<ひと目で分かる昨晩の動き>
【NY市場】
米国が中国からの製品2000億ドル相当に25%の関税適用を決めたことでドル円は109円47銭まで下落。ただ、協議が今後も継続されることが確認されたことからドルが買い戻され110円台に乗せ、109円85-90銭で越週。
ユーロドルは反発。1.1253まで買い戻しが進み、この日は終始1.12台で推移。
株式市場は揃って反発。米中協議が継続されることや、関税引き上げが実施されても、米景気への影響は最小限で済むといった見方からダウは114ドル上昇。
債券は反落。長期金利は2.46%台へ上昇。
金は続伸し、原油は小幅ながら続落。
4月消費者物価指数 → 0.3%
4月財政収支 → 1603億ドル
ドル/円 109.47 ~110.04
ユーロ/ドル 1.1226 ~ 1.1253
ユーロ/円 123.09 ~ 123.59
NYダウ +114.01 → 25,942.37ドル
GOLD +2.20 → 1,287.40ドル
WTI -0.04 → 61.66ドル
米10年国債 +0.025 → 2.467%
【本日の注目イベント】
日 3月景気先行指数(速報値)
大方の予想通り、ぎりぎりまで続けられた米中協議では合意が見られず、米国は10日から中国製品2000億ドル(約22兆円)に対する関税を25%に引き上げることを決めました。さらに、本日にも中国に対する第4弾となる、残りの3000億ドルを対象とする品目も公表される予定です。ただ、今後も米中協議は継続されることから、109円台半ばまで売られたドル円はやや反発し、110円台に乗せる場面もありましたが、引き続き上値は重いと見られます。
関税引き上げは米中双方にとって厳しいものですが、その影響は中国の方が圧倒的に大きいようです。日本経済新聞社の調査によると、米国が制裁対象とする中国からの輸入品は独自性が乏しく、関税を課されても値上げしにくいものが7割を占めると伝えています。この7割はいわゆる「価格弾力性」が「1」を超えており、値上がりに対して「弱い」と分析しています。言い換えれば値上げしにくく、値上げをすれば売れ行きがかなり落ち込む可能性が高いということです。中国企業とすれば、引き上げられた関税分をそのまま価格には転嫁できず、自社で吸収するしかないということのようです。このため、今回の貿易摩擦の激化による「痛み」は中国側にあると分析しています。
クドロー国家経済会議(NEC)委員長はFOXテレビとのインタビューで、「トランプ大統領が中国との通商協議で自身の主張を曲げないだろうと示唆した上で、中国製品の関税引き上げによる米経済への影響は最小限で済む」との見方を示しています。また、今回の関税引き上げによるGDPへの影響は、「0.1%未満押し下げる程度」との試算もあります。10日の米株式市場では3主要指数が揃って上昇したのも、このような見立てが支えになっていたようです。
トランプ大統領は11日ツイッターへの投稿で、米国との貿易協議を決着させるために、中国は「今、行動することが賢明だろう」と述べ、「最近の交渉で中国は手ひどく打ちのめされたので、次の選挙まで待った方が良さそうだと感じていると思う」と指摘し、その上で「だが唯一の問題は私が勝利するであろうことを彼らが知っていることだ」とコメントしています。一方中国共産党機関紙、人民日報は、「米中貿易協議が不調に終わった責任は米国が全て負うべきだ」と主張しており、環球時報も、「中国は通商の合意を取りまとめる用意があるが、原則問題に関しては譲歩するつもりはなく、中核的利益については取引しない」と論じていました。(ブルームバーグ)
今回の関税引き上げは米中だけではなく、日本や欧州にもそれなりの影響が出てくるものと思われます。中国側が対抗措置を考えていることもあり、本日公表予定の3000億ドル相当の第4弾にまで貿易摩擦が拡大すれば、世界景気への影響は無視できない状況になります。2008年のリーマンショック後、日米欧の金融当局が一斉利下げで足並みを揃えたような行動に出てくることも、ないとは言えません。その場合、日本は政策金利引き下げ余地が限られているため、日米金利差縮小による急激な円高もその先にちらつきます。世界経済1位と2位の国の覇権争いは、この先どこまで激化するのか読み切れません。
ドル円は2日続けて109円47銭前後で下げ止まっています。これはやはり「週足」の「雲の下限」が支えになっているものと思われますが、ここを明確に割り込むと、その下には108円台半ばまで目立ったサポートは見当たりません。「米国の一人勝ち」といったドルサポート材料もやや存在感を失いつつあります。本日のドル円は109円20銭~110円10銭程度を予想します。
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