8/12 今週の見通し-ドル反転には強い経済指標必要-
2013/08/11
豪準備銀行(RBA)は6日(火)に市場の大方の予想通り政策金利を0.25%引き下げ史上最低となる2.50%としましたが、声明では豪ドル高を警戒したものの、一段の緩和余地については言及されませんでした。また、英中銀(BOE)はインフレレポートで、フォワードガイダンスを採用したものの、失業率が市場が予想する6%~6.5%に反して7.0%と高めに設定した以外では、追加緩和というよりは利上げに対するスタンスを表明した内容となったことで、ポンド売りは一時的となりました。こうした流れと株価の軟調推移からの円買いが相まって、ドルが主要通貨に対して弱含みとなっています。今週は、本邦実需の参加が限られる中で、輸出のオーダーが上値を抑えるとみられる一方で、輸入のサポートも入りにくい状況であることから、米小売売上高や鉱工業生産、NAHB住宅市場指数などの経済指標と、フィラデルフィア連銀製造業景気指数、ミシンガン大消費者信頼感指数のセンチメント系指標が悪化しているようだと、円高が進む可能性があると思います。ユーロは独ZEW景況感調査やドイツ4-6月GDP、ユーロ圏4-6月GDPの発表が予定されていることもあり、ユーロ上昇となればドル安がさらに進むことになりそうです。 一方、本邦では12日(月)に発表される4-6月期実質GDPの内容に注目が集まるものと思います。麻生副首相兼財務相は「消費税引き上げは国際公約に近い」と発言していることもあり、消費税引き上げに慎重な見方のコメントがなされた場合には、本邦国債の利回り上昇からの円高の可能性もあります。
【ドル/円】
(c)UH standard chart
ドルは米非農業部門雇用者数が市場予想から下振れしたことと、過去2か月が下方修正されたことや株価の軟調推移から、雇用統計前の100円近辺から96円台前半まで約4円近く下落しています。これまでのドル買いの調整が進んだともいえますが、バーナンキ米FRB議長による「QE縮小は金融緩和の終了ではない」ということが市場に浸透してきたともいえそうです。ただ、ハト派とみられているエバンス米シカゴ連銀総裁は「9月の縮小開始の可能性を排除しない」別の日には「おそらく年内にQE縮小に着手する」と発言、ロックハート米アトランタ地区連銀総裁も今後発表される米国の経済指標によっては9月のQE縮小もありえると発言していることで、市場がQE縮小からの米金利上昇に期待した場合には、ドル買いにつながりやすいとみられます。ドル買いに市場心理が動くには、今週発表される米小売売上高や米鉱工業生産の実体経済の力強さとNY連銀、フィラデルフィア連銀製造業景気指数、ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)のセンチメント系指標がともに良いことが必要となりそうです。本邦実需勢が不在に近いことから、輸出の売りオーダーをこなせば100円近辺、逆に下に行った場合には95円割れとどちらにも動く可能性があります。チャートでは、これまで約1年にわたりサポートされていた一目均衡表(週足)の基準線を下回ってきたことで、週足ロウソク足の93円から94円を下回ってくると更なる下落につながる可能性があります。現時点では6/13安値の93.790円が大きなサポートとみられます。
【ユーロ】
(c)UH standard chart
ユーロ圏から発表された経済指標もおおむね改善の兆候を示す内容となっていたことと米雇用統計への期待剥落からユーロは対ドルで堅調に推移しました。今週は14日(水)にフランス4-6月期、ドイツ4-6月期、ユーロ圏4-6月期のGDP速報値がそれぞれ発表されます。市場予想はいずれもプラス成長となっていて、市場予想通りであればユーロにとっては支援材料となりそうです。ユーロは米ドルの持ち高調整にも下値が支えられていることから、米国で発表される小売売上高などの経済指標が良い場合には、ユーロの上値が重くなることも考えられます。しばらくはドルが主導する動きとなると思われ、イタリアの連立政権崩壊リスクは後退したものの、ポルトガルやスペインの政局も小康状態を保っていることから、ドルが主体の動きが続くものと思います。