■要約<br/><br/>アーバネットコーポレーション<3242>は、東京23区内で駅から徒歩10分以内での投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売(卸売:BtoB)を基軸事業としている。用地取得からマンション開発、そしてマンション販売会社等への1棟販売を手掛けており、設計・開発に特化しているところに特徴がある。設計事務所からスタートしたデベロッパーとして、機能性やデザイン性に優れた「ものづくり」や、開発立地へのこだわりが入居者からの高い支持を受け、空室率の低さを誇っている。都心における不動産投資市況にはやや過熱感がみられるものの、従来からの不動産投資家に加え、将来の老後生活に不安を抱える新たな若年層の個人投資家や海外投資家の参入、相続税の実質増税に対応する富裕層など、いくつもの追い風により業績は好調に推移している。<br/><br/>2017年6月期上期の業績は、売上高が前年同期比36.0%増の10,690百万円、営業利益が同92.6%増の1,761百万円とほぼ計画どおりの好決算となった。投資用マンションの販売戸数は6棟285戸(前年同期比3戸減)とおおむね横ばいであったものの、そのうち4棟232戸が1棟一括直接販売であったことから販売単価が向上したことに加え、大型の用地転売が増収に寄与した。利益面でも、販売単価の向上により売上総利益率が改善したことや、増収効果により大幅な営業増益を実現した。<br/><br/>2017年6月期の業績予想について同社は期初予想を据え置き、売上高を前期比1.7%増の18,000百万円、営業利益を同14.7%増の2,300百万円と増収増益を見込んでいる。増収率が緩やかになっているのは投資用マンション等の販売戸数が12棟599戸(前期比59戸減)に減少することが要因である。ただ、上期における1棟一括直接販売の影響等により、通期でも増収増益を確保する見通しとなっている。また、自社保有の賃貸収益物件については、前期に取得した2棟が期初から寄与する上、上期にも1棟を追加取得したことから、年間の不動産収入として約2億円を見込んでいるようだ(2016年12月末で合計5棟程度を保有)。弊社では、上期実績がほぼ計画どおりであったことに加えて、販売予定の投資用マンションがすべて契約済となっていることなどから、同社の業績予想の達成は可能であるとみている。<br/><br/>同社は、都心における用地取得が困難な状況となっているなかで、2018年6月期の販売予定分として既に560戸を確保しており、依然として販売戸数は高い水準で推移する見通しである。ただし、ピークとなった2016年6月期の販売戸数(662戸)からは2期連続で減少する可能性が高い。弊社では、マイナス金利政策や相続税課税強化などを背景とした個人投資家の根強い需要が続いているものの、都心における不動産市況にやや過熱感がみられることに加え、循環的な景気変動の影響等を勘案して、これまでの積極的な拡大路線が安定路線へと軟着陸するシナリオを念頭に置く必要があるとみている。したがって、今後の関心については、いかに成長スピードを巡航水準に落ち着かせながら、高いレベルで業績の安定化を図っていくのかにある。また、100% 子会社(株)アーバネットリビングによるBtoC事業(アパート及び建売の販売や他社物件の買取再販、マンション管理及び賃貸事業等)や自社保有の収益物件によるストックビジネスの強化など、次の成長ステージに向けた施策の進捗にも注目していきたい。<br/><br/>■Key Points<br/>・2017年6月期上期決算はほぼ計画通りどおりの好決算<br/>・2018年6月期以降は、これまでの拡大路線から安定路線へと軟着陸するシナリオも視野に<br/>・次の成長ステージに向けた施策の進捗に注目<br/><br/>(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)<br/><br/>

<TN>