8/5 今週の見通し-週後半の中国指標に警戒-
2013/08/04
週末に発表された米国の雇用統計は失業率は改善したものの、非農業部門雇用者数は下振れ、過去2か月も下方修正されました。これにより、1ドル=100円手前まで上昇していたドルは99円を割り込みました。また、米4-6月期実質GDPの上振れや米ISM製造業景気指数のサプライズ的な良化を受けて期待が高まった9月FOMCでの米QE縮小開始が後退したことで、欧州などの通貨に対してもドルが弱含みとなりました。発表された非農業部門雇用者数の数値は以下。
■非農業部門雇用者数(単位:千人)
項目 | 5月 | 6月 | 7月 |
雇用者数増減 |
+176 |
+188 |
+162 |
雇用者数 |
135,688 |
135,876 |
136,038 |
財生産 |
18,631 |
18,639 |
18,643 |
民間サービス |
95,198 |
95,386 |
95,543 |
政府 |
21,859 |
21,851 |
21,852 |
非農業部門雇用者数の下振れがドルの継続的な下落の要因となるとは思われず、今後も発表される米国の経済指標を見ながら判断するというFEDのスタンスは変わらないと思います。ただ、FEDの次期議長を巡ってはイエレンFRB副議長、サマーズ元国家経済会議委員長、コーン前副議長などの名前が出ていますので、こうした人選を巡る思惑も市場に影響を与えそうです。また、2.5%を下回らない米10年債利回りが米国経済へのダメージをじわじわと与える可能性がありますので、ドルの一本調子の上昇も考えにくいところです。今週は米国の非製造業ISM景気指数のなどの発表もありますが、注目は8日の中国貿易収支、9日の中国鉱工業生産などと6日の豪準備銀行(RBA)の金融政策会合があり、豪ドルが大きく動きそうです。
【ドル/円】
(c)UH standard chart
先週前半は米FOMCを前にドルが弱含みとなりましたが、発表された米国の経済指標が予想より良い内容となった(特に雇用の改善に期待がもたれた)ことで、後半はドル買いとなりましたが、米雇用統計の予想より弱い内容を受け、やや前のめりになっていた市場心理が冷やされた形となりました。とはいうものの、為替レートのレベルは新規失業保険申請件数発表時とほぼ同じところに留まり、米QE縮小についての市場の織り込みについては、変化がないものとみています。今後は上記にも書きましたが、米国の経済指標はもちろん、FRB議長の人選も市場が興味を持つところだと思っています。オバマ米大統領はイエレン、サマーズ両氏の一騎打ちにしたくないようで、コーン氏の名前を挙げたことから、さらに複数の候補の名前を挙げると思われ、候補者のタカ派、ハト派度合いによって市場が小幅に反応する可能性があります。実際はまだバーナンキ米FRB議長が去就を公式には表明していないこともあり、紆余曲折はありそうです。今週は5日の米非製造業ISM景気指数が製造業に続き良化が進めばドル買いマインドが戻ってくると思います。あとは引き続き新規失業保険申請件数がカギとなりそうです。チャートで見ると、一目均衡表(週足)の転換線がサポートとなっているものの、基準線に接近してきてることで、6/10-17の週のように同線(97.306円)がサポートとなるかどうかです。日足でみると、一目均衡表(日足)の遅行線が雲の中を推移していること、実勢レートが雲の上にぬけているものの、上がり切れないことで、100円台では上値の重さを感じるため、雲の下限が位置する97.50円近辺とレジスタンスラインが存在する100.60円近辺でのレンジの動きとなると思います。
【ユーロ】
(c)UH standard chart
1日のECB理事会では以前のECBのようにサマー・バケーションということもないでしょうが、前回のECB理事会で発表した金融政策およびフォワードガイダンスの内容には変更がありませんでした。その一方で、少しずつ欧州の失業率や景況感の改善が見えてきました。スペインのラホイ首相を巡るスキャンダルは大きな問題にもなっていないものの、1日にラホイ首相が議会の特別審議で「資金はすべて税務当局に申告済み」と発言しているものの、疑念は腐食できず、政権に対する支持率低下が財政再建には懸念要因となっています。現時点では米国経済が主要注目材料となっているため、こうした問題が注目されなければ、ユーロについてはドルが主導となる動きに変化がないものと思います。これはIMMの通貨先物の非商業ポジションでもポジションの傾きがほとんどなくなっていることで、裏付けられているのではないか(方向感を持っていないのではないか)と思っています。ユーロ/ドルは一目均衡表(週足)の雲でサポートされているものの、十字線が出ています。また、遅行線が雲の上限が2週連続でレジスタンスとなっているため、6/18高値の1.34150ドルがレジスタンスとなる可能性が高く、転換線の1.30850ドルとの間でのレンジとなると思います。ユーロ/円は一目均衡表(週足)の転換線の128.840円と5/22高値の133.792円との間のレンジとなるのではないかと思っています。
【ポンド】
(c)UH standard chart
1日の英中銀(BOE)の金融政策会合では0.5%の政策金利と3750億ポンドの資産買入れプログラムの維持(現状維持)が決定されました。足元の英製造業PMIなど景況感が回復してきていることから、7日(水)に公表されるインフレレポートでも成長見通しがやや引き上げられるものとみられ、インフレ見通しについても5月時点と同様に2%程度に収斂する見通しを示すものと思います。ただ、オズボーン英財務相は中銀総裁交代以降により柔軟な対応をとることを求めていることから、カーニー新総裁がフォワードガイダンスを含めてどのような見方を示すか注目です。現時点では、市場は追加の緩和がないとの見方をしていると思われますので、ハト派的な内容となればポンド売りにつながるものと思います。今週は5日のサービス業PMI、6日の鉱工業生産指数、製造業生産指数、9日の貿易収支と経済指標の発表が続くことから、こうした指標の改善が見られれば、ポンドが主要通貨で買われるものと思います。