5/13 今週の見通し-米小売とユーロ圏諸国GDPに注意-
2013/05/12
【全体】 10-11日と英アイルズベリで行われていたG7財務相・中央銀行総裁会議では、ショイブレ独財務相が為替で日本と集中討議を行ったと発言したものの、麻生副首相兼財務相が「100円突破がどうのこうの(との議論は)一切なかった」と発言、日本の金融政策が容認されたとの姿勢を重ねて示しました。結局G7では「中期的に財政健全化を着実に進めることが重要」との認識が共有されたに留まったようです(財務省のホームページには現時点では特に何も掲載されていません)。週末の市場では一応の警戒はされていましたが、どちらかというとある程度は織り込まれていたとみられるため、週明けの東京時間で一気に円安が進む地合いにはならないと思います。一方、バーナンキ米FRB議長の講演では出口についての発言は聞かれていませんが、市場は期待感を持ち始めていることから、発表される米国の小売売上高などの経済指標によってはドルが主導して円安が進む可能性があります。また、ユーロ圏では1-3月期のGDP速報値が発表されることから、欧州への懸念が出てくると、クロス円が重くなり、ドル/円の上昇を押さえる可能性があります。
【ドル/円】
(c)UH standard chart
先週後半に100円を突破してから円安がスピードが再び速くなっています。これまで、節目(90円、95円)を超えたところでは節目がサポートとなり、押し目を待っても到達しなくなっています。日本をはじめとして主要な国および地域では金融緩和が進んでいることもあり、過剰流動性が株価の上昇に繋がっていることも円が売られやすい要因となっていると見られます。また、米国の雇用の回復傾向が続いていることで出口戦略への期待感からのドル上昇も背景にはありそうです。こうした中で13日(月)には中国の鉱工業生産などの経済指標、米国の小売売上高の発表が予定されています。中国への懸念が後退する内容で、米小売りが堅調であればドル/円の102-103円への上昇が早まるでしょうし、悪ければいったん期待感が冷やされると思います。その後は15日(水)以降でのNY連銀指数などの景況感やNAHB住宅市場指数などの住宅関連指標が注目されることになります。一目均衡表(月足)では雲を上に抜けてきていることから、遅行線が雲の中に入る102.25円近辺を超えてくると105円後半まで上昇が継続する可能性高くなります。また、気が早いかもしれませんが1998/8月高値の147.660円と2007/6月の高値を結んだレジスタンスラインが108.50円近辺に位置していますので、円安の流れが続いた場合にはこのレベルが目標となりそうです。一方でリスク要因は難しいのですが、米国の出口戦略に対する期待が高まるとNYダウの下落に繋がってくることから、昨今のシステム売買による一時的な株価の調整などへの警戒でしょうか。アノマリー的な"Sell in May and go awa(5月に株を売り抜けろ)"もあります。
【ユーロ】
(c)UH standard chart
ユーロは米国への出口戦略期待が高まったことで、これまで1.30-1.32ドルのレンジから下抜けを試そうとしているようです。今週は15日(水)に仏、独、ユーロ圏の1-3月期GDP速報値の発表が予定されていますので、市場予想を下回るようだとユーロ売りに繋がりそうです。また、13日の中国の鉱工業生産などや14日のZEW景況感調査も材料視されるものと思われます。上記にも書きました通り、ドルが堅調推移となりやすい状況ということから、ユーロ/ドルとユーロ/円の動きは異なると見ています。ユーロ/ドルは一目均衡表(日足)の雲の上抜けに失敗して、転換線、基準線を下抜け、これで雲の下に抜け出てしまうとまずは1.2750ドル近辺まで下落が継続することになりそうです。その半面、ユーロ/円は週末に年初来高値を132.251円まで伸ばしてきました。ただ、ユーロ/円も対ドルでユーロの下落が激しくなると、相殺されてしまうことから、ここから133円から135円の上昇スピードは緩やかになる可能性があります。
【ポンド】
(c)UH standard chart
ポンドは米国への出口戦略期待やユーロ圏が政策金利の利下げを行った以降、スペインやイタリアなどの国債利回りの低下などもあり、逃避先としてのポンドの優位性が後退したと思われます。一目均衡表(週足)をみると基準線の1.56051ドルで上値を押さえられています。週末に発表された貿易収支は市場予想より小幅に赤字が増加、その一方では、鉱工業生産などの経済指標は前月比1.1%と景気の回復傾向が鮮明となってきているようです。国立経済社会研究所(NIESR)が毎月発表しているGDP予測値では2-4月が+0.8%と1-3月の+0.3%から拡大しているため、15日(水)に発表される失業保険申請件数や英中銀(BOE)インフレレポートによっては一目均衡表(日足)の雲の下限の1.5140ドル近辺をサポートとして調整が終わる可能性があります。ポンド/円は年初来高値を156.674円まで伸ばしていることで、ポンド/ドル次第となりますが2009/8月の163.060円近辺が目標となるかもしれません。
