NY外国為替市場でドル円は、米中対立の長期化や香港デモ拡大への警戒感から売りが先行し、欧州時間には一時105.07円まで値を下げた。
NYの取引時間帯に入ると急伸。米通商代表部(USTR)は9月1日に発動する対中制裁関税「第4弾」について、携帯電話やパソコンなど一部製品への適用を12月15日まで延期すると発表した。
また、中国商務省は「劉鶴副首相がライトハイザーUSTR代表、ムニューシン米財務長官の両氏と電話協議を行ったほか、今後2週間以内に再度協議することを計画している」と明らかにした。
これを受けて小安い水準で推移していたダウ平均が上げに転じ、一時520ドル超上昇。ドル円にも買い戻しが広がり、106.98円まで急ピッチで値を上げた。米10年債利回りも一時1.7155%前後まで上昇した。
ユーロドルは、米国の対中制裁関税の一部適用延期発表を受けて、米10年債利回りが上昇に転じるとユーロ売り・ドル買いが優勢となり、一時1.1170ドルと日通し安値を付けた。
本日の東京市場のドル円は、106円台を維持しつつも上値を追いかけて買うのは危険か。昨日、一昨日と2日連続して105円台割れを狙ったショートポジションは、米国の対中制裁関税の一部適用延期発表を受けて軒並みストップロスをつけて上昇した。
しかし、ドル円は堅調に推移しているものの、この上を追いかけて買い上げることは難しいだろう。トランプ米大統領のツイートひとつで、いつこの流れの梯子を外されるか分からなく、再びドル売りに戻る可能性もある。
特に、昨日の米国の発表でドル買いになる材料の出尽くし感もあり、ネガティブ・コメントの方に今後は反応しやすくなるだろう。
もっとも、NY時間にトランプ米大統領が香港デモの中国介入を懸念する発言をしたことで、いったん下押ししたが、下押しも限定的だったこともあり、105円台に再び戻すには時間がかかるかもしれない。
米中の通商および為替戦争以外にもドル円の売り材料は依然として複数残っている。香港のデモが泥沼化していることで着地点が見えないこと、アルゼンチン不安、中東問題、また、カシミール問題に関して中国がパキスタンと連携を取っていることも大きな地政学リスクだ。
カシミール問題は、米中の代理戦争になる可能性もある。米中間はこのような問題も絡んでいることが、通商問題が進まない一因にもなっている。また、米連邦準備理事会(FRB)への利下げ圧力、日米通商交渉と、その時点での為替条項設置の可能性もドル円の上値を抑える要因になるだろう。
一方、ドル買いになる可能性としては、人民元取引の基準値が元安を回避できた場合か。元安が回避されれば、昨日の米国サイドからの態度軟化を中国も受け入れるとの判断から、通商摩擦の悪化を弱めることでドルにはポジティブになりそうだ。
ドル円以外の通貨は、昨日は比較的狭いレンジでの取引だった。しかし、本日は7月中国鉱工業生産と小売売上高、4-6月期豪賃金指数などが発表されることで、豪ドルが動く可能性がある。
また、欧州時間に入ると4-6月期独国内総生産(GDP)速報値、7月英消費者物価指数(CPI)なども発表されることで、欧州通貨の動きにも要警戒となるだろう。

US Dollar vs Yen (FX:USDJPY)
FXチャート
から 3 2024 まで 4 2024 US Dollar vs Yenのチャートをもっと見るにはこちらをクリック
US Dollar vs Yen (FX:USDJPY)
FXチャート
から 4 2023 まで 4 2024 US Dollar vs Yenのチャートをもっと見るにはこちらをクリック