マーケット分析レポート
S&P500
成功の秘訣と言えば、結果を知った後で、成功とは何ぞやを定義すればよいのです。その意味では、0.62%上昇した4月(ほとんどは下旬における上昇)は、十分な成功を収めたと言えるでしょう。史上最悪の株価下落を記録した1987年10月19日の場合(20.47%、または4,070億ドル下落し、終値は224.84)も、時価総額の79.53%は守って、維持できたという意味では、成功を収めたと言えるでしょう。当時、S&P勤続10年目だった私は、財布にわずか残った小銭を数えていました。
4月の主な焦点は、緊張が高まるウクライナ危機でした。3月は米国市場への影響はなかったため、「危機」というよりも「状況」という扱いでしたが、今や「危機」と言えるでしょう。言葉遣いの上でも、軍事行動においても、対立が拡大しています。次に必然的に起こるのは、より深刻な経済的影響でしょう(現時点では、大多数の者が本格的な軍事的衝突は誰の利益にもならないと感じています)。欧州とロシアの経済的な関係と依存は米国とロシアのそれと比べはるかに大きいため、制裁(全ての当事者の政治的決定)を通じて更なる圧力が加わった場合、欧州への影響が強まり、景気回復が危うくなる可能性があります。そうなれば、世界経済にも影響が及びます。その点から見れば、月間はほとんど横ばいまたはマイナス圏で推移しながらも月末に上昇した4月は大きな成功を収めたかのように思えます。S&P500は0.62%上昇し、S&PグローバルBMI(総合指数)は0.38%上昇(米国を除くと0.75%上昇)しました。過去数年は、各四半期ごとに企業の業績が市場の下支えとなってきましたが、4月も同じくでした。第1四半期決算の69%が既に発表されていますが、業績は予想を上回り、過去最高を記録した2013年第4四半期からの下落が、予想よりもはるかに小さかった(3.9%の下落)ことは朗報でした。第2四半期に関する業績予想は数が限られていますが、依然変わりなく、2013年第4四半期を上回り、過去最高を更新する方向です。注目銘柄の一つは、決算がアナリスト予想を上回ったApple (AAPL)です(指数の四半期EPS(1株当たり利益)を0.5%上昇させました)。Appleは、自社株買いの規模を900億ドルに拡大(史上最大の規模であり、四半期の自社株買いも180億ドルと、指数の過去最高を更新。前回の記録は、同社が2013年第2四半期に記録した160億ドルでした)し、増配も発表しました。同社の株価は月間で9.9%(時価総額で435億ドル)上昇しました。トップライン(売上高)の観点から見れば、配当や自社株買いを通じて株主還元を増やしており、ボトムライン(最終損益)の観点から見れば、世界最大の公開企業であるAppleでさえも、アク
ティビスト(物言う株主)の圧力からは逃れられないということが言えます。Pfizer (PFE)はAstraZeneca (AZN)に提案している990億ドルの買収提示額が拒否されたにも関わらず、引き続き買収の機会を追求しています。ところが、Pfizerに関してより注目されているのは、本社を米国から英国に移転させ、何十億ドルもの節税が実現できる可能性です。仮に取引または本社移転が進展した場合、税法や資金の本国還流(リパトリ)に関する法律の改正への圧力が高まるとみられますが、これは苦渋の決断であり、ましてや選挙の年はなおさらです。さらに、eBayは自社株買いやその他の企業活動を行うために現金を本国に戻し、推定30億ドルの税金費用を支払うことを発表しています。企業の合併・買収(M&A)の増加を受け、ヘルスケア銘柄などが買われ、成長株投資よりもバリュー株投資が先行しているようでした。情報技術セクターに関しては「バブル」という言葉が頻繁に聞かれ、変動性が高い割安株に買いが入りました。現時点で投資家は、市場をどのように捉えてよいのかがわからない、という状況に置かれています。市場は年初来ベースで1.93%上昇していますが、2013年は29.60%、2011年は13.41%、それぞれ上昇しています。株式戦略家は成熟しつつある強気相場の成長の鈍化や調整局面の可能性を指摘しています。一部エコノミストは、2016年以降は非常に緩やかな伸びを予測しています。