart
ドル/円は一目均衡表(週足)の雲の上抜けに失敗し逆に雲の下に出てしまいました。6月下旬以来となる雲の上抜けに失敗しているため、雲の下限となる79.875円が戻りの抵抗となりそうです。米大統領選後の「米国の財政の崖問題」、ギリシャへの融資が先送りされる可能性からのリスク・オフのセンチメントで円が買われやすくなっているとみられますが、週末に発表された米ミシガン大消費者信頼感指数が上振れしていたこと、足元では79円割れに失敗したこと、中国10月の貿易収支(土曜日に発表)が、市場予想を上回り上振れしていることから、週明けはドル買いが先行すると思いますが、テクニカルのレベルを上抜けられるかに注目です。一方、経済指標は14日(水)の小売売上高、15日(木)の消費者物価指数、NY連銀製造業景気指数、新規失業保険申請件数、フィラデルフィア連銀製造業景気指数が良ければドル買いとなる可能性が高いのですが、ユーロにリスクが残れば円が買われると思われるため、ドル/円でのドルの上値は重いと思います。
【ユーロ】
(c)UH standard chart
ユーロ/円はギリシャが8日に緊縮財政法案を可決したものの、ユーロ圏財務相会合ではギリシャ向けの315億ユーロの融資を承認しないとみられ、スイコウラス・ギリシャ財務相は現金の準備が急速に減少しており、ぎりぎりの状態となっていることを明らかにしています。このため、ギリシャは16日に償還を迎える50億ユーロを超えるギリシャの債券のロールオーバーを検討するとともに、ユーロ圏はギリシャが突然のデフォルト宣言を行わないように準備をするとしていますが、デフォルトに対する懸念からスペイン国債の利回りなどが上昇した場合には、ユーロの弱含みが継続するものと思います。また、フランスの格下げ懸念も残っています。チャートでは、一目均衡表(日足)で転換線が基準線を下抜けしたこと、遅行線が日々線(ロウソク足)を下抜けしたこと、週足のストキャスティクススロー(9,3,3)でデッドクロスしていることから、一目均衡表(週足)の基準線となる99.40円近辺までの下落の可能性がありそうです。また、先週ドラギECB総裁がドイツの成長に懸念を示したことで、13日(火)の独ZEW景況感調査、15日(木)の独7-9月期GDP速報値が市場予想より悪化した場合にはユーロが更に売られることになると思います。
【ポンド】
(c)UH standard chart
ポンド/円は英財務省が英中銀(BOE)が実施している資産買い入れプログラムの利子収入を利用して、短期的に国債発行額を削減する計画を明らかにしました。7-8日に開催された英中銀金融政策委員会(MPC)では、小規模な金融緩和にあたるとしており、影響を考慮する必要があるとの見解を示しています。英国では、13日(火)に消費者物価指数、14日(水)に失業率、失業保険申請件数、15日(木)に小売売上高の発表が予定されていますが、オリンピックで押し上げられた成長傾向が続くのか見極めたいところです。テクニカルでは、いしもく均衡表(週足)では、雲の下限でサポートされたものの、雲の中に入り転換線を下抜けして、ストキャスティクススロー(9,3,3)もデッドクロスしました。日足でも一目均衡表の基準線を下抜けして、MACDもデッドクロスしています。ただ、日足では雲で支えられたとみることもできますので、すぐに基準線を回復してくるようならば、128円に向けて戻ると思いますが、戻りに失敗した場合には、10/11の安値となる124.737円を試しに行く可能性があります。
【豪ドル】
(c)UH standard chart
豪ドル/円は6日の金融政策会合では、予想外に政策金利を据え置き、中銀の声明でも利下げを示唆する内容となりませんでした。先週発表された経済指標も住宅価格指数を除き概ね良かったことや土曜日に発表された中国の貿易収支が市場予想を上回っています。豪は今週は主要な経済指標の発表がないことから、ユーロ圏のリスクに対する市場のセンチメントに主導される展開となり、懸念が高まれば豪ドルの下落が継続、懸念が和らげば戻りにつながると思います。チャートでは、MACDがデッドクロスしていますが、一目均衡表(週足)の雲の上限で支えられていることや遅行線がロウソク足の上をしばらく推移するとみられることから、底堅い動きが続くのではないかと思います。日足も一目均衡表の転換線を下抜けたとはいえ、基準線と雲(81円台ミドルから前半にかけて)がサポートとなると思います。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
78.4 ~ 80.6 |
ユーロ/ドル |
1.248 ~ 1.297 |
ユーロ/円 |
99.6 ~ 102.2 |
ポンド/円 |
124.9 ~ 128.3 |
豪ドル/円 |
81.5 ~ 84.1 |
NZドル/円 |
63.8 ~ 65.8 |
南アランド/円 |
8.9 ~ 9.3 |
■注目イベント 11/12(月) 08:50 日本 9月 第三次産業活動指数 08:50 日本 7-9月期 四半期実質国内総生産(GDP)速報値 08:50 日本 10月 国内企業物価指数 09:30 豪 9月 住宅ローン件数 16:00 ドイツ 10月 卸売物価指数(WPI) 11/13(火) 09:01 英国 10月 英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格指数 09:30 豪 10月 NAB企業景況感指数 13:30 日本 9月 鉱工業生産確報値 16:45 フランス 9月 経常収支 16:45 フランス 7-9月期 非農業部門雇用者速報値 17:15 スイス 10月 生産者輸入価格 18:30 英国 10月 卸売物価指数(食品、エネルギー除く) 18:30 英国 10月 消費者物価指数(CPI) 18:30 英国 10月 小売物価指数(RPI) 19:00 ドイツ 11月 ZEW景況感調査(期待指数) 19:00 ユーロ圏 11月 ZEW景況感調査 04:00 米国 10月 月次財政収支 11/14(水) 06:45 NZ 7-9月期 四半期小売売上高指数 16:45 フランス 10月 消費者物価指数(CPI) 18:30 英国 10月 失業保険申請件数 18:30 英国 10月 失業率 19:00 ユーロ圏 9月 鉱工業生産 19:30 英国 英中銀物価報告(インフレリポート) 20:00 南ア 9月 小売売上高 22:30 米国 10月 卸売物価指数(PPI) 22:30 米国 10月 小売売上高 00:00 米国 9月 企業在庫 04:00 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 11/15(木) 15:30 フランス 7-9月期 国内総生産(GDP)速報値 16:00 ドイツ 7-9月期 国内総生産(GDP)速報値 18:00 ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)月報 18:30 英国 10月 小売売上高指数 19:00 ユーロ圏 10月 消費者物価指数(HICP)改定値 19:00 ユーロ圏 7-9月期 四半期域内総生産(GDP)速報値 22:30 カナダ 9月 製造業出荷 22:30 米国 10月 消費者物価指数(CPI) 22:30 米国 11月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 22:30 米国 新規失業保険申請件数 00:00 米国 11月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 11/16(金) 18:00 ユーロ圏 9月 経常収支 19:00 ユーロ圏 9月 貿易収支 22:30 カナダ 9月 対カナダ証券投資額 23:00 米国 9月 対米証券投資(短期債除く) 23:15 米国 10月 鉱工業生産 23:15 米国 10月 設備稼働率 経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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