<ひと目で分かる昨晩の動き>
【NY市場】
ドル円は続落し、約4カ月ぶりとなる110円74銭近辺まで下落。トランプ政権の政策に対する不透明感が急速に台頭し、米金利の低下に円を買う動きが強まった。
ユーロドルはもみ合い。1.0825まで買われたものの、勢いはなく、1.07台に押し戻されて取引を終える。円高が進んだことから、ユーロ円は3週間ぶりに119円台に。
株式市場はまちまち。ダウは小幅に続落したが、ハイテク銘柄の多いナスダックは27ポイント上昇。
債券相場は続伸。財政刺激策への期待が薄れ、債券への需要が高まった。長期金利は2.40%台へと低下。
金は続伸し、原油は小幅ながら続落。
1月FHFA住宅価格指数 → 0.0%
2月中古住宅販売件数 → 548万件
ドル/円110.74 ~ 111.43
ユーロ/ドル1.0785~ 1.0825
ユーロ/円119.68~ 120.23
NYダウ -6.71 → 20,661.30ドル
GOLD +3.20 →1,249.70ドル
WTI -0.20 → 48.04ドル
米10年国債 -0.013 → 2.405%
【本日の注目イベント】
欧 ユーロ圏3月消費者信頼感(速報値)
欧 ECB経済報告
英 英2月小売売上高
米 2月新築住宅販売件数
米 新規失業保険申請件数
米 イエレン・FRB議長講演
米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
米 カプラン・ダラス連銀総裁講演
トランプ大統領の政策実現に対する見方に黄信号がともり、これまでの期待感が後退して来ました。期待感の後退はドル売り円買いを促し、ドル円は昨日のNY市場で一時110円74銭近辺まで下落し、約4カ月ぶりの円高水準を記録しています。この水準はもちろん今年の円の最高値ですが、昨日の日経平均株価も414円下げ、今年最大の下げ幅でした。投資家が「リスク回避」に動いたということですが、米景気の拡大基調が変わっていない現状では、このまま「リスク回避」の流れが続くかどうかはまだ判断できません。
ドル円は重要なサポートであった111円50-70銭近辺を割り込み、ゆっくりでしたがドルを売って円を買う動きが続きました。円はその他の主要通貨に対しても買われ、ユーロ円は120円を割り込み、豪ドル円も1月6日以来となる84円台まで下落しています。ドルの全面安であると同時に、円の全面高の様相です。
トランプ政権への期待が後退していますが、背景は医療保険制度改革法(オバマケア)を撤廃し、与党共和党が提案する代替案が議会で承認されないのではないかとの懸念が広がっていることが挙げられます。もし議会を通らないということになると、これまでトランプ氏が公約してきたインフラ投資や法人税減税など税制改革も遅れるという見立てで、市場に不透明感が広がっています。法人税減税の大幅引き下げは企業利益のかさ上げにつながり、これが株価を大幅に押し上げた経緯があります。法人税減税が先送りになれば、株式が売られ、株価の下落が円買いを促したというのが足元の動きです。
ドル円は年初来の安値をつけたわけですが、ここからは慎重に状況を判断する必要があります。前述のように、米景気の好調さは現時点では変化はありません。前日今年最大の下げ幅を記録したNYダウも、昨年末に比べればまだ900ドル以上も高い水準です。株価に関しては、トランプラリーで先取りしたということで、今その修正が進んでいるという状況かと思われます。
株価の水準は景気の体温計とも言われますが、その株価が依然として高水準を維持していることからも、足元の米景気は高水準だと言えそうです。ドル円は110円台まで下落しましたが、仮に、さらに下値を試す展開があるとすれば意識されるのは109円93銭近辺です。この水準は昨年11月の大統領選直後に記録した101円20銭から、トランプラリーのピークだった118円66銭までの「半値戻し」にあたるからです。また「110円」という数字も大きな大台であることから意識されます。従って、110円前後が非常に重要な「下値のメド」と言えるでしょう。
トランプ氏が大統領に就任してから2カ月が経過しました。移民問題や、国境に壁をつくるだけではなく、そろそろ経済政策でも「実績」を示さなければならない時ではないでしょうか。氏の「有言実行」が試される時です。本日はNY時間にイエレン議長の講演があります。今後の利上げのタイミングについて言及があるかどうかに注目ですが、東京時間にも、籠池理事長の証人喚問が午前中に行われる予定です。安倍政権に影響を与えかねない問題だけに、こちらにも注目したいと思います。予想レンジは110円70銭~112円程度としたいと思います。