前回のコラムでは、どの様にニュージーランド経済が動いているかという概要について書かせて頂きました。そこで今回は、少し掘り下げてニュージーランド人の投資傾向要因に重点を置き経済のお話をさせて頂きます。国家体制や現首相の経歴等を交えつつ通貨の動向を考えていきましょう。
政府/議会
ニュージーランド議会は一院制で、定数121議席の任期3年となります。イギリスの様に、首相に任期が存在しません。つまり、総選挙で支持された政党から選ばれた首相である限り5期でもそれ以上でも継続する事が出来るのです。勿論、選挙次第では1期で退陣する事もあるでしょう。
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現在の選挙制度は「小選挙区比例代表併用制(MMP/Mixed-Member Proportional Voting)と呼ばれるもので、少数政党からも当選者を出しやすい選挙制度と言われています。
有権者は、自身が支持する選挙区の立候補者と政党のそれぞれ2つに投票します。ニュージーランドでは、このシステムによって政党が単独過半数を維持する事が困難であると立証されたため、結果として、最大議席数を有する第一党は他党と連立を組む事により過半数を維持する傾向にありました。
首相
現首相であるジョン・キー氏に関しては特筆すべきしょう。ニュージーランド第38代首相であり2008年より現政権を運営しています。ジョン・キー氏が首相に就任すると同時に、9年続いた労働党主導の政治に終止符が打たれました。しかし、より興味深いのは彼が政治家になる前の経歴でしょう。90年代中頃、米国系投資銀行メリルリンチのグローバル外国為替部長に就任し6年間にわたり従事し、その後、連邦準備制度理事会外国為替委員会委員を2年歴任した後、政治家を志しニュージーランドへ帰国しました。
(ジョン・キー首相)
ジョン・キー氏が首相に就任した後、ニュージーランドは金融サービス提供者登録の機関を設置しました(ニュージーランドFSP)。その効果は、APACアジア太平洋地域において、未登録のOTCブローカー等の企業が相応しいロケーションであるニュージーランドにおいて登録申請される事により、より投資家やトレーダーの信頼を得るための金融サービス業を展開する事を可能としました。この登録制度は2010に規定され、世界中の多くのブローカーに優位性を与えました。今後もFSP登録業企業の増加が続けば、ニュージーランドは南半球におけるキプロスのようなハブ的存在になるかも知れません。
ジョン・キー氏のリーダーシップの下、国民党は国営石油関連企業の4社を部分的に民営化し、またニュージーランド航空の政府保有株式を減少させる事により株式市場の活性化に取組もうとしました。この取り組みはミックスド・オーナーシップ・モデル(MOM)と呼ばれており、MOMが提唱するのは、国有企業の一部株式をニュージーランド証券取引所において売却する事でした。その国有企業はその後、上場企業となるため、より高い透明性と成長するための更なる努力を果たして実現できるのかという議論がなされました。しかしながら、ニュージーランド国民はこの案に拒否反応を示し国民投票を要求した結果、2013年の投票で勝利しました。つまり、これら国有企業の現状は以前と変化が無いままとなっています。
失業率
労働市場は9四半期連続で向上しているためニュージーランドの雇用環境は非常に底堅いと言って良いでしょう。現在の失業率は5.7%で年度末にかけ5.2%程度まで改善されると期待されています。
最も積極的に雇用を行っているが、小売業、医療サービスそして各専門分野におけるサービス業です。しかしながら、過去10年間においては、医療サービス、各専門分野におけるサービスそして建設業の3セクターが雇用全体の46%を占めていました。
建設部門では、クライストチャーチの復興に伴い多様な資源が必要とされる事が急成長の背景であり、またオークランド地域における住宅建設ブームも雇用増を助長しています。また、観光業もニュージーランド経済においてはとても重要な産業と言えるでしょう。この産業は、人口の10%もの雇用を生み出すだけではなく、直接的にも間接的にも国内外のGDPに貢献しています。
個人投資について
ニュージーランド証券取引所(以下NZX)が国内の主要取引所です。時価総額は940億ニュージーランドドルで、これは僅か250社の上場企業からなる総額です。
しかしながら、個人投資家は株式市場と比べ不動産市場をより主な投資対象として選ぶ傾向にあります。
そのような中、NZXは2015年6月より施行されるS&Pダウジョーンズ・インディシーズとの戦略的提携がなされる事となりました。
この協定により、国内外の投資家から投資対象としてのNZXインデックスのニーズを高め、株式市場そして債券市場を含めニュージーランドにおける指数提供ビジネスをより活性させるのではないでしょうか。
不動産の次にポピュラーなのが、銀行におけるNZD$10,000(約USD$7,300)から始められる年利約4%の定期性貯金でしょうか。
また、退職後の為の資産運用の一つとしてキウイセーバー(任意の年金保険制度)も人気商品の一つです。このスキームは2007年中頃に導入され特徴としては、退職後生活のみならず個人住宅購入補助等を目的として設立されました。
内国歳入庁によれば、2014年時点で2.35百万人がこのキウイセイバーの加入者として報告されています。政府と雇用者からサポートされるこの制度は 少なくとも雇用者が従業員の給与の3%の保険料(現在)を払うことが義務付けられています。
また、近年ではマネージドフューチャーズも選択肢の一つとして人気を集めており、為替市場では国内外のブローカーが新興市場としてのニュージーランドを選好しています。
翻訳/吉中晋吾