米中貿易戦争の休戦、中東の緊張緩和と、市場を揺るがしてきたリスクが後退しつつあります。その安心感から円売りが主要通貨を押し上げていますが、ドル・円の上昇ペースは依然として緩慢です。この先、次の節目である115円を目指す展開になるでしょうか。<br/><br/><br/>3連休明けの1月14日の東京市場で、ドル・円は昨年5月以来、8カ月ぶりに心理的節目の110円を回復する場面がありました。米中両国の通商合意に関する署名を前に、中国が人民元切り下げを実施しないことや為替に関するデータの公表に同意したとして、アメリカが中国の「為替操作国」認定を解除したのがきっかけです。それにより両国の歩み寄りが好感され、円売り優勢の展開となりました。<br/><br/><br/>節目のポイントでもあり、売りが強いとみられていたにもかかわらず、この時のドル・円はわりとあっさりと大台に乗せました。そのため、ある短期筋は当面は110円台が定着するのではないか、と話していたぐらいです。ところが、その後は下落圧力が強まり、ドルは110円を挟んでもみ合っています。109円台は押し目買いで底堅い半面、110円台は利益確定の売りが上昇を阻止する状態になっています。<br/><br/><br/>年明け後にイランは精鋭部隊の司令官殺害に対する報復措置として、米軍とイラク軍が共用するイラクの空軍施設に十数発のミサイルを発射。その際、中東の緊張に伴う地政学リスクを意識した円買いでドルが107円半ばに売り込まれたため、1週間で3円程度の上昇は確かにペースが急激と言えます。半面、大きなリスクが遠のいたのですから、目先は次の節目である115円を目指しても不自然ではありません。<br/><br/><br/>目下、ドル・円は昨年5月下旬に付けた110円30銭台や110円60銭台が上値メドとされています。同時に、材料出尽くしによるドル売りも進んでいます。実際、アメリカの経済指標のうち消費者物価指数や小売売上高は底堅く、フィラデルフィア連銀製造業景況指数は堅調な内容になりましたが、ドルの上昇は限定的でした。米10年債利回りが節目の2%を下回る低水準のため、ドル買いは縮小しています。<br/><br/><br/>ところで、「為替操作国」の条件を完全に満たしていない中国をトランプ政権が認定したのは、中国が不当に切り下げた人民元によってアメリカの貿易赤字が拡大していると考えたためです。米中の正式通商合意で対中政策は一応解決するかもしれませんが、日本やドイツも為替操作の監視対象国です。連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを休止しており、トランプ政権がドル安誘導のために為替介入する可能性も考えられます。<br/><br/><br/>11月の大統領選に向けアメリカの民主党はすでに自滅の様相で、現時点ではトランプ再選の可能性は濃厚です。しかし、トランプ氏は勝利を確実にするためにどんな常識外れの手段でも使う・・・そんな恐怖感がドル買いを抑制しているとの見方もあります。<br/><br/>(吉池 威)<br/><br/>※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。<br/><br/><br/>

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