マーケット分析レポート
S&P500
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3月を史上最高値で引けた市場のその後の行方を懸念していたならば、どうぞ肩の力を抜いて、お手持ちの投資可能資金を数えてください。S&P500は4月の最終日も終値ベースでの史上最高値を更新し、6カ月連続の上昇となりました。4月に入るまでの疑問は、米企業の決算は期待に応えることができるのか、というものでした。7割超が2013年第1四半期の決算発表を終えた時点で、営業利益は(決算報告上の利益に加え)過去最高を記録する見通しです(2012年第1四半期に比べ8.1%増)。現時点で利幅も過去最高の9.60%に迫る9.59%となっています。悪いニュースとしては、売り上げの伸びがわずか1.9%という点です。大企業は、最小限の売り上げ成長で純利益を伸ばす「手段をみつける手段」をまたしてもみつけたようです。問題は、それがいつまで通用するのかです。より多くの収穫をより少しの対価で得る、というのが最近のお決まりとなっているようですから、慣れるしかありません。市場もそれに気づいてはいますが、(少なくとも現時点では)純利益が売り上げ成長を上回っているので、相場は続伸しました。4月のS&P500は横ばいでも勝利と見なされたと思いますが、1.81%上昇しました。売上高以外のファンダメンタルズは魅力的に見えます。低い金利や余剰のキャッシュを見てもバランスシートは健全です。トップダウン型であれ、ボトムアップ型であれ、2013年残りの業績予想は楽観的です。一方、エコノミストやストラテジストらは年内の消費者(すなわち企業)に対する逆風について話し始めています。4月に主だったテーマの1つは、株主還元でした。数十億ドル単位の自社株買い計画の許可(実施とは異なる)が相次ぐ中、Apple、Exxon、Wells Fargoが10億ドル以上の増配を発表しています。手元資金として約1450億ドルを保有するAppleは、2015年末までに1000億ドルを自社株買いと配当に支払うと発表しています(4月の増配で、Appleは支払い配当総額で世界最大の企業となりました。Appleの年間115億ドルに対し、2位のExxonは113億ドル)。Appleはまた、約20年ぶりの社債発行で還元策を実施する資金を賄うことにしました。海外から米国に資金を還流させた場合に発生する納税義務がその選択を促しました。企業団体はタックスホリデー(というよりも減税)を求めてきましたが、多くの企業が手元資金を利用するのではなく社債を発行している中、政治的観点から見て実施の見込みはないでしょう。そして今後もそのような傾向は続くでしょう。社債発行は帳簿上(そして金銭的に)は道理にかなっていますが、債務は現実に存在するものであるため、社費に重くのしかかる可能性があります。5月の第1週は決算発表が減り、投資家が現在の価格水準に慣れるための猶予期間となるでしょう。第2週と第3週は小売中心に決算発表が再び増える見込みです。5月末は企業関連の材料が乏しくなるため、投資家やトレーダーは新たに注目するものを求めることになり、世界の債務問題や政治問題が再び経済紙の一面を飾ることになるでしょう。
出所:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス 2013 年 4 月末現在。表は図示する目的のためだけのものです。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するも のではありません。この表は、仮説に基づく過去の実績を反映している可能性があります。
出所:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス 2013 年 4 月末現在。
4月の最終取引日はS&P500が1597.57ポイントで終了し 、終値ベースでの史上最高値を更新しました。月間の上昇は1.81%となりました。これで物足りないと思うのは、欲張りな人ぐらいでしょう。年初来では12.02%のプラス(トータルリターンは12.74%のプラス)となり、6カ月連続の上昇を記録しました(株価指数13.13%、トータルリターン14.42%)。S&P 500を構成する全銘柄のうち304銘柄が上昇し(平均で5.26%上昇)、うち35銘柄は10%以上上昇しています(平均で15.05%上昇)。一方、196銘柄が下落し(平均で4.34%下落)、うち19銘柄が10%以上下落しました(平均で13.88%下落)。企業決算を前にグローバルな問題は二の次となり、3月に関心を集めたキプロス問題もすっかり忘れられてしまいました。