現時点で必要とされている判断材料として挙げられるのは、5月に発表される小売売上高(消費者がどこで何に金を使ったか)などのデータ、ウクライナ情勢における政治的・経済的決断、および、夏の一般消費者の消費予測(および企業利益への影響)です。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2014年4月末現在。表は図示する目的のためだけのものです。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。この表は、仮説に基づく過去の実績を反映している可能性があります。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2014年4月末現在。
4月は前月に比べ変動性(日中の上下値幅)が高まり、取引しにくい相場でした。 S&P500は4月2日に1890.90と過去最高値を更新しました(4日には日中取引時間ベースでも1900目前の1899.97と、過去最高値を更新)。それ以降はウクライナ情勢と業績に関する懸念が相まって、1814の水準まで下落しました。そこからは、主に堅調な企業決算(3分の2の銘柄が予想を上回る)に支えられ、さらなる下落をこらえました。月末は、ウクライナ情勢を懸念した売りが一巡し、4月最後の二日間でプラス圏に転じました。セクターごとの結果を見ただけでは、4月中の動きを読み取ることはできません。下落基調だった金融セクターは、結局マイナス1.64%で4月の取引を終えました。資本計画に誤りがあったことを受け、増配停止となったBank of America (BAC)は、12.0%下落し、同セクターで最大の下げとなりました。地方銀行も下落し、Fifth Third Bank (FITB)は10.2%、Leucadia National (LUK)は8.9%、Regions Financials (RF)は8.7%、それぞれ下落しました。保険はそれに比べて堅調で、Travelers (TRV)は6.4%、 American International Group (AIG)は6.2%、それぞれ上昇しました。軟調な展開が続いた情報技術は、0.21%の上昇で4月の取引を終えたものの、一部市場関係者が最近の上昇をバブルの兆候だとみる中、変動性は高まりました。Xilinx (XLNX)は13.1%、VeriSign (VRSN)は12.5%、Alliance Data Systems (ADS)は12.5%、構成銘柄の中で3番目に大きいGoogle (GOOG) は4.0%、それぞれ下落しました。同セクターで最高のパフォーマンスを上げたのは月間ベースで10.4%、年初来ベースで20.1%上昇したMicron Technology (MU)でした。同セクター、および、指数の中で最も目立ったのは、9.9%上昇し、セクター全体をけん引したApple (AAPL)でした(年初来リターンは5.2%のプラスに転じました)。同セクターの0.21%の上昇も、アップルを除けば、1.56%の下落でした。指数の中で最高のパフォーマンスを上げたセクターは、エネルギーでした。Exxon Mobil (XOM)は月間で4.8%上昇し、年初来ベースで1.2%のプラスに転じました。その他特に目立った銘柄としては、一部資産売却の可能性を検討していると発表したJohnson & Johnson (JNJ)(10.6%の上昇)、筆頭株主ウォーレン・バフェット氏の提案通り、役員報酬計画の見直しに合意した Coca-Cola (KO)(月間で5.5%上昇、年初来では依然として1.3%のマイナス)などが挙げられます。業績が予想を下回った小売セクターも話題となりました。Coach (COH)は10.1%、Bed, Bath & Beyond (BBBY)は9.7%、Amazon.com (AMZN)は9.6%、それぞれ下落しました。5月も小売を中心に決算発表は続く中、市場関係者は、米国内総生産(GDP)の7割を占める夏の消費支出の動向を評価し始めるでしょう。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2014年4月末現在。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2014年4月末現在。
投資家が押さえておくべきポイント
