10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、トランプ米大統領のツイート「残りの3250億ドル分にも25%の追加関税を課す作業が始まった。中国との交渉を急ぐ必要はない」を受けてダウ平均が350ドル超下落したことで109.48円まで下落した。しかし、「米国と中国は北京で通商協議を継続することで合意した」との報道、トランプ米大統領の「米中協議は建設的。協議は今後も継続」を受けてダウ平均が190ドル超上昇したことで、110.04円付近まで反発した。
本日の東京市場のドル円は、朝鮮半島や中東の地政学リスク、米中貿易戦争や自動車関税への警戒感から軟調推移が予想される。
トランプ米政権は、9日の米中通商協議が不調に終わったことで、中国からの輸入品2000億ドル相当に対する関税率を10%から25%へ引き上げた。10日の米中通商協議は合意には至らなかったが、交渉決裂の事態も回避された。しかし、トランプ米政権は、今後3-4週間の内に合意に達しなければ、追加関税の対象外とされた3250億ドル相当の中国製品に対しても25%の関税を課すと警告している。
中国は報復措置を講じると警告しており、対米輸入1100億ドルに関税率を25%への引き上げる可能性、保有米国債の売却の可能性に要警戒となる。
日米通商協議に関しては、今週末5月18日までに、トランプ米大統領が、「通商拡大法232条」に基づく安全保障の観点から、輸入自動車への関税適用の是非を判断する予定となっている。4月の日米首脳会談では、本格的な貿易交渉は、7月の参議院選挙後に先送りされた模様で、自動車関税の適用判断も180日程度の先送りされる可能性が報じられているものの、米中通商協議の不調を受けて、予断を許さない状況が続く。パーデュー米農務長官は、「米国は年間700億ドル規模の対日貿易赤字を抱え続けている」と、対日貿易赤字への懸念を表明している。
さらに、米中通商協議の不調を受けて、米国経済への警戒感が高まったことで、米国債市場では10年債と3カ月物財務省短期証券(TB)金利の差が一時マイナスに転じている。逆イールド現象は、リセッション(景気後退)の前兆とみなされることから、トランプ米政権による連邦準備制度理事会(FRB)への利下げ圧力が強まる可能性も、ドルの上値を抑える要因となる。
毎年4月中旬に発表されている米財務省の為替報告書は、米中通商協議に合わせて発表が先送りされてきたと思われ、今週の発表に要警戒となる。昨年4月の為替報告書では、「円は過去20年の平均よりも約25%安い」と指摘されており、対日自動車関税25%や、「為替条項」に絡んで要警戒となる。
また、北朝鮮が2017年以来となる短距離ミサイルの発射実験を再開したこと、イランによる中東の米軍基地への攻撃の可能性を受けて、トランプ米政権が、空母打撃群をホルムズ海峡に派遣したことも、地政学リスク回避の円買い要因となる。

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