4/13 今週の見通し-中国GDPとイエレン米FRB議長講演がカギ-
2014/04/13
週末のG20財務相・中央銀行総裁会議では、ロシアに対する経済制裁は議論されず、欧米とロシアの対立もなく、ウクライナの経済情勢を注視するとG20が一致した一方で、IMFの改革の進捗が遅れていることに深く失望したとしています。詳しい内容に関しては、財務省の20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2014年4月10-11日 於:米国・ワシントンD.C.)を参照してください。
そのウクライナの情勢は、武装勢力が東部のドネツクなどで警察署を占拠、アワコフ・ウクライナ内相が武装勢力排除の「対テロ作戦」を開始するなど、実力行使に踏み切りました。17日に米・EU・ウクライナ・ロシアの4者協議が予定されているものの、ウクライナが実力行使を行ったことで、不透明感が増しました。市場はウクライナをあまり材料視していませんので、ロシアが国境を超えない限りは地政学的リスクの高まりとリスク回避の動きにはつながらないとみていますが、一応は警戒が必要な状況になってきました。また、シカゴのIMM通貨先物のポジション状況では、円ロングの減少余地が少ないため、円売りにはつながりにくく、円買いになった場合の円ショートの解消リスクが高くなっています。その他では、豪ドルは11か月ぶりのロング転換となったため、やや豪ドル買いが続く可能性があります。また、ポンドのロングが増加しているため、ロング解消からのポンド下落リスクが出てきたと思います。
先週は米国の決算などを受け、株価が調整となっていますが、投資家恐怖心理指数(VIX)は17.03まで上昇してきています。ただ、リスク回避の円買いの動きと、ドル買いの動きには思ったほど繋がっていません(相関が低くなっています)。ただし、株価の下落基調は円売りにはネガティブな材料となるため、クロス円の上値が重くなることと、ドル/円の上値も押さえられる可能性が高くなると思います。
【ドル/円】
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先週は、日銀金融政策決定会合では「マネタリーベースが、年間約60?70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」と現状維持を決め、初のリアルタイムで行われた黒田日銀総裁の記者会見では、「今後も2%の物価目標目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続する」とこれまでの内容を繰り返し、目標の達成についても総じて楽観的な見通しとなったことで、失望からの円の買戻しとなり、米FOMC議事録ではイエレン米FRB議長が記者会見で発言した「6か月」を巡る議論が内部では話されていなかったことが明らかとなったこと、米株価が米第1四半期決算を嫌気して軟調推移となっていることで、101円台前半まで下落しています。
今週は米経済指標では小売売上高(14日)、住宅着工件数(16日)、フィラデルフィア連銀製造業景気指数(17日)、要人発言ではイエレン米FRB議長の講演(15日、16日)が予定されています。また、15日にはYahoo!、インテルの決算発表があり、株価の調整が続くかにも注目が集まると思います。足元では株価との相関は低下しているようですが、小売売上高が市場予想より下振れしているようだと、3月に3度サポートなった101.20円近辺を下抜けることになり、この下に置いてあるといわれるまとまったロスカットをヒットすることになります。場合によっては101円を割り込むことも想定されますので、どちらかというとリスクは下方向にあると思っています。ただ、黒田日銀総裁も11日の記者会見では「物価目標の達成に支障がきたすようなことがあれば、当然、躊躇なく必要な金融政策の調整を行う用意はある」と繰り返していることで、市場の期待は継続しているとみられますので、大幅な円高とはなりにくいと考えます。
一方で、警戒したいのは16日に発表される中国の1-3月期GDP、3月鉱工業生産、3月小売売上高です。先週発表された中国の輸出入がどちらも大幅な低下となっていたため、市場はやや弱めの内容で織り込んでいると思いますが、中国政府が景気刺激に対して慎重は態度をとった場合には、市場の失望に繋がり、リスク回避の円買いにつながる可能性が高くなります。
チャートでは一目均衡表は「三役逆転」を免れたものの、遅行線はロウソク足の下、実勢レートは雲の下にあることには変わりありません。転換線こそ、基準線をかろうじて上回っていますが、雲の下限が102.36円に位置しているため、ここを上抜けないとドルの弱含みに変化はないと思われます。ただ、ストキャスティクス(スロー)では%D、スローDが20を割り込んでいるため、ゴールデンクロスとなればロングを構築してもいいのではないかと思います。
【ユーロ】
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先週は米FOMC議事録のハト派的な内容に加え、欧州勢のドル売り(ユーロ買い)が出たことなどで、ユーロ/ドルは4日連続の上昇となりましたが、ユーロ/円は円の買戻しなどもあり、141円を挟んだ動きとなりました。バイトマン・ドイツ連銀総裁やクーレECB理事などの欧州要人からはハト派的な発言やユーロ高の牽制発言が出たものの、市場の反応は限定的となりました。