ユーロ/ドルは6/18高値の1.34150ドルに迫る1.33999ドルまで上昇しました。週足では一目均衡表(週足)の雲の上限に沿って上昇しているため、雲上限の1.32208ドル近辺がサポートとなる可能性が高いことと、遅行線がロウソク足の上に抜け出ることから、底固く推移するものと思います。前出の高値を上抜ければ2/1高値の1.37106ドル近辺まで上昇する可能性が高まります。ユーロ/円は一目均衡表(日足)の雲の攻防をしています。ただ、遅行線はロウソク足の下を推移していることや実勢レートが基準線と転換線を下回っていることから、どちらかというと下向きバイアスがかかっているとみられます。過去2日間の戻りが雲の上限に押さえられて雲の下に抜けていることから、6/26安値の126.569円近辺まで下落する可能性があります。
【ポンド】
(c)UH standard chart
英国では上記にも書きましたが、インフレレポートで「MPCは少なくとも労働力調査の失業率が7%の基準に低下するまではバンクレート(政策金利)を現行水準の0.5%から引き上げない意向である」とのフォワードガイダンスを示しました。ここでいう失業率とは英国統計局(ONS)が発表しているILO基準に基づいて産出される失業率のことで、ユーロスタット等でも広く使用されているものです。7月に発表された6月の失業率は7.8%でした。今後はこの失業率がポンドに与える影響が大きくなると思います。また、同日には英中銀(BOE)の金融政策委員会(MPC)議事録が公表されます。今回は①政策金利、②資産買入れプログラム、③フォワードガイダンスへの失業率の採用の3点について投票が行われたとの一部報道もあり、投票内容にも注目が集まるものと思います。金融政策自体への投票では9対0で現状維持が決定されたとみられることから大きな波乱材料にはならないと思います。このほかには13日(火)の消費者物価指数、15日(木)の小売売上高の発表が予定されていることから、特に小売売上高が好調(ロイヤルベイビー誕生などもあり)だった場合には、ポンドの上昇となると思われます。ポンド/ドルは一目均衡表(日足)の雲の上に抜け出ています。ただ、8/2の安値からは約450ポイント上昇したことで、短期的には上昇スピードが速いように思われます。8/8の高値の1.55725ドルを簡単に抜けていくようであれば、6/17高値の1.57496ドル近辺まで上昇する可能性がありますが、ストキャスティクス(スロー)がデッドクロスした場合には短期的に調整局面となるかもしれません。ポンド/円は一目均衡表(日足)の雲の下で推移しています。レンジは147.50円~152円とみられます。基準線の150.820円を上抜けて雲の中に入ってくるようであれば、7/24高値の154.036円を目指していくものと思います。
【豪ドル】
(c)UH standard chart
豪ドルは冒頭にも書きましたが6日の豪準備銀行(RBA)の金融政策で0.25%の引き下げを行いました。今回の声明では、「短期的にトレンドを下回る成長続く見通し」「豪ドルが最近の15%下落を受けても高い水準にある」としたものの、これまでの「緩和余地がある」との内容は削除されたことから、市場は利下げバイアスが終了、中立バイアスとなったとの見方を強め、これが豪ドルの買戻しにつながっています。シカゴ通貨先物の非商業ポジションでも書く最高水準までショートが溜まっていたことから、株価の軟調推移にもかかわらず、豪ドルは買い戻されたようです。今週は13日(火)にNAB企業景況感指数の発表が予定されているのみであり、影響を与える中国の経済指標も懸念が後退する内容だったことで、米国の経済指標が弱ければ豪ドルが買い戻される展開は続くものと思われます。豪ドル/米ドルは一目均衡表(日足)の転換線と基準線を上抜けてきたことから、雲の下限の0.93008ドルから7/24高値の0.93175ドルを目指すものと思われます。豪ドル/円は先週86.407円まで下落したものの、そこからは反発して一目均衡表(日足)の転換線を超えてきています。ただ、遅行線が雲の下を推移していることで、上値が重い展開が続きそうで、7/12安値の89.694円から基準線の89.738円近辺がレジスタンスとなる可能性があります。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
