実は、オーストラリアにも世界最古のワインが存在します。1800年代の疫病で被害を受けたヨーロッパのブドウ畑から、難を免れた人々がオーストラリアにワインを持ち込んだからです。当初ワインに適した豪州原産のブドウの木が無く、スペインとフランスから木が持ち込まれ「豪州ワイン」が始まりました。豪州産ワインの「父」と呼ばれるスコットランド出身のジェームズ・バスビーは、国内に初めてワインを取り入れた人物の一人として有名です。
国内のワイン産業は豪州経済に大きく貢献しており、今日、ワインの国際市場で豪州は4位で年に約7.5億トンものワインを輸出しています。2014年の売上げは56億豪ドルで、イギリスにおいてはフランス産よりも豪州産を多く輸入しています。高品質なワインを生産する豪州は、国際コンクールでも顕著な成績を収め、ボトル価格でも最高記録を保持しています。初のブドウ栽培が200年前ということを考えると、中々の業績ですよね。
では豪州産ワインの特性とは何なのでしょうか。まず、土地がとてつもなく広いため、土壌や気候の違いが多様にあります。すると様々な品種のブドウが多く栽培できるため、生産できるワインの種類も広がります。オーストラリアは、シラーズやカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロー、セミリオン、ピノ・ノワール、リースリング、そしてソーヴィニヨン・ブランといった品種が有名です。また、スペインのテンプラニーリョやイタリアの品種は、現在「オーストラリア」産のブドウとして栽培され始めています。
ワインの生産地はどうでしょうか。実は、豪州には約60の生産地域があり、主にヴィクトリア州等の南東の3つの州が占めていますが、タスマニア州や西オーストラリア州でも生産しています。つまり豪州のどこにでもワインの生産農園は存在すると言えますね。実際、乾燥地域のレッド・センターにあるアリス・スプリングスにさえ、ブドウ園があるのです。また、マーガレット・リバーの生産量は全体の3%ほどですが、豪州産プレミアム・ワインの20%がこの地域で生まれているのです。
国内のワイン産業は技術や教育の面でも発展しています。技術面の突破口を開いたのは、化学薬品の使用を抑えたワインの生産方法です。ワインの教育においては、アデレード大学のヴィティカルチャー&イーノロジーが世界でトップクラスです。ここに世界中の学生が、ワインの生産や土壌科学といった分野を学びに訪れ、卒業生は世界中で必要な人材とされているのです。