<ひと目で分かる昨晩の動き>
【NY市場】
ドル円は東京時間に107円台に乗せる場面もあり、NY市場でも長期金利の上昇と、黒田日銀総裁の発言を材料に107円20銭までドル高が進み、引け値でも107円台を維持。
ユーロドルは1.29台前半から半ばで方向感が出ない展開。ドル高が進んだ割には、ユーロ円やユーロオージーの買戻しに、ユーロドルの下落は限定的。
株式市場はまちまち。早期利上げ観測の台頭で売り先行で始まったが、エネルギー株の反発などでダウは19ドル下落し、ナスダックは5ポイント上昇。
債券相場は小幅ながら5日続落。この間長期金利は15bp上昇し、この日は2.55%台に乗せて取引を終える。
金は続落し1239ドル台に。原油価格は一時90ドル台まで売られたが、引けは92台まで反発。
新規失業保険申請件数 →31.5万人
8月財政収支 →-1287億ドル
ドル/円106.65~ 107.20
ユーロ/ドル1.2915 ~ 1.2952
ユーロ/円138.11 ~ 138.52
NYダウ -19.71 → 17,049.00ドル
GOLD-6.30 → 1,239.00ドル
WTI+1.16 → 92.83ドル
米10年国債 +0.007 → 2.550%
【本日の注目イベント】
日 黒田・日銀総裁講演(政策研究大学院大学)
欧 ユーロ圏7月鉱工業生産
米 8月小売売上高
米 9月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)
ドル円はついに107円台まで上昇しました。いつものように、東京時間ではドルの上値が重い展開でしたが、午後に安倍首相との会談を終えた黒田日銀総裁の発言が伝わると、106円80銭前後で推移していたドル円は107円03銭まで上昇しました。
NY市場がオープンすると、失業保険申請件数が予想より増えていてことからドル売りが優勢となり106円65銭まで急速に下落したものの、そこから反発し107円20銭までドル高が進みました。このきっかけも、黒田発言でした。総裁は、TV東京のWBSに出演し、「為替水準について言うのは避けたい」としながらも「円安が日本経済にマイナスになることはない」との認識を示しました。また追加緩和についても「経済情勢によって必要があれば、金融対策で対応する」と発言し、「緩和措置にはいろいろな可能性がある」とも語っています。
市場はこの発言に反応したものですが、先日発表されたGDP改定値でも下方修正されたように、夏場以降公表された経済指標には、明らかに消費税増税の影響が出始めていることで、総裁の「追加緩和」への言及により反応したものと考えられます。夏場前には「追加緩和」は年内に実施するとの見方が急速に後退し、一部には実施されないとのいう見方も増えていた状況でした。実際に黒田総裁の発言内容も微妙に変化してきており、特に昨日は安倍首相との会談を終えた後だっただけに、うがった見方もできそうな状況でした。
連日年初来高値を更新しているドル円ですが、ドル買いを牽引しているのは概ね海外勢と見られます。そのため、東京市場では上値が抑えられても海外では一気に高値を更新し、そのまま東京市場に引き継がれその水準が定着する展開が続いています。結局、海外勢が利食いのドル売りを膨らませたときが「調整」ということになりそうです。ドル円は110円に向かっている過程かと思われますが、もし「調整」があるとすれば、来週のFOMC開催の前後になることも考えられます。この予想に論理的な根拠はありませんが、一本調子のドル高はどこかで「調整」を迎えると思いますし、このような重要なイベントがポジション調整のきっかけになり易いことも事実です。
ドル円は既に「週足」チャートでも上値のメドを計ることはできません。「月足」では2008年8月の110円65銭が、リーマンショク前の高値として捉えることができますが、その前の「110円」という水準はやはり大きな節目になろうかと思います。また今回のドル円の上昇パターンは、昨年11月から、約2ヵ月弱で105円台半ばまで急上昇したパターンに似ています。仮にこの時の上昇幅を今回の「雲抜け」した水準に加えてみると、109円25銭前後のレートが導き出されます。ドル高トレンドに乗ることは非常に重要なことですが、今回のステージとしてはそろそろ「警戒水域」に入ってきたと予想していますが、3連休を控えた本日の動きにも注目したいと思います。予想レンジは106円50銭~107円30銭程度としますが、引き続き本日のミシガン大学の消費者マインド指数には注意したと思います。