マーケット分析レポート
S&P500
11月は記憶に残る月となりました。市場は引き続き上昇(2.80%)し、年初来の上昇に貢献しました。S&P500は年初来ベースで26.62%のプラス、配当を含めた場合は29.12%のプラスとなり、1997年以来最高のパフォーマンスを示しています。この上昇のおかげで新年のお祝いムードも上昇中ですが、盛り上がりは主に米国やその他先進国にとどまっています。先進国市場が年初来で22.12%上昇する一方、新興国市場は3.09%の下落となりました。米国市場は幅広く上昇し、11月の値上がりと値下がりの比率は2対1(年初来ベースでは約9対1)となりました。高騰するハイテク株が市場を押し上げたものの、値下がり銘柄が値上がり銘柄を上回った1990年代後半の市場とは異なります。幅広い反発、そして幅広い参加が投資意欲の証であり、その意欲自体がさらなる意欲を生みつつあります。米国市場は今年、終値ベースの史上最高値を38回更新しており、11月だけでも5回更新しています。最近の8週連続上昇は、9週連続で上昇した2004年1月以来の出来事です(最高記録は1957年4月に達成した13週連続上昇)。様子見していた投資家の一部がリターンを追うために市場に戻るなか、最近の市場の上昇はリスクと報酬のトレードオフに変化をもたらしつつあります。VIX指数の終値が13.70と低水準だったことからも分かるように、市場に既に参加している投資家たちの不安は少ないようでした。年初来ベースで26.6%と心地よい上昇を遂げ、12月は歴史的に見ても74%の確率で上昇することから、投資家の間では「そのまま賭けを続けよう」という意識が生まれ、今のところ利食い売りもほとんどありません。市場の下支え要因もいくつかあります。第3四半期の業績は引き続き緩やかかつ安定したペースで増加し、過去最高を再び更新しました。雇用の改善は経済を支えるには十分でありながら、米連邦準備制度理事会(FRB)の新たな動きを促すには不十分です。FRBが(次期議長イエレン氏の指揮のもと)景気刺激策の縮小を間もなく開始する見通しではあるものの、金融緩和は続くとみられています。
そして、11月に劇的な出来事が全くなかったわけではありません。米政府の新医療保険制度の開始は、新商品発売の悪い例の典型となってしまいました。米政府は問題の解決を約束し、医療保険改革法の一部は施行延期となっています。それでもヘルスケア関連株は影響を受けず、11月は4.49%上昇(年初来で37.99%上昇)し、最も良好なパフォーマンスを上げたセクターとなりました。第3四半期の国内総生産(GDP)成長率は2.8%を記録し、事前予想の2.0%を上回りました。金利はやや上昇し、原油価格は下落(ホリデーシーズンにちょうど間に合うタイミングで消費者の懐を温めました)し、金は下落しました。特に、米議会がそれなりに行儀よかったことが市場の下支えになったと言えるでしょう。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年11月末現在。表は図示する目的のためだけのものです。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。この表は、仮説に基づく過去の実績を反映している可能性があります。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年11月末現在。
11月の市場は常勝街道をさらにひた走ることとなりました。11月は9カ月連続で上昇(2.80%)し、8週連続の上昇で取引を終えました。165銘柄が下落する一方、332銘柄が上昇し、幅広い上昇となりました。20日間のうち12日間は上昇、5日間は終値ベースの史上最高値を更新しました。S&P500の構成銘柄のうち、35銘柄が10%以上上昇(平均で14.26%上昇)し、11銘柄が10%以上下落(平均で12.85%下落)しました。年初来では448銘柄が上昇し、51銘柄が下落しています。11月は10セクター中8セクターが上昇しました。比較的低成長で高配当の公益事業と電気通信サービスのセクターが2.35%と2.65%、それぞれ下落しました。政府の新医療保険制度は滑り出し不調だったものの、ヘルスケアセクターは4.49%上昇と、全セクター中、最高のパフォーマンスを上げました。市場は現在のリスク水準を低いとみているため、リスクを受け入れる傾向にあり、バリュー株よりもグロース株が重んじられています。ホリデーシーズンが始まるなか、小売り大手のJ.C. Penney (JCP)は反発(35.9%上昇)しましたが、年初来では依然として48.3%のマイナスでした。ホリデーシーズンに入って人出が増えたというMacy’s (M)は15.5%上昇しました。太陽光発電モジュール製造のFirst Solar (FSLR)は10月に25.0%上昇したのに続き、11月は業績見通しの改善から19.0%上昇しました。