マーケット分析レポート
S&P500
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夜明け前が一番暗いと言います。2012年末の暗闇がまさにそれでした。米国は財政の崖っぷちに立ち、増税と歳出削減に直面し、 米議会がすることなすこと全てが正しくないという考えがほぼ共通の認識となっていました。ところが、大みそかのシャンパンを取り出す頃になって議会の合意が成立し、米国の投資家は世界の終わりが来なかったことを祝福しました。投資家はシャンパンを注ぐと共に買い注文を入れ、2013年の年明けの米株式市場は2.54%と幅広く上昇し、前年の最大の上昇率を上回りました(この上げ幅は、依然として2.98%の上昇率を記録した2011年12月20日以来最大となっています)。それでも十分でなければ(我々は欲深い資本家ではありませんが)、ご存知の通り「1月良ければその年良好」と言われていますが(過去84年中61年、または72.6%はその通りとなっています)、今年1月は堅調な雇用統計に支えられて好調が続き5.04%上昇しました。それ以降市場を支配したテーマは「買い」でした。2012年は株式市場から離れ、見返りが低い商品に投資していた投資家(13.41%の株価上昇、16.00%のトータルリターンを見逃した)がリターンを追いかけました。米株式への資金流入が何週にもわたって続き、記録的な水準に達することもありました。投資家が市場に戻り始めたのは、市場が過小評価されているという理由からではなく、市場(とその回復)に取り残されていると感じ始めたからでした。歳出強制削減などの試練は一部に影響を及ぼしたものの、全体へは影響を与えず、経済への強い下方圧力となることもありませんでした。住宅販売(価格、建築許可、着工など)、富(株式)、雇用(従業者の増加と失業者の低下)を尺度とする経済データは直線的にでも、急ピッチでもないものの、全て良い方向へと向かいました。米国(と日本)が株式市場のけん引役となり、誰もが市場に参加したがっているような時期が幾度とありました。先進国が2013年前半に7.10%上昇したのに対し、新興国は引き続き下落し、9.03%の下落を記録しました。ただし、新興国の上昇は米国(12.99%の上昇)と日本(14.74%の上昇。S&Pグローバル総合指数の中でも最高のパフォーマンス)の堅調なパフォーマンスによるものでした。2国を除いた場合、先進国は2.13%の下落となりました。海外では追加刺激策が話題になったのに対し、米国では連邦準備制度理事会(FRB)がいつ刺激策を中止し、過去最低水準にあった金利を引き上げるのかが話題となりました。2013年前半の終わりには米市場の注目は米国内に集中しました。欧州、アジア、その他海外の影響も受けたものの、国内経済の影響が圧倒的でした。企業決算のシーズンが始まろうとする中、2013年後半も引き続き米国が焦点となり、市場お気に入りのFRB推測ゲームは二の次となるでしょう。そして決算発表がほとんど(85%)終わった8月半ばまでには、FRBウォッチングが再び注目の的となるでしょう(その他重要な国内または国際問題がない限り)。経済(住宅、雇用、製造)がうまくいけばFRBは10月29-30日または12月17-18日の会合で資産買い入れ縮小計画を発表し、利上げ開始の扉が開かれるかもしれない、というのが現在の考えです。さらには、経済の好調が続けば、今後9カ月以内に買い入れが縮小されるというのが今の考えです(仮の話ばかりです)。トレーダーや投資家たちは経済が利益を伸ばしながら(雇用や住宅価格の上昇を下支え)引き続き緩やかに改善するものの、FRBの年内の買い入れ縮小や利上げを促すほど堅調にならないことを願っています。低金利や刺激策は今や他の政府プログラム同様、排除されることのない給付金制度のように捉えられています。合理的に考えれば、FRBは経済が十分安定した時に買い入れを縮小するわけですが、精神的には、FRBが何かを奪っていくかのように投資家(や企業)には思えるようです。6月のFRB会合以降、この理性と感情の衝突が市場に反映され始めています。新たな主要データが発表されるたびにこれが繰り返され、市場の変動が増すでしょう。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年6月末現在。表は図示する目的のためだけのものです。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。この表は、仮説に基づく過去の実績を反映している可能性があります。
出所:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス 2013 年 6 月末現在。
2013年前半のS&P500は好調でした。第1四半期は10.03%上昇し、第2四半期はより小幅の2.36%の上昇となりました。結果、前半は12.63%上昇し、1998年(16.84%上昇)以来最も好調な前半期となりました。年初来ベースならびに第1四半期ベースでは10セクター全てが上昇しました。一方、第2四半期は半分が上昇、半分が下落、とまちまちでした。前半で最も好調だったセクターは、19.06%上昇したヘルスケアでした。オバマケア(医療保険制度改革)の成否にかかわらず、ヘルスケアサービス、医薬品、研究の需要は継続し、資金提供が必要となるからです。最悪のパフォーマンスとなったのが素材ですが、それでも1.68%上昇しました。コモディティ価格が引き続き不安定で、企業がコスト上昇を消費者に素早く転嫁する能力が限られていることが下方圧力となりました。利回りが追求される中、年初は配当株が堅調でした。トレーダーが短期間で利益を上げようと動き、高配当銘柄(公益事業と電気通信)を押し上げました。成長の追求が利回りの追求を上回った時点でトレーダーは去り、高配当株は下落しました。