【豪ドル】
(c)UH standard chart
豪ドルは豪準備銀行(RBA)がサプライズの利下げを行ったことに加え、声明でもさらなる引き下げ余地があることに言及したこと、NZが自国通貨高に対して介入を行ったこと、イングリッシュNZ財務相が「RBNZが介入を行う責務がある」と発言していることなどでオセアニア通貨では売りが先行しています。複数の金融機関やファンドなどが豪ドルを売り推奨していることなどで、豪の新規雇用者数が市場予想を大幅に上回ったものの対ドルではオセアニア通貨の下落が続く可能性が高そうです。売り推奨の背景としてはこれまで豪経済を支えてきた資源投資ブームがピークアウトするとの見通しや中国の資源重要は減速するとの見方などです。豪ドル/米ドルは週末に一時パリティ(1豪ドル=1米ドル)を割り込んだことから、昨年5月の安値の0.95753ドル近辺が目標となると思います。豪ドル/円は100円から103円のレンジが続いていますが、一目均衡表(日足)の雲に接近してきていることから、雲の中に入ってくるとレンジを下抜けする可能性が高まります。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
99.9 ~ 103.3 |
ユーロ/ドル |
1.281 ~ 1.307 |
ユーロ/円 |
129.7 ~ 133.3 |
ポンド/円 |
153.7 ~ 159.6 |
豪ドル/円 |
99.3 ~ 102.9 |
NZドル/円 |
83.1 ~ 85.6 |
南アランド/円 |
10.9 ~ 11.3 |
■注目イベント 5/13(月) 08:50 日本 4月 マネーストックM2 10:30 豪 3月 住宅ローン件数 10:30 豪 4月 NAB企業景況感指数 14:30 中国 4月 鉱工業生産 14:30 中国 4月 小売売上高 16:15 スイス 3月 実質小売売上高 21:30 米国 4月 小売売上高 23:00 米国 3月 企業在庫 5/14(火) 07:45 NZ 1-3月期 四半期小売売上高指数 08:01 英国 4月 英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格指数 08:50 日本 4月 国内企業物価指数 15:00 ドイツ 4月 消費者物価指数(CPI)改定値 15:00 ドイツ 4月 卸売物価指数(WPI) 15:45 フランス 3月 経常収支 18:00 ユーロ圏 3月 鉱工業生産 18:00 ユーロ圏 5月 ZEW景況感調査 18:00 ドイツ 5月 ZEW景況感調査(期待指数) 21:30 米国 4月 輸入物価指数 21:30 米国 4月 輸出物価指数 5/15(水) 08:50 日本 3月 第三次産業活動指数 14:00 日本 4月 消費者態度指数一般世帯 14:30 フランス 1-3月期 国内総生産(GDP)速報値 15:00 ドイツ 1-3月期 国内総生産(GDP)速報値 15:45 フランス 4月 消費者物価指数(CPI) 16:15 スイス 4月 生産者輸入価格 17:30 英国 4月 失業率 17:30 英国 4月 失業保険申請件数 18:00 ユーロ圏 1-3月期 四半期域内総生産(GDP)速報値 18:30 英国 英中銀四半期インフレリポート 20:00 南ア 3月 小売売上高 21:30 カナダ 3月 製造業出荷 21:30 米国 5月 NY連銀製造業景気指数 21:30 米国 4月 卸売物価指数(PPI) 22:00 米国 3月 対米証券投資(短期債除く) 22:15 米国 4月 鉱工業生産 22:15 米国 4月 設備稼働率 23:00 米国 5月 NAHB住宅市場指数 5/16(木) 08:50 日本 1-3月期 四半期実質国内総生産(GDP)速報値 13:30 日本 3月 鉱工業生産確報値 15:45 フランス 1-3月期 非農業部門雇用者速報値 18:00 ユーロ圏 4月 消費者物価指数(HICP)改定値 18:00 ユーロ圏 3月 貿易収支 21:30 カナダ 3月 対カナダ証券投資額 21:30 米国 4月 消費者物価指数(CPI) 21:30 米国 4月 住宅着工件数 21:30 米国 4月 建設許可件数 21:30 米国 前週分 新規失業保険申請件数 23:00 米国 5月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 5/17(金) 07:45 NZ 1-3月期 四半期卸売物価指数(PPI) 08:50 日本 3月 機械受注 18:00 ユーロ圏 3月 建設支出 21:30 カナダ 3月 卸売売上高 21:30 カナダ 4月 消費者物価指数(CPI) 22:55 米国 5月 ミシガン大学消費者態度指数速報値 23:00 米国 4月 景気先行指標総合指数 経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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