■事業内容<br/><br/>アイ・アールジャパンホールディングス<6035>の事業領域は、「IR・SR活動に専門特化したコンサルティング業」であるが、以前より、実質株主判明調査、議決権事前賛否シミュレーション、プロキシー・アドバイザリー(株主総会における総合的な戦略立案)、取締役会評価、投資銀行業務等幅広い事業を行っている。サービス別に事業内容を見ていく。<br/><br/>(1) IR・SRコンサルティング<br/><br/>実質株主判明調査、議決権事前賛否シミュレーション、プロキシー・アドバイザリー、投資銀行業務、証券代行業務等を中心とする。同社の中核サービスである。同サービスの売上高は前年同期と比較し26.9%増。2015年に施行されたコーポレートガバナンス・コードへの対応を上場企業が具体的に始め、同社の議決権関連のコンサルティングの引き合いが強まった。実際のところ、全世界で日本株に投資をする機関投資家の議決権行使担当者を囲い込んでいる。彼らの投票パターンもつかんでおり、第三者機関を使って議決権行使をするのか、独自で行うのかなどのことも把握している。投資銀行業務に関しては、M&A、ファイナンス案件等のFA業務が増加している。従来は議決権確保が中心であったが、それに関連したM&A、ファイナンス案件等のビジネスチャンスも増えてきた。新規参入した証券代行業務に関しては既に確立した業界であるため、今後どのように業績を伸ばしていくかが課題と言えよう。同社は本業務において早期に50社強の受託拡大達成を目指している。<br/><br/>a)プロキシー・アドバイザリーとしての主な実績<br/>2005年 経営統合案件<br/>三共(株)(現第一三共<4568>)vs M&Aコンサルティング(村上ファンド)に関して三共・第一製薬(株)側を支援、統合成立をもって三共側の勝利。<br/>概要:村上氏率いるM&Aコンサルティングが三共・第一製薬経営統合議案への反対を表明。三共側プロキシーアドバイザーとして統合議案可決を支援。<br/><br/>2007年 敵対的TOB<br/>ブルドックソース<2804> vsスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドに関してTOB不成立をもって、ブルドックソース側の勝利<br/>概要:筆頭株主であるスティール・パートナーズがブルドッグソースに対し敵対的TOBを展開。ブルドッグソース側プロキシーアドバイザーとしてTOB不成立に向けて支援。<br/><br/>2007年 委任状争奪戦<br/>イオン<8267> vs(株)CFSコーポレーション※に関して統合不成立をもってイオン側の勝利<br/>概要:CFSコーポレーションと(株)アインファーマシーズの統合に対して、CFSコーポレーションの筆頭株主であるイオン側プロキシーアドバイザーとして統合不成立に向けた委任状回収を支援。<br/><br/>※2016年9月にウエルシアホールディングス<3141>の子会社、ウエルシア薬局(株)との合併により消減<br/><br/>2007年 株主提案<br/>電源開発<9513> vs TCI(ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド)に関して株主提案否決をもって、電源開発側の勝利<br/>概要:筆頭株主であるTCIが増配等の株主提案。電源開発側プロキシーアドバイザーとして株主提案の否決を支援。<br/><br/>2008年 経営統合<br/>(株)三越・(株)伊勢丹(現三越伊勢丹ホールディングス<3099>)に関して統合成立<br/>概要:三越・伊勢丹の経営統合に向けて両社のプロキシーアドバイザーとして統合議案可決を支援。<br/><br/>2014年 株主提案<br/>メディネット<2370>創業者 vsメディネットに関して株主提案可決をもってオーナーの勝利<br/>概要:社長解任を主導した取締役解任等のため委任状回収を実施。プロキシーアドバイザーとして、委任状回収実務全般を対応。筆頭株主でもある会長により、臨時株主総会招集請求及び、社長解任を主導した取締役の解任と新たな取締役の選任に関する株主提案実施。会長側の証券代行機関として、5万名超の株主宛に委任状の印刷、封入、発送、回収を行う。議決権行使率及び相当数の賛同票(委任状)を確保し、株主提案2議案の可決に導く。代行事業を展開している同社の強みを最大限に発揮し、株主提案の可決に結び付けた。株主側の支援実績として画期的な案件。<br/><br/>(2)ディスクロージャーコンサルティング<br/><br/>ツールコンサルティング及びリーガルドキュメンテーションサービス。ツールとは、アニュアルレポート、統合報告書、株主通信等IR活動において必要とする各種情報開示資料で、その企画や作成支援を行っている。リーガルドキュメンテーションは、企業再編やM&A時における各種英文開示書類の作成や和文資料の英訳等である。売上高は、前年同期と比較し8.1%減少。<br/><br/>(3)データベース・その他<br/><br/>「IR-Pro」は、大量保有報告書や国内・海外公募投信における株式組み入れ状況等を提供するIR活動総合サポートシステムであり、株主判明調査の簡易版の位置付けで、大量保有報告書も見ることができる。大量保有報告書に関しては、過去10年分が収録されている。IR担当や証券会社が利用している。また、IR説明会への参加受付や参加者の管理等を上場企業が一括実施することが可能な「アナリストネットワーク」のサービスを行っている。個人株主向けアンケートサービス「株主ひろば」も展開。売上高は前年同期比6.6%の減少。<br/><br/>(執筆:フィスコ客員アナリスト 福田 徹)<br/><br/>

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