日本の株式市場も続伸し、月間で8.11%、年初来ベースで20.55%の上昇となりました。世界第二位の株式市場を擁する日本(世界市場の8.7%を占め、前年の7.5%から上昇。米国が46.4%を占める)がグローバルな実績を下支えしたものの、米国と日本を除いたベースではわずかな上昇にとどまりました。先進国市場は過去3カ月間に5.03%上昇したものの、米国と日本を除いたベースでの上昇は0.57%でした。4月は10セクターのうち8セクターが上昇しました。電気通信サービスは5.99%上昇(年初来で14.68%上昇)、公益事業もそれに次ぐ5.89%の上昇(年初来で18.43%上昇)となり、高配当の2セクターが最も良好なパフォーマンスを上げる格好となりました。一方、月間でマイナスとなったのは、0.88%下落(年初来では8.61%上昇)したエネルギーと、0.84%下落(年初来では9.16%上昇)した資本財・サービスでした。4月に目立った銘柄は、太陽光発電モジュール製造大手のFirst Solar (FSLR)です。4月は72.70%と急反発したものの、2010年の終値に比べ64.2%下落しています。ゲーム小売りのGameStop (GME)は24.8%上昇し、高級皮革製品メーカーのCoach (COH)は17.7%上昇しました。オンライン娯楽サービスのNetflix (NFLX)も14.1%上昇しました。一方、芳しくなかった銘柄は金などの鉱物の値下がりを背景に22.7%下落(年初来で30.2%下落)した金鉱大手のNewmont Mining (NEM)や、業績予想の下方修正や格下げを背景に22.4%下落(年初来で29.6%下落)した循環器疾患治療製品メーカーのEdwards Lifesciences (EW)でした。第1四半期は上昇した食品スーパーのSafeway Stores (SWY)は、業績予想が悪化したことから、月間で14.5%下落しました(年初来では24.5%上昇)。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年4月末現在。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年4月末現在。
投資家が押さえておくべきポイント
S&P500は1597.57に上昇し、終値ベースとザラバベースでの史上最高値を更新する形で4月の取引を終えました(3月も同様に1569.19で取引終了)。年初来で12.02%上昇し、トータルリターンは12.74%のプラスとなりました。6カ月連続の上昇で13.13%上昇し、トータルリターンは14.42%のプラスとなりました。
7割超が2013年第1四半期の決算発表を終えた時点で、同四半期は過去最高の営業利益が記録される見通しです。売り上げの伸びは最小限にとどまるものの、利幅は過去最高に迫る見込みです。大企業は最小限の売り上げ成長で過去最高の利益増加率を達成することにまたしても成功しました。より多くの収穫をより少しの対価で得る、というのが最近のお決まりとなっているようですから、慣れるしかありません。
AppleもExxonも4月に数十億ドル単位の増配を発表しています(Wells Fargoも同様)。Appleは配当額首位の座をExxonから奪い、AppleとExxonの間で株式時価総額や株主還元の世界首位の座の取り合いになりました。ニューヨークヤンキーズとボストンレッドソックスのライバル争いよりも興味深い対決と言えるかもしれません。
景気刺激策に期待が高まるなか、日本市場は過去3カ月で16.3%上昇しました。
第1四半期のアメリカ経済を何とか支えたのは、民間部門の消費や雇用でした。政府支出の減少により、米国内総生産(GDP)成長率は2.5%と予想を下回りました。政府支出が横ばいだった場合の成長率は3.2%だったでしょう。いずれにせよ、ヨーロッパのようなマイナスに比べれば、低成長のほうがましと言えるでしょう。
S&P500月例レポートでは、S&P500指数の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
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S&P 500 月例レポート
執筆者
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・
インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
mailto:howard_silverblatt@spdji.com