米国は年内に7年ぶりに政策金利の引き上げを実施する可能性が高まる中で、世界のマネーの動きにも変化が起きている。
中国の株式市場が大幅下落となる中、上海市場では金の纏まった売りが散見され急落。米金利利上げを直前に控え金利のつかない金が売られたという見方もある。また、株価の損失補てんなどによる売りといった見方もあるが、いずれにしても大幅下落という事自体が市場に変化が起きていることを示すものだ。
原油や銅、鉄鉱石などもここにきて再び下落が加速。中国を中心とした新興国の景気減速がこれらコモディティー需要の低迷をもたらした。米国の利上げ観測が迫ったことで、新興国やリスク資産からの資金流出に繋がっている。
しかし、いずれその資金はリスク資産に戻る時が来る。その時を見逃さないことが大きな利益を生むチャンスに繋がる。
2008年のリーマンショック以降中国を中心としたBRICsが欧米に変わって世界経済をけん引してきた。しかし、それら新興国の景気減速が鮮明となり始めたところで今度は米国景気が回復に向かった。雇用の改善などが鮮明になり米国は昨年10月にテーパリングを終了。ゼロ金利を解除に向けた動きが始まった。
2007年9月に始まった米国金融緩和政策が終わりを告げ、いよいよ今年はゼロ金利解除という大きな金融政策の転換期に差し掛かった。歴史的な転換といってもよいだろう。
その利上げ時期を巡り市場はFRBの動向に一喜一憂し始めるなかで、ギリシャ問題や中国株価の暴落懸念が浮上。一時的に市場の混乱を引き起こしたものの、FRBの金融政策への影響は限定的とみられている。
その米国利上げ時期がいよいよ9月にも実施されるとの観測から、市場の資金の流れが俄かに変化が生じている。
緩和から引き締めという金融政策の大転換を迎え、株式や債券市場も含めどのような反応するのかは誰もが未知の領域となる。
お金というのは臆病なものだ。歴史的な政策の転換ともいえるイベントを控え、リスク資産から安全な資産に向かった。
利上げは株式市場にとってはネガティブ材料となり上値を抑えられている。本来であれば米長期債が売られ、利回りは上昇するものだが、依然として金利は低水準にとどまっている。
それは、資金が安全で巨大な市場でもある米国債に資金が流れ込んでいるためと考えられる。ギリシャ問題が拡大した時にドイツ債が買われた時も同様だ。
しかし、これらの動きはあくまで一時的なリスク回避の動きであり、いずれ市場が安定すれば再びリスク資産に戻ろうとするものだ。
利上げ前にはリスクを避けようとし、市場は理屈通りの動きを示さないことが多くなる。それまでは、偏ったポジションは避けておきたい。
利上げを直前に市場が織り込み過ぎた場合には、実施後反対の動きをすることもあるが、それは一時的なものに過ぎない。最終的に金融政策の違いが相場を決定する。
それらを考えると、利上げ後に再び資金はリスク資産に向かい始めることになり、それは千歳一隅のチャンスでもある。
為替市場でみると、これまで利下げ傾向にある通貨や、コモディティーの下落で売られていた通貨などだ。
例えば、豪ドルやNZドル、カナダドルといった通貨に再び資金が流れ込んでくるとみている。
FRBは9月に実施する可能性は高いとみるが、それが12月にずれ込んだとしてもこの図式は同じだ。