年初来では93.7%上昇していますが、2009年3月に記録した市場全体の安値からは44.8%下落しています。ビデオゲーム小売りのGameStop (GME)は堅調な売り上げが予想されていたのが下方修正されたことから、12.0%下落したものの、年初来では92.3%上昇しています。自然食料品チェーンのWhole Foods Market (WFM)はコストや売り上げに関する懸念から10.3%下落しました(年初来で22.9%上昇)。注目すべき銘柄は例えば、iPhoneなどで知られる電子機器大手のApple (AAPL)です。11月は6.4%上昇し、年初来ベースでも4.5%のプラスに転じました。International Business Machines (IBM)は月間で0.3%上昇したものの、年初来では依然として下落しています(6.2%のマイナス)。現在指数のなかで3番目に大きい銘柄であるインターネットのGoogle (GOOG)は2.8%上昇し、年初来で49.8%上昇しています。12月は「サンタクロースラリー(クリスマスから新年にかけて株価が上昇する現象)」が起きることで知られており、歴史的に見ても74%の確率で上昇しています。年末のお化粧買いが入る可能性はありますが、利食い売りの意欲は少ないようです。個人投資家がリターンを追うために引き続き市場に戻ってくるため、需要(および価格)を押し上げるという意見が一部見られます。一方、強気筋が多いことやリスク水準は低いと一般的に考えられていることに神経をとがらせる者もいます。株式市場のバブルに関する話題が報じられていますが、アウトライトの売りのシグナルを出している向きは少ないです。さらには、ファンドも売りを進めている様子は見られません。したがって、現時点では年初来の利益がすべて「保留」となっているわけです。自分はツキがある、とあなたは思いますか?あなただったら、ここで勝負に出ますか?
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年11月末現在。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年11月末現在。
投資家が押さえておくべきポイント
- 11月は2.80%上昇(トータルリターンは3.05%のプラス)し、1997年以来最高の年初来ベースのパフォーマンスに貢献しました(26.62%のプラス、トータルリターンは29.12%のプラス)。1997年の場合、11月末までに28.98%上昇し、通年で31.01%上昇しました。
- 年末にかけてですが、12月は歴史的に見ても74%の確率で上昇することから、新年のお祝いムードも上昇するでしょう。利食い売りをして早めのお祝いをしてしまおう、という向きも少なくなり、投資家の間では「そのまま賭けを続けよう」という意識が生まれています。お祝いムードの盛り上がりは主に米国やその他先進国にとどまっています。11月は先進国市場が年初来で22.12%上昇する一方、新興国市場は3.09%の下落と、依然マイナスでした。
- S&P500の年初来の上昇銘柄の比率(448銘柄が上昇、51銘柄が下落)は年間記録に迫り、幅広い上昇を示しています。S&P500は今年、史上最高値を38回更新しており、11月だけでも5回更新しています。情報技術セクターのおかげで市場は19.53%上昇しているのに、上昇している銘柄は半数に満たなかった1999年とはわけが違います。
- 医療保険改革法に関しては色々と不具合が生じましたが、ヘルスケアセクターは11月に4.49%上昇し、最も良好なパフォーマンスを上げたセクターとなりました(年初来で37.99%上昇)。1989年から2013年11月にかけてヘルスケアセクターは11.63%のトータルリターン(年率)を上げ、10セクター中最高のリターンを達成しています。
- S&Pの格付けグループ(筆者の所属ではない)が11月25日に州のOPEB(other post-employment benefits、その他の退職後給付)に関する報告書を発表しました。そのなかで注目すべき統計は、州税でまかなわれている債務が4880億ドルであるのに対し、未積立OPEBが5290億ドルで、未積立年金が8330億ドルであることを示す円グラフです。
S&P500月例レポートでは、S&P500指数の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
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S&P 500 月例レポート
執筆者
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・
インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
mailto:howard_silverblatt@spdji.com