ポンド/ドルの週足は下にヒゲの長い陰線となりました。一目均衡表(週足)では、クローズは転換線でサポートされたものの、基準線がレジスタンスとなった格好です。一目均衡表(日足)では、雲の上限に抜け出ることができなかったこともあり、目先は頭の重い展開が予想されます。足元では7/25の高値の1.54329ドルを上抜けられば、週足のロウソク足と遅行線がぶつかる1.55118ドル近辺まで上昇か。サポートは先週安値の1.51007ドル。ポンド/円は147円から154円の幅の広いレンジで推移しています。一目均衡表(週足)の基準線147.229円がサポートとみられますので、ここを下抜けない限りはレンジが継続すると思います。日足は一目均衡表(日足)の厚みのない雲の中に入っているため、雲を上抜けられれば、遅行縁覚元物から153円台後半から154円近辺までの上昇の可能性があります。それも抜けると5/13高値の156.753円が見えてきます。
【豪ドル】
(c)UH standard chart
豪の6日(火)に金融政策会合が予定されていて、市場は0.25%の利下げをかなり織り込んでいます。市場は年内0.50%までの利下げを織り込んでいるとみられ、今回仮に見送ったとしても、この先々の利下げ期待で豪ドルの戻りは一時的にとどまるものと思いますし、8日には豪7月新規雇用者数、中国7月のの貿易収支、9日には中国7月消費者物価指数、同鉱工業生産、同小売売上高と注目度が高い経済指標の発表が続くことから、どうしても豪ドルの弱含みが継続するのではないかと思います。豪ドル/米ドルは7/12の0.89980ドルを下抜けして0.88763ドルまで安値を更新しました。このため、2010年8月安値の0.87690ドルでもサポートされない場合には、2010年2月安値の0.85760ドル近辺が目標となるとみられます。戻りがもしあれば一目均衡表(週足)の転換線の0.93331ドル近辺だと思います。豪ドル/円は2012/3/19の高値の88.628円を下抜け、週足ベースでは一目均衡表(週足)の雲の上から中に入ってきました。このため、雲の下限の85.938円を下に抜けると、2012年8月高値の83.562円近辺まで下落が進む可能性があります。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
97.5 ~ 101.4 |
ユーロ/ドル |
1.314 ~ 1.341 |
ユーロ/円 |
128.9 ~ 133.1 |
ポンド/円 |
149.3 ~ 154.1 |
豪ドル/円 |
86.3 ~ 90.4 |
NZドル/円 |
75.9 ~ 80.4 |
南アランド/円 |
9.5 ~ 10.2 |
8/5(月) 10:30 豪 6月 小売売上高 16:55 ドイツ 7月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値 17:00 ユーロ 7月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値 17:30 英国 7月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI) 18:00 ユーロ 6月 小売売上高 23:00 米国 7月 ISM非製造業景況指数(総合) 8/6(火) 08:01 英国 7月 英小売連合(BRC)小売売上高調査 10:30 豪 6月 貿易収支 10:30 豪 4-6月期 四半期住宅価格指数 13:30 豪 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 14:00 日本 6月 景気一致指数(CI)速報値 14:00 日本 6月 景気先行指数(CI)速報値 17:30 英国 6月 鉱工業生産指数 17:30 英国 6月 製造業生産指数 19:00 ドイツ 6月 製造業新規受注 21:30 カナダ 6月 貿易収支 21:30 米国 6月 貿易収支 8/7(水) 07:45 NZ 4-6月期 四半期失業率 08:50 日本 7月 外貨準備高 10:30 豪 6月 住宅ローン件数 14:45 スイス 7月 スイスSECO消費者信頼感指数 15:45 フランス 6月 貿易収支 16:15 スイス 7月 消費者物価指数(CPI) 18:30 英国 英中銀(BOE)インフレリポート 19:00 ドイツ 6月 鉱工業生産 21:30 カナダ 6月 住宅建設許可件数 23:00 カナダ 7月 Ivey購買部協会指数 04:00 米国 6月 消費者信用残高 8/8(木) 08:50 日本 6月 国際収支経常収支 08:50 日本 6月 国際収支貿易収支 10:30 豪 7月 新規雇用者数 10:30 豪 7月 失業率 未定 日本 日銀金融政策決定会合 未定 中国 7月 貿易収支(米ドル) 14:00 日本 7月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI 14:45 スイス 7月 失業率 15:00 ドイツ 6月 貿易収支 15:00 ドイツ 6月 経常収支 17:00 ユーロ 欧州中央銀行(ECB)月報 21:30 カナダ 6月 新築住宅価格指数 21:30 米国 前週分 新規失業保険申請件数 8/9(金) 08:50 日本 7月 マネーストックM2 08:50 日本 6月 第三次産業活動指数 10:30 中国 7月 消費者物価指数(CPI) 14:00 日本 7月 消費者態度指数一般世帯 14:30 中国 7月 鉱工業生産 14:30 中国 7月 小売売上高 15:45 フランス 6月 財政収支 15:45 フランス 6月 鉱工業生産指数 17:30 英国 6月 貿易収支 21:15 カナダ 7月 住宅着工件数 21:30 カナダ 7月 失業率 21:30 カナダ 7月 新規雇用者数 23:00 米国 6月 卸売在庫 経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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