ADVFN Logo ADVFN

Hot Features

Registration Strip Icon for alerts 登録してリアルタイムのアラート、カスタムポートフォリオ、市場の動きを入手してください。

中国ショックと米利上げ

Share On Facebook
share on Linkedin
印刷

8月11日に中国が唐突に人民元の引き下げを実施したことが混乱の始まりとなった。中国人民銀行はこの日人民元を2%切り下げたことでドルが全面高となった。

©

市場には中国経済が一段の景気減速に向かうとの懸念が広がり、新興国の株式市場や商品相場から資金を引き揚げる動きを強めた。

しかし、次の日にはドル売り人民元買いの介入を実施。人民元切り下げを機に新興国通貨が軒並み下げ幅を拡大した。その後人民元の下落を止めようと人民銀行はドル買い元売りの逆介入を実施。しかし、市場には既に不安感が広がったことで世界同時株安を招くなど、中国の予想外の動きが市場の混乱をもたらした。

新興国の景気減速は資源の需要低下を招くことから、コモディティー市場も全面安となった。原油価格の下落は止まらず、一時6年ぶりの1バレル38ドル台の安値を付けたことも株式市場の不安を拡大した。

中国ショックにより、米国利上げ時期が先延ばしになるとの見方が広がり、ドル売りが強まった。また、世界的同時株安など、不安定な動きによるリスク回避が強まると、安全通貨としての円やユーロに買いが集まった。

ドル円はこの動きを受け、一時116円前半まで急落。中国ショック前のドル円のレベル125円前半から2週間足らずで9円余り下落したことになる。

夏休みとも重なり、目先のドルロングと円ショートポジションが今回のチャイナショックで一斉に解消に向かった。

FOMC会合を前に市場のポジションの偏りはなく、どちらにも動きやすい状況になったということだ。

 

中国は8月以降立て続けに株価の下支えや景気刺激策を打ち出してきた。

人民銀行は2.3兆円の資金供給を実施し、資金の国外流出に対処。年金基金には株式投資を認める対策を発表。また、政策金利と銀行貸し出し基準金利を同時に引き下げた(2008年以来初めて)。それでも株価の下落が止まらず、当局は人民下塗りの新たな規制を導入。

G20で人民銀行の周総裁は今回の株価の下落はバブルの蓄積がはじけたことが要因で、市場もおおよそ落ち着いたと発言。しかし、その後も下落は止まらず、追加策として個人が1年株保有に対し所得税を免税。更に、上下限のサーキットブレーカー制度の導入を認めた。

しかし、その後発表された中国8月貿易収支が輸出と輸入双方が大きく減少したことから再び景気減速懸念が拡大。当局は中国国内へ流入可能な資金の上限を引き上げた。

やれることは何でもやるという中国当局の強い意思が示されたことで、一先ず株式市場は安定しつつあるが、バブルのツケはこの程度では終わらない可能性が高い。

ただ、中国の株価がここから下落したとしても、米国や世界経済に対する影響は限定的との見方も多い。特にFRBは他国の影響を受け自国の金融政策を変えることは滅多にしない。

 

そして、次の市場の焦点は米国利上げの時期に向けられた。

先週発表された米国8月雇用統計では雇用者数は予想を下回ったものの、過去2か月分は上方修正され、平均では22万人を上回った。また、失業率も4.1%とほぼFRBの目指す完全雇用に達した。その後発表された雇用動向指数などは求人数が過去最高の強さを示すもので、イエレン議長の注目する雇用の質も上がった。

雇用市場の回復は利上げをする条件を満たしたといえる。

問題は今回の中国発世界的な景気減速懸念が、今回利上げを実施で更に混乱を招きかねないという事だ。

先週のECB理事会でドラギ総裁は、QE購入上限の引き上げや終了時期延長など、すべての手段を使うとし、更なる追加緩和の可能性を示した。

また、日銀の追加緩和の期待もここにきて高まり始めるなど、日欧が米国量的緩和の代わりに資金を供給する形が継続。市場の不安は徐々に収まり始めている。この動きによりFRBは利上げを実施がしやすくなったことは確かだ。

しかし、市場では来週のFOMCでの利上げ実施は難しいとの見方は依然として根強い。

今の時点では9月の利上げの確率は五分五分の状態であり、市場では利上げを織り込む動きはまだ見られていない。

もし、9月に利上げが実施されるようであればドルは上昇する一方で、株価の下落を招き一時的に円高の動きが強まるとみる。ただ、世紀のビッグイベントが一先ず終了という事から、リスクは後退し最終的に円売りの動きが強まるとみている。

反対に、9月の利上げを見送ったとしても年内利上げの可能性は残ることから、大きな混乱を招くことはない。

株価は上昇し、円売りとドル売りの動きが、綱引き状態となりドル円の下値はいずれにしても限定的となりそうだ。

ただ、今回利上げを見送るようであれば寧ろ市場の不安感が続くことになり、次の利上げのタイミングは更に難しくなるかもしれない。

今回のFOMCでは今月9月、或は年内といった利上げ時期を明示する可能性が高いとみる。

外資系銀行でマネーディラーや為替ディーラーとして長年勤務。その経験から1998年には個人FXトレーダーとして独立。その後はFX会社立ち上げに関わりセミナーやラジオテレビ、そして雑誌などのメディアでも活躍するなど、36年の外国為替経験を持つ。 現在はレグザムフォレックス合同会社の代表取締役兼チーフFXアナリストとしてラジオ日経「岡安盛男のFXトレンド」のレギュラー番組に出演。その他日経CNBCの「朝エキスプレス」のコメンテーター等多数出演。AOIAアカデミーではFX講師として個人ディーラーの教育を任されている。 著書 「岡安盛男のFX攻略バイブル」 「新版岡安盛男のFX攻略バイブル」 「岡安盛男のFX攻略バイブル第3版」 「FXで稼ぐ47の法則」 「岡安盛男の稼ぐFX実戦の極意」 「FXで稼ぐ51の法則」等

コメントを書く

 

最近閲覧した銘柄

Delayed Upgrade Clock