94 ~ 98.2 |
ユーロ/ドル |
1.319 ~ 1.349 |
ユーロ/円 |
126.2 ~ 131.4 |
ポンド/円 |
147.2 ~ 151.4 |
豪ドル/円 |
86.4 ~ 89.8 |
NZドル/円 |
75.9 ~ 79.6 |
南アランド/円 |
9.4 ~ 9.9 |
■重要イベント 8/12(月) 08:50 日本 7月 国内企業物価指数 08:50 日本 4-6月期 四半期実質国内総生産(GDP)速報値 13:30 日本 6月 鉱工業生産確報値 15:45 フランス 6月 経常収支 16:15 スイス 6月 実質小売売上高 03:00 米国 7月 月次財政収支 8/13(火) 08:01 英国 7月 英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格指数 08:50 日本 日銀金融政策決定会合議事要旨 08:50 日本 6月 機械受注 10:30 aud 7月 NAB企業景況感指数 15:00 ドイツ 7月 消費者物価指数(CPI)改定値 15:00 ドイツ 7月 卸売物価指数(WPI) 17:30 英国 7月 卸売物価指数(食品、エネルギー除く) 17:30 英国 7月 消費者物価指数(CPI) 17:30 英国 7月 小売物価指数(RPI) 18:00 ユーロ圏 6月 鉱工業生産 18:00 ユーロ圏 8月 ZEW景況感調査 18:00 ドイツ 8月 ZEW景況感調査(期待指数) 21:30 米国 7月 小売売上高 21:30 米国 7月 輸入物価指数 21:30 米国 7月 輸出物価指数 23:00 米国 6月 企業在庫 8/14(水) 07:45 NZ 4-6月期 四半期小売売上高指数 14:30 フランス 4-6月期 国内総生産(GDP)速報値 15:00 ドイツ 4-6月期 国内総生産(GDP)速報値 15:45 フランス 4-6月期 非農業部門雇用者速報値 15:45 フランス 7月 消費者物価指数(CPI) 16:15 スイス 7月 生産者輸入価格 17:30 英国 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨 17:30 英国 7月 失業率 17:30 英国 7月 失業保険申請件数 17:30 英国 6月 失業率(ILO方式) 18:00 ユーロ圏 4-6月期 四半期域内総生産(GDP) 20:00 南ア 6月 小売売上高 21:30 米国 7月 卸売物価指数(PPI) 21:30 米国 7月 卸売物価指数(食品・エネルギー除く) 8/15(木) 17:30 英国 7月 小売売上高指数 21:30 米国 8月 NZ連銀製造業景気指数 21:30 米国 7月 消費者物価指数(CPI) 21:30 米国 7月 消費者物価指数(CPIコア指数) 21:30 米国 前週分 新規失業保険申請件数 22:00 米国 6月 対米証券投資(短期債除く) 22:15 米国 7月 鉱工業生産 22:15 米国 7月 設備稼働率 23:00 米国 8月 NAHB住宅市場指数 23:00 米国 8月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 8/16(金) 17:00 ユーロ圏 6月 経常収支 18:00 ユーロ圏 7月 消費者物価指数(HICP)改定値 18:00 ユーロ圏 6月 貿易収支 21:30 カナダ 6月 対カナダ証券投資額 21:30 カナダ 6月 製造業出荷 21:30 米国 4-6月期 四半期非農業部門労働生産性速報値 21:30 米国 7月 住宅着工件数 21:30 米国 7月 建設許可件数 22:55 米国 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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