- ウクライナ当局と親ロシア派が衝突する中、ウクライナ情勢をめぐって言葉遣いの上でも、軍事行動においても、米ロの対立が拡大しました。欧州市場には既に下方圧力がかかっていますが、米国市場への影響も現れ始めました。最終的には、政治問題を優先するのか(ロシアにとっては内部の問題、米国にとっては外部の問題)、自国の利益(欧州はロシアからの石油やガスを必要とし、ロシアは欧州からの資金を必要としています)を優先するのかの問題でしょう。
- 2014年第1四半期EPSは2013年第4四半期の記録から3.9%と小幅の下落にとどまっています。小売の決算発表はこれからが本番ですが、芳しくない結果が見込まれています。2014年第2四半期EPSは第1四半期に比べ9.3%、2013年第2四半期に比べ12.6%、それぞれ上昇し、過去最高を更新する見込みです。第3四半期や第4四半期も、さらに過去最高を更新すると予想されています。トップダウン型予測では、2015年は二桁台の力強い成長が予想されていますが、2016年以降は一桁台半ばもしくは一桁台前半の伸びが予想されています。
- Apple はEPSに関して予想を上回りました(指数の第1四半期EPSを0.5%上昇させました)。背景にあったのは、増配(113億ドルという世界最大級の配当を支払う企業に)と自社株買い(900億ドルの規模であり、四半期の自社株買いも180億ドルと、過去最高を更新)です。S&P500 は月間で0.62%上昇しましたが、Appleを除けば、0.35%の上昇にとどまりました。情報技術セクターの0.21%の上昇も、Appleを除けば、1.56%の下落でした。
- アクティビスト(物言う株主)の物言いがさらに激しくなりました。重役用会議室のドアをノックするアクティビストがいる場合、応答するか、ドアを補強するかのいずれかです。
- 2014年第1四半期は、増配した米国の普通株式の銘柄の数が過去最高に達しました(総額では記録に及ばず)。
- 医療保険改革法の実施に伴い、業績予想が上下する一方、ヘルスケアセクターではM&Aが急増しています。
考えのメモ:
- 悪天候に見舞われた冬を後に、消費者の旅行や夏物への支出は増えるのでしょうか。市場や雇用情勢は改善しているものの、成長と安定性への懸念は依然として残ります。
- S&P500の設備投資は2013年第4四半期(1,647億ドル)と2013年(5,856億ドル)に過去最高に達しました。初期のデータによると、2014年第1四半期の設備投資は減っています(GDPの第1四半期速報値でも設備投資は減少しています)。工場を建設・拡大する動きは少なく、特に米国国内では自動車工場の操業再開を除けば、ごく限られています。
- 数年前のAppleのように「If I build it, they will buy it (私が作れば、彼らは買う)」というわけにはいかないので、果たして企業は、売上高が上昇するであろう時期の数四半期前に生産を増やすのでしょうか。
- 主にエコノミストや株式戦略家によるトップダウン型予測の方が、ボトムアップ型のアナリスト(その多くがセルサイド)の予測よりも楽観的という珍しい状況です。ところが、そのトップダウン型予測における成長も、2016年には著しく低下し、2017年には一桁台前半の成長率に落ち込んでいます。結局そうなったとしても、自業自得でしょうか。
基本統計:
- 2014年第1四半期EPSは前年比5.4%上昇していますが、過去最高の2013年第4四半期に比べ3.9%下落しています。2014年3月の業績に基づく2014年第1四半期の直近12カ月ベースの株価収益率は、17.3です。一方、1988年以来の平均は18.7です。
- ストックピッカー(個別銘柄選び)の相場の様相を呈しています。S&P500は年初来ベースで1.93%上昇しているものの、111銘柄が10%以上上昇し、43銘柄が10%以上下落しています(10%以上上昇または下落した銘柄が全銘柄の30.7%を占めました)。ほとんどのファンドが指数をアンダーパフォームしました。構成銘柄のGoogleの株式分割を受け、S&P500は500社の発行体を反映しながらも、その構成銘柄数は501となりました。
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