今週はドイツ4月のZEW景況感調査(15日)、ユーロ圏貿易収支(15日)、ユーロ圏3月消費者物価指数改定値(16日)の発表に注目されます。特に消費者物価の下振れはユーロ圏の追加緩和への期待につながりやすいため、改定値には注目が集まるものと思います。一方、ウクライナ危機については東部のドネツクやルガンスク、スラビャンスクなどの複数の都市でロシア系とみられる武装集団が警察署を占領するなど、治安機能が低下しています。今のところ住民の支持があまり得られていないようですが、今後、支持が広がるかと、ロシアの介入があるかが焦点となり、緊張が高まるようだとユーロ売りにつながる可能性もあります。ただ、先週までのユーロについては、ウクライナのニュースにはほとんど反応していないため、局地的な範囲であれば、材料にはならないでしょう。足元でインフレ期待が低下していることから、追加緩和やユーロ高牽制につながりやすく、対ドルでの1.39ドル台、対円では143円台から上は買いにくくなっているものと思います。また、下は対ドルで1.37ドル、対円で140円台は買い意欲が強いと思いますので、この範囲でのレンジとなるのではないでしょうか。
ユーロ/円は一目均衡表(日足)の雲の上限が140.948円にあり、これを挟んでの推移となっています。雲の厚みがなくなり、雲のねじれに近づいていますので、上か下かどちらかに動きが加速する可能性がありますが、ストキャスティクス(スロー)を見ると、25近傍でゴールデンクロスしていますので、下押ししたところは拾ってもいいかもしれません。ただ、遅行線も雲のねじれに差し掛かりますので、雲を下に抜けしまったところではロングを作るのは棄権ですので、2/17安値の138.79円近辺まで引きつけるようなストラテジーがいいかとも思います。ユーロ/ドルはストキャスティクス(スロー)が80以上となっていることで、1.39ドル台は一旦売りでいいのではないかとみています。ただ、3/13高値の1.39665ドルが目標とみられますので、ここを上抜けたら、ひとまずトレンドに乗る方向ではないでしょうか。下値は一目均衡表(日足)の基準線の1.38191ドル、転換線の1.37880ドルがサポートとみられます。
【ポンド】
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英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)では0.5%の政策金利、3750億ポンドの資産買入れプログラムには変化はありませんでした。ただ、発表された2月の鉱工業生産、製造業生産指数がともに前月を上回る強い伸びとなったことで、ポンド/ドルは2/17高値に面合わせする1.68209ドルまで上昇しましたが、ポンド/円はドル/円の下落などに連れて一時169.50円まで下落しました。
今週は消費者物価指数(15日)、失業率、失業保険申請件数(16日)が注目されると思います。先週の米FOMC議事録を受けて、米国の利上げ時期が以前の予想に戻されたこともあり、英国の雇用がよくなれば期待が高まることになり、ポンド買いにつながる可能性が高くなると思っています。ただ、カーニー英中銀(BOE)総裁は4/3に「一段と雇用を創出する必要」「金利は次回総選挙前に上昇する可能性がある」「金利の上昇は緩やかになるだろう」と利上げの可能性はあるものの、その上昇は緩やかになるとの認識を示しています。プライスで見ても1.68ドル台は売られやすくなっているように見えますので、上値が限定される可能性が高いと思います。
ポンド/ドルは2/17高値の1.68209ドルとほぼ面を合わせたこととストキャスティクス(スロー)は80以上でデッドクロスしたため、ひとまず下方向とみられます。ただ、2/5安値の1.62495ドルを起点としトレンドラインにサポートされているため、同線でサポートされるとみられます(4/17時点では1.65613ドルに位置)。その手前の一目均衡表(日足)の転換線の1.66853ドル、基準線の1.66420ドル、雲の上限の1.66174ドルもサポートになります。ポンド/円は4/3高値の173.123円が当面の天井となったようで、1/23高値(173.642円)、3/7高値(173.561円)からも173円がひとまず重く感じられます。週末には一目均衡表(日足)の雲の上から一時中に入ったことで、雲の下限の169.375円を下抜けると、3/17安値の167.762円近辺まで下落する可能性が高くなります。
【豪ドル】
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10日に発表された豪3月の新規雇用者数が市場予想を大幅に上回る18,100人の増加となったことで、豪ドル/米ドルは0.9460ドル、豪ドル/円は96.22円まで上昇しましたが、中国貿易収支で輸出・輸入がともに減少していたことや世界的な株価の下落などで週末は小幅な調整となりました。