残った高配当株へのコアな投資家にとっては好調な2013年前半となり(配当は前半で13.9%上昇)、後半も引き続き堅調が続くと見られます。昨年のユーロでの通貨遊びは円に取って替わられました。日本の景気刺激策に期待が高まり、日本市場は年初から5月末にかけて上昇しました。過剰な期待を懸念して調整入りしたものの、成長への期待から6月も1.42%上昇し、主要市場の中で唯一の上昇を遂げました。第2四半期の決算発表では、より安価な部品や(日本からの)輸入に関する言及があると見られますが、円安による実際の利益など具体的な数字はこれまでも発表されていません。世界の金利は上昇したものの、依然として超低金利でした。各国の中央銀行が低金利、信用政策、刺激策を通じて消費を促したことが背景にありました。米国株式市場の焦点は、FRBがいつ資産買い入れを縮小させ、利上げを行うかでした。年初来ベースでは、S&P500の構成銘柄の86.2%(431銘柄)が上昇し、そのうち63.8%(319銘柄)が2桁台の上昇を、20.6%(103銘柄)が25%以上の上昇を遂げました。10銘柄が50%以上の上昇を遂げ、そのうち家電量販店のBest Buy(BBY、130.6%上昇)、オンライン娯楽サービスのNetFlix(NFLX、127.5%上昇)、 半導体製造のMicron Technology(MU、125.7%)の3銘柄は100%以上の上昇を遂げています。最悪のパフォーマンスとなったのが鉄鉱石生産のCliffs Natural Resources(CLF)でした。2012年末に比べ57.9%、2011年末に比べ73.9%下落しています。金鉱大手のNewmont Mining(NEM)は年初来ベースで45.0%下落し、総合製鉄会社のU.S. Steel(X)は26.6%下落しました。過去最高値を記録後、下落が続いた電子機器大手のApple(AAPL)は25.9%下落しました。憶測が飛び交い、目立った銘柄の1つは、2013年前半に13.3%下落したJ.C. Penney(JCP)でした。同社は新しいCEO、態度、顧客への感謝を通じて小売業の立て直しを図っています。一時期高値株だったFirst Solar(FSLR)は前半で44.9%上昇したものの、業界内が再編(M&A)や破綻の時期と見られることから、依然として不安定でした(過去最高値を記録した2007年10月以来67.4%下落)。コンピュータ関連のHewlett-Packard(HPQ)は反転して74.0%上昇、2011年の終値からわずか3.7%の下落となりました。ブローカーたちの主な話題はFRBではなく、引き続き個人投資家がマーケットに戻ってくるか、最近のマーケットの混乱を見て逃げてしまうかどうかでした。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年6月末現在。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年6月末現在。
投資家が押さえておくべきポイント
今年は緩やかで安定した経済成長を見せている米国が株式市場を支配しています(年初来で12.63%上昇、1998年以来最も堅調な前半期)。
2013年第1四半期のS&P500は過去最高の営業利益とリポーテッドベースの利益を記録しました。特に売上に関しては予想を下回ったものの、過去最高を記録したことに変わりありません。現時点では、第2四半期は第1四半期を上回り過去最高を更新すると見られています。7月8日(月)の取引終了後に決算を発表するアルコアを皮切りに決算シーズンに突入します。
株価を上昇させ(その後下落させ)た投機家を除き、配当は継続、6月の配当は前年に比べ23.2%上昇しています。2013年第2四半期の配当は前年同期比15.5%上昇し、年初来ベースの配当は13.9%上昇しています。
米国が風邪をひいたら世界が肺炎にかかるわけではありませんが、体調不良になるのは確かです。2013年前半の新興国市場は年初来ベースで9.03%下落し、先進国は7.10%上昇しましたが、米国の12.99%の上昇と日本の14.74%の上昇を除けば、先進国市場は2.13%下落しました。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年6月末現在。
FRBはコメンタリーを発表しても短期的にはアクションを起こさず、起こすのは早くとも10月または12月の会合だろう、というのが現在支配的な見方です。FRBのアクションは雇用、住宅、製造に関するデータ次第です。また、1月に連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権のあるメンバーが交代します。1月に任期満了を迎えるバーナンキ議長の進退は未定です。
FOMC日程
7月30-31日
9月17-18日
10月29-30日
12月17-18日
1月28-29日(メンバー交代。バーナンキ議長の任期満了は2014年1月31日)
S&P500月例レポートでは、S&P500指数の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
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http://www.spindices.com/
S&P 500 月例レポート
執筆者
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・
インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
mailto:howard_silverblatt@spdji.com
アメリカがなしの先進国が酷過ぎるwww
てか新興国パフォーマンス悪すぎwww
A rolling stone is worth two in the bush, thanks to this aretcli.