先週の日経平均は下落。英国のEU離脱を巡る国民投票により、波乱の相場展開となった。EU残留に楽観的な見方が広がるなか、欧米市場とともに日経平均は週初から緩やかなリバウンドをみせていた。また、23日の投票終了後の報道ではEU残留優位とも伝えられ、週末24日の日経平均は寄り付きから買い先行で始まった。しかしその後は、地域ごとに開票結果が順次明らかになるなかで離脱優位との報道受けて急落、再び上昇に転じるなど値動きの荒い展開に。しかし、開票が進む中で離脱を求める票が残留を上回ることが確実になったとの報道を受けて、円相場は一時100円を割り込むと、日経平均はさらに下げ幅を広げ一気に15000円割れに。先物市場では過熱を冷ますサーキットブレーカーが発動する混乱ぶりだった。

日経平均は英国のEU離脱懸念が強まった前週(13-17日)には1000円下げていた。先週は楽観的な見方から700円程度の自律反発をみせていたが、週末には一時1300円を超える下落となっている。EU離脱の票が有効票の過半数に達すると伝わると、一時14900円を割り込む場面をみせたほか、東証1部の騰落銘柄は一時全銘柄が下落した。

EU離脱の可能性、離脱した場合の金融市場の混乱はある程度は予想されていた。しかし、市場のコンセンサスが僅差で残留となるなか、投票締め切り直後の出口調査で残離優勢であったこと、ブックメーカーの残留確立が90%を超えていただけに、ハシゴを外される格好となっている。24日の欧州市場は軒並み急落となり、ユーロストックが8%超、独DAXが7%超、英FTSEが4%超の下落となっている。米国市場ではNYダウが600ドルを超す下落となっている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比170円高の15120円と、一先ず15000円はキープしている。だが、底入れが確認できたわけではなく、まずは市場の落ち着きを見極めることになろう。

その他、予想はされてはいたが、今回の英国の問題が火種となり、他国へのEU離脱を窺わせる「EU離脱ドミノ」の動きが警戒されてくる可能性がある。既にスコットランド首相は独立を示唆したほか、オランダ極右政党党首はEU離脱の是非問う国民投票実施を呼び掛けており、スペイン北東部カタルーニャ自治州首相はスペインからの独立を求める根拠が強まったとの認識を示すなど、EU諸国の政治不安定化に対する懸念から、不透明感の強い相場展開は続きそうである。

週末には先進七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は電話会議を開き、「国民投票の結果を受けた市場動向を注視する」との共同声明を発表。また、日銀が7月の定例会合を待たずに臨時会合を開き、追加緩和に踏み切る可能性があるとの思惑もある。各国の協調政策への思惑も高まりそうであり、一気に混乱解消は期待しづらいだろうが、キャッシュポジションを高め、押し目拾いのタイミングを見極める展開になりそうだ。

英国には自動車や金融を中心に多くの日本企業が進出しているが、英国とEU諸国との間で関税などの見直しも予想されるほか、法律や規制内容が大きく変わるため業績への懸念が高まりやすいだろう。日立<6501>、トヨタ<7203>、日産自<7201>、ホンダ<7267>などは手掛けづらい。そのため、リスク回避の流れからも内需系にシフトしやすい需給状況になりそうである。また、日経平均は15000円での底固めが意識されそうだが、価格帯別出来高の積み上がりからは、支持線として意識される14000-14500円辺りまでは警戒しておく必要がありそうである。

その他、経済指標では28、29日にEU首脳会議が開催されるほか、29日に米FRBが包括的資本分析(CCAR)の結果を公表する。30日に5月の鉱工業生産指数、7月1日に5月の全国消費者物価指数のほか、日銀短観が発表される。大企業製造業DIは前回3月調査でプラス6に悪化し、異次元緩和直後の13年6月以来の低水準となった。予想はプラス4と小幅に悪化する見込み。先行きについては前回同様プラス3と見込まれている。予想以上に悪化した場合、7月追加金融緩和への期待感につながる可能性がありそうだ。その他、5月の家計調査、失業率、有効求人倍率、6月の中国製造業・非製造業PMI、6月の米ISM製造業景況指数がそれぞれ1日に発表される。また、週初にはLINE<3938>の仮条件が決定する。外部環境が不透明なだけに、LINE関連などの中小型株等での短期的な値幅取り狙いの商いに向かわせる可能背もあるだろう。なお、米国は翌週4日が独立記念日の祝日で休場となるため、週半ば以降は商いが細る可能性があり、先物主導で振らされやすい相場環境にもなりやすい。



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