12/3 週の見通し-米財政の崖と豪金融政策に注意-
2012/12/02
【全体】 いよいよ12月に入りました。12月は後半にクリスマスを控えていることから、上旬、中旬に経済指標の発表が続きます。その中で、今週は豪、カナダ、NZ、英国、ユーロ圏の中央銀行による金融政策の発表が予定されていますが、豪準備銀行(RBA)の0.25%の利下げを予想する市場関係者が多いようです。また、クリスマスまでの合意に楽観論が支配していた米国の「財政の崖」問題については、ベイナー米下院議長が「富裕層の税率の引き上げは誤ったアプローチ」と難色を示し「ほとんど何も進展していない」と発言をしています。このため、時間が経過するに従い、市場のリスク度合いが高まる可能性があり、リスク・オフのセンチメントから、円買いとドル買いにつながってリスクには注意が必要です。
【ドル/円】
(c)UH standard chart
ドル/円は週足のストキャスティクススロー(9,3,3)が%Dで93.4、SDで88.7までと、本年3月の水準に近いところまで上昇してきました。一目均衡表(日足)では、転換線がサポートとなり、11/2の高値の80.672円が中期的なサポートと見られる中で底堅い動きをしているため、11/22の高値の62.831円を上に抜ければ年初来の高値となる3/15の高値84.170円を試しに行く動きになると思います。また、本邦では12/4(火)に総選挙の公示がなされることから、安倍自民党総裁の発言なども円売りを後押しすると見られるため、円が売られやすい状況が続くと思います。ただ、米国の財政の崖への懸念も残っていることや週末7日には雇用統計の発表を控えていることもあり、米雇用の悪化が示された場合には、リスク・オフが強まる可能性があります。
【ユーロ】
(c)UH standard chart
ユーロは11/26のユーロ圏財務相会合でギリシャへの427億ユーロの融資に合意しましたが、既に市場に織り込まれていたこともあり、材料出尽くしから上値は重くなりました。ただ、ユーロ/円では週後半に円売りが進んだこともあり、一目均衡表(週足)では雲の上を維持しています。遅行線が雲の下限となる107.760円を前に伸び悩んでいることもあり、ここを超えられるを今週試すことになり、雲の中に入れるようだと、本年3/21の高値の111.416円を試しに行くと思います。今週は6日にECB理事会が予定されているものの、政策金利は据え置かれるものと見られ、OMTについてもドラギECB総裁からは新たな発言はなされないものと思います。このため、市場はユーロに対して新たな材料を持てないとみられますので、OMT期待が現在のベースを下支えする一方で、景気見通しの悪化やムーディーズのフランスやESM(AAA⇒AA1)、EFSF(AAA⇒AA1)の格下げにより、ユーロの高値追いにも限界が近いものと思います。また、中東やエジプトでの地政学的なリスクがユーロの足を引っ張る可能性があります。
【ポンド】
(c)UH standard chart
ポンド/円は11/30(金)に足元の高値を132.790円まで更新し、週足でみるとロウソク足の形がほぼ十字(上十字)となっています。買い圧力が強いことを示していますので、まずは3/21の高値の133.463円を試しに行くものと思います。今週6日には英中銀(BOE)の金融政策委員会が予定されていて、先週はビーンBOE副総裁が「BOEは量的緩和を効果がないと判断してはいない」「英国のインフレはそれほどの懸念材料ではない」「一段の資産購入についての扉は依然として開かれている」と発言しているものの、前回の議事録や投票行動、英国の経済指標をみていても、今回の会合での利下げや資産買い入れプログラムの増額を行う可能性は低いと思います。その他には製造業やサービス業のPMI、鉱工業生産などの発表もありますが、ユーロ同様に中東やエジプトでの地政学的なリスクがユーロの足を引っ張る可能性があります。
【豪ドル】
(c)UH standard chart
冒頭にも書きましたが、今週市場関係者が注目しているのが4日(火)の豪準備銀行(RBA)の金融政策委会合で0.25%の利下げが実施されるかどうかです。足元では中国の製造業PMIなどが改善の兆しを示しているものの、中国向けの輸出が回復傾向を示していないことで、豪の交易条件が回復するには時間がかかるとの見方が強く、資源ブームが終わったとの見方も強くなっています。今回0.25%の利下げを実施した場合には2009年9月いらいの3.00%という歴史的な低水準となることから、声明で更なる利下げの可能性が示唆された場合には豪ドルの一段安につながる可能性があります。また、6日(木)には雇用関連の指標が発表されることから、これらが悪化した場合には豪ドルの売りにつながると思います。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