今週は、豪準備銀行(RBA)の金融政策会合議事録(15日)と中国の1-3月期GDPなど(16日)が注目されることとなります。特に中国の経済指標は貿易額の減少(輸出・輸入とも)が大幅だったことで市場はGDPを7.3%と予想していますが、これよりも下振れとなる可能性もあります。週末には易綱・中国人民銀行副総裁が「景気刺激策に対し非常に慎重になるべき」との見解を示し、2014年の中国の成長率に関しては「7.5%より若干上下に振れるのは容認できる」とも発言していますが、同総裁は「成長率は7.6%に達する可能性がある」と指摘。「シャドーバンキングや債務問題はコントロールされている」と強調しています。このため、足許でGDPが下振れした場合には緩和期待が出るとは思いますが、期待度は高まらず、豪ドルは下落するのではないかと思います。一方、予想よりも良ければ素直に豪ドル買いにつながるでしょう。RBA議事録は、特に材料視されるとは思いませんが、最近の豪ドル上昇について、議論が弱いもしくは議論されていないと見なされれば、豪政府及びRBAが豪ドルの水準を容認したと見なされ、豪ドルの一段高の要因となると思います。どちらかといえば、豪ドルはしっかりした動きを予想しますが、世界的な株価の下落は懸念材料と思います。
豪ドル/円は4/4高値の96.507円を上抜けすることができず、一目均衡表(日足)の転換線を下回っています。MACDがデッドクロスしていることから、転換線の95.76円を上回ることができなければ、3/7高値の94.47円近辺まで下落する可能性があると思っています。ただ、先週は95円を割れていないため、この水準でサポートされれば、96円ミドルの高値を抜けていくと思われます。豪ドル/米ドルはストキャスティクス(スロー)が80以上でデッドクロスしています。だましの可能性もありますが、一旦は売りではないかと思われます(ロスカットは4/10高値の0.9460ドル近辺)。下落目処は3/7高値の0.9132ドル近辺(その手前に3/28高値の0.9294ドルのサポートあり)。0.9460ドルの高値を上抜けた場合は昨年10/23高値の0.9756ドルが目標となります。
■今週の予想レンジ
Ccy | Low(下) ~ High(上) |
ドル/円 |
100.6 ~ 102.8 |
ユーロ/ドル |
1.372 ~ 1.398 |
ユーロ/円 |
138.5 ~ 143.3 |
ポンド/円 |
167.8 ~ 173.1 |
豪ドル/円 |
94.5 ~ 96.5 |
NZドル/円 |
87.1 ~ 89.6 |
南アランド/円 |
9.5 ~ 9.85 |
■重要イベント 4/14(月) 18:00ユーロ圏 2月 鉱工業生産 m/m 21:30米国 3月 小売売上高 m/m 23:00米国 2月 企業在庫 m/m 4/15(火) 08:01英国 3月 英小売連合(BRC)小売売上高調査 y/y 10:30豪 豪準備銀行(RBA)金融政策会合議事要旨公表 16:15スイス 3月 生産者輸入価格 m/m 17:30英国 3月 消費者物価指数 m/m 17:30英国 3月 小売物価指数 m/m 17:30英国 3月 卸売物価指数 y/y 18:00ドイツ 4月 ZEW景況感調査(期待指数) 18:00ユーロ圏 4月 ZEW景況感調査 18:00ユーロ圏 2月 貿易収支 21:30カナダ 2月 製造業出荷 m/m 21:30米国 4月 NY連銀製造業景気指数 21:30米国 3月 消費者物価指数 m/m 21:45米国 イエレン米FRB議長講演 22:00米国 2月 対米証券投資(短期債除く) 23:00米国 4月 NAHB住宅市場指数 4/16(水) 07:45NZ 1-3月期 四半期消費者物価 q/q 11:00中国 3月 鉱工業生産 y/y 11:00中国 3月 小売売上高 y/y 11:00中国 1-3月期 四半期国内総生産 q/q 13:30日本 2月 鉱工業生産確報値 m/m 17:30英国 3月 失業保険申請件数 17:30英国 3月 失業率 17:30英国 2月 失業率(ILO方式) 18:00ユーロ圏 3月 消費者物価指数改定値 y/y 20:00南ア 2月 小売売上高 y/y 21:30カナダ 2月 対カナダ証券投資額 21:30米国 3月 住宅着工件数 年率換算件数 21:30米国 3月 建設許可件数 年率換算件数 22:15米国 3月 鉱工業生産 m/m 22:15米国 3月 設備稼働率 23:00カナダ カナダ銀行(BOC)政策金利 01:15米国 イエレン米FRB議長講演 03:00米国 米地区連銀経済報告(ベージュブック) 4/17(木) 09:30日本 黒田東彦日銀総裁講演 14:00日本 3月 消費者態度指数一般世帯 15:00ドイツ 3月 生産者物価指数 m/m 17:00ユーロ圏 2月 経常収支 21:30カナダ 3月 消費者物価指数 m/m 21:30米国 前週分 新規失業保険申請件数 23:00米国 4月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 4/18(金) 08:50日本 2月 第三次産業活動指数 m/m ※m/m = 前月比、q/q = 前期比、y/y = 前年比
経済指標の詳細はFXmuseumのFXカレンダーを参照してください。
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