トレンドレポート 2015年第1～3四半期

投稿日: 2015/10/22 @ 14:58 | コメント (1) |

日本の2015年第1～3四半期M&Aの目立った傾向はアウトバウンド活動（223件785億米ドル）が拡大したことだ。アウトバウンド案件は2014年同期（288件220億米ドル）から金額では82.9％の伸びを示し、2012年（254件1156 億米ドル）より後の年の年間合計を追い抜きつつある。

今年はこれまでのところ日本をターゲットにしたM&Aも、第 3四半期（75件213億米ドル）に押し上げられる形で力強い動きを示している。これは第2四半期（96件90億米ドル）からは金額で135.6％増加し、2012年第2四半期（97件263億米ドル）に次ぐ四半期最高額となった。年初来で前年同期（288 件220億米ドル）から79.4％伸長して289件394億米ドルとなり、2013年の年間取引総額353億米ドル、2014年の年間取引総額313億米ドルを既にそれぞれ11.6％、26.1％上回っている。

円安で日本企業にとって海外資産の取得は一段と割高になったにもかかわらず、2015年第3四半期のアウトバウンド案件は72件219 億米ドルを記録し、金額では前四半期（64件174億米ドル）から 21.3％増、前年同期（65件108億米ドル）からは93.1％増となった。2015年第1～3四半期のアウトバウンド取引総額は785億米ドルに到達。これは、2014年の取引総額（258件533億米ドル）を47.2 ％上回り、マージャーマーケットの2001年記録開始以来の最高額となった。

2015年第1～3四半期のアウトバウンド活動は、年初来で最大のアウトバウンド案件となっている6月の東京海上火災による米国拠点のHCC Insurance買収（75億米ドル）など、保険関連取引によって拡大した。同案件に続いて明治安田生命が7月に米国のStanCorp Financial Groupを50億米ドルで買収したほか、9月には三井住友海上が英国のAmlin Plcを53億米ドルで取得している。マージャーマーケットの報道によると、日本の保険大手の一角を占める日本生命保険は現在オーストラリアで買収ターゲットを模索中だ。

2015年第1～3四半期は、技術・メディア・通信（TMT）業界をターゲットとしたアウトバウンド投資に力強い成長が見られた。年初来の取引金額は昨年の29億米ドルから259.2％増の104億米ドル、件数は昨年の20件から18件増加した。数十億米ドル規模の取引となった5案件のうち4件（計78億米ドル）は、日本の欧州への関心の高まりを反映し、欧州企業をターゲットとした案件だった。

第1～3四半期のインバウンド投資は、100億米ドルを記録し、2007 年（49件256億米ドル）より後の年の年間合計を上回った。この増加は、9月の NBCUniversal Media によるユー・エス・ジェイ（USJ）買収に拠るところが大きい。同案件はマージャーマーケットの記録上、米国企業による日本企業買収として過去2番目の規模となった。

2015年の消費財セクターをターゲットにした活動の拡大には、第3四半期だけで2件62億米ドルの買収を実施した日本たばこ産業が大きく寄与した。その結果、同セクターに向けた案件の取引金額は金額ベースで前年同期（64件37億米ドル）から41.3％増の88億米ドルに達した。マージャーマーケットの報道によると、世界的な日本の食品メーカーである味の素は、M&A取引のために17億米ドル規模の資金を確保しており、消費財セクターでの更なる成長促進に投じられる可能性が高い。

日本国内の地方銀行の合併が相次いだことで、金融サービスセクターは金額では2014年第1～3四半期（14件28億米ドル）から55 ％増の21件43億米ドルを記録した。金融サービス業界では、9月の第一生命とみずほフィナンシャルグループによる覚書（MOU）締結の後にさらなる動きが出ると予想されている。この案件によって、アジア最大級の資産運用会社が誕生することになる。

9月には、マージャーマーケットの記録上最も大きな日本からのエグジット案件がうかがえた。それは、前出のNBCUniversal Mediaに対するユー・エス・ジェイ（USJ）のトレードセール（48億米ドル規模）だ。その結果、エグジット案件は23件62億米ドルに達し、金額では第1～3四半期として2012年（20件125億米ドル）以来の最高水準となり、また既に2014年のエグジット案件総額（39件64億米ドル）の96.1％に迫っている。

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