80.6 ~ 83.6 |
ユーロ/ドル |
1.283 ~ 1.317 |
ユーロ/円 |
105.5 ~ 108.5 |
ポンド/円 |
129.3 ~ 135.2 |
豪ドル/円 |
83 ~ 88.6 |
NZドル/円 |
65.5 ~ 69.1 |
南アランド/円 |
9.05 ~ 9.35 |
■注目イベント 12/3(月) 09:30 豪 10月 小売売上高 17:15 スイス 10月 実質小売売上高 17:30 スイス 11月 SVME購買部協会景気指数 18:00 ユーロ圏 11月 製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値 18:30 英国 11月 製造業購買担当者景気指数(PMI) 00:00 米国 11月 ISM製造業景況指数 00:00 米国 10月 建設支出 12/4(火) 08:50 日本 11月 マネタリーベース 09:01 英国 11月 英小売連合(BRC)小売売上高調査 09:30 豪 7-9月期 経常収支 09:30 豪 10月 住宅建設許可件数 10:30 日本 10月 毎月勤労統計調査-現金給与総額 12:30 豪 豪準備銀行(中央銀行)政策金利 19:00 ユーロ圏 10月 卸売物価指数(PPI) 19:00 南ア 10-12月期 四半期 南アフリカ経済研究所(BER)消費者信頼感指数 23:00 カナダ カナダ銀行 12/5(水) 09:30 豪 7-9月期 四半期国内総生産(GDP) 18:00 ユーロ圏 11月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値 18:30 英国 11月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI) 19:00 ユーロ圏 10月 小売売上高 22:15 米国 11月 ADP雇用統計 22:30 米国 7-9月期 四半期非農業部門労働生産性改定値 00:00 米国 11月 ISM非製造業景況指数(総合) 00:00 米国 10月 製造業新規受注 05:00 NZ NZ準備銀行(RBNZ)政策金利 12/6(木) 09:30 豪 11月 新規雇用者数 09:30 豪 11月 失業率 15:45 スイス 11月 失業率 17:00 南ア 7-9月期 四半期経常収支 17:15 スイス 11月 消費者物価指数(CPI) 18:30 英国 10月 貿易収支 19:00 ユーロ圏 7-9月期 四半期域内総生産(GDP)改定値 20:00 ドイツ 10月 製造業新規受注 21:00 英国 イングランド銀行(BOE)金利発表 21:30 米国 11月 チャレンジャー人員削減数 21:45 ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)政策金利 22:30 カナダ 10月 住宅建設許可件数 22:30 米国 前週分 新規失業保険申請件数 00:00 カナダ 11月 Ivey購買部協会指数 12/7(金) 14:00 日本 10月 景気一致指数(CI)速報値 14:00 日本 10月 景気先行指数(CI)速報値 16:45 フランス 10月 財政収支 16:45 フランス 10月 貿易収支 18:30 英国 10月 鉱工業生産指数 18:30 英国 10月 製造業生産指数 20:00 ドイツ 10月 鉱工業生産 22:30 カナダ 7-9月期 四半期労働生産性指数 22:30 カナダ 11月 失業率 22:30 カナダ 11月 新規雇用者数 22:30 米国 11月 非農業部門雇用者数変化 22:30 米国 11月 失業率 23:55 米国 12月 ミシガン大学消費者態度指数速報値 05:00 米国 10月 消費者信用残高 00:00 経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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