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ビットコイン/ブックチェーン規制への批判に関する補足情報と再考

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先週発表した、「仮想通貨法が日本のビットコイン/ブロックチェーン業界に長期的に悪影響を及ぼす理由」という記事ですが、業界内外で想定以上に反応やコメントをいただき、今回の規制に関して問題提起をして懸念やデメリットについても考えてもらう、という一応狙いの達成は出来たかなと思います。メディアなどでの仮想通貨法の好意的な解釈ばかりが目立っている中で、賛成するかどうかは別として別の視点からの意見を表明するのは重要です。

 

さて、記事内では仮想通貨法への批判や懸念がメインだったのですが、果たして自分の主張は妥当なものなのか、賛成派はどう考えているのか、などについて、創法律事務所の斎藤創弁護士、金融コンプライアンスのエキスパート後藤さんを先週末ゲストとしてお呼びし、率直な議論をすることが出来ました。ゲストの的確な解説、両サイドからの意見も出て、議論も盛り上がりました。

本当はビットコイナー反省会の特別放送として、ライブ放送、一般ユーザーにも公開しようと思っていたのですが、機材トラブルなどもあり残念ながら「幻の回」になってしまいました…。まあこういうこともあるのは仕方ないので、当日話した内容の一部を前回の記事の補足情報として共有します。

 

ちなみに後藤さんを中心に作成した当日の超詳細な解説資料はすでに公開されており、 放送は出来ませんでしたが、こちらの資料は必読です。

 

仮想通貨法がもたらす恩恵について

前回の記事では、基本的にはあえて厳しいスタンスで懸念すべき事項についてまとめたのですが、同時に今回の仮想通貨法案がもたらす恩恵も大きいことは先週末の議論を通しても確認は出来ました。

 

特に現在日本国内で、仮想通貨を利用した詐欺などが本当に目も当てられない状況になっており、業界全体として大きな懸念にしばらくなっています。規制に対する批判もありますが、もしこのような対応がなければ詐欺被害は増え続けていたことが想定され、業界全体のさらなるイメージ被害などにもつながるおそれがあったので、この詐欺対策と消費者保護の恩恵は過小評価は出来ないと思います。今回の規制はアルトコインやトークンなどを扱う事業者にとってダメージが大きいという批判もしましたが、これはそのまま詐欺的業者の抑止力が強いということも出来ます。

また、これもすでに書いたことですが、より明確な法的環境の整備により、大手企業の参入と業界の確立という点でも大きな意味を持つと思います。今後一般メディアなどでさらにビットコインなどの仮想通貨の取り扱いが増え、今年は新規ユーザー層が爆発的に増えると想定されます。
 

公認仮想通貨の認定プロセスの難しさ

 

これは議論内でもネチネチ質問していたのですが、当局、もしくは認定団体の助けがあったとしても、特定のコインの善悪、良し悪し、新規性、正当性を判断するのは非常に難しいです。

技術的な観点から判断するなら、多くのアルトコインはビットコインのほぼクローンのようなもので、例えば日本発のMonacoinが認可されるなら、元々MonacoinがコピーしたLitecoinはダメなのか?ETHはいいけど、ETCはダメなんですか?その他の類似コインは?などの話にすぐになります。また、当局がそれぞれのコインの細かい技術的な新規性をいちいち精査したりする時間もスキルもないでしょう。なので純粋に技術的に判断して選別するのは無理です。


他にはユーザー数や市場規模で判断するという方法もあると思いますが、これも基本的にNGです。市場規模が大きかったり投機目的でユーザー数だけ多いスキャム的なコインも多いです。単純にユーザー数が多いからということで判断すると、それこそ後で問題になりそうです。

 

では発行者の信頼などではどうかというと、これも色んな意味でもっとダメです。いわゆる業界外の「識者」や企業は詐欺的なコイン業者にしょっちゅう騙されて、露出やイメージ向上に勝手に利用されたりしていますし、業界内の人にとってもスキャムかどうか何とも判断がつかないコインも多いです。

 

最終的には「総合的に」判断するということになると思うのですが、正直に言えばこれはコインの善悪、正当性、革新性というよりは、いかに当局、もしくは業界団体に政治的プレッシャーをかけていくか、が最終的な決定要因になる気がします。それがいいか悪いかはそれぞれの判断だと思いますが、個人的にはやはり懸念が残ります。

 

業界団体の重要性と残る不明点

 

今回の議論で、仮想通貨法に定められいる公認の業界団体の重要性がより明確になったのですが、この業界団体がどのようなプロセスで決定され、いつ発表されるのか、参加の条件/コストなども含めてまだ不明です。業界内では複数の業界団体がすでにあるので、裏で色々進めているのは容易に想像がつきますが、一般ユーザーどころか関連事業者にも情報が公平に伝達されているとは言いづらく、さっそく技術や事業などとは本来外れたところでの裏の駆け引きみたいなのが起きてるわけですね。 (こういうのが仮想通貨認定プロセスなどでも起こりえるのかと…)

 

規制対応にかかるコスト

自分の記事では、登録要件を満たすだけで3000万円~5000万円くらいのコストがかかるという概算をしていましたが、斎藤弁護士によれば事業者登録するだけならそこまではかからないとのことでした。ただし実際に規制対応に必要な条件の調査などをしている杉井さんによれば、新規にコンプライアンス条件を満たすと想定すると、諸々含めると8000万円から1億円くらい規制対応にコストがかかりそうだという意見も出ました。また、すでにより厳しいコンプライアンス条件を満たしているFX業者や銀行などは比較的容易に登録可能になりそうだ、とのことでした。

ということで規制対応コストは通常のスタートアップにとって相当高いハードルになるのはやはり間違いなく、かつ大手にとっては比較的参入しやすいということで、大手有利の環境になるという指摘は間違いではなさそうです。

 

ただし、同時に本人確認のプロセスの代行業者などが現れることも予想されるという話もあり、そうすれば億円程度でかかってくる規制対応コストが1000万円、数百万円くらいまで圧縮される可能性が将来的にあるそうで、必ずしも規制対応コストに関して悲観する必要はないかもしれません。

  

分散P2Pテクノロジーの扱い

仮想通貨法への批判の一つとして、「分散P2P技術の不必要な規制」という点を指摘し、今後重要になってくるLightning Network、分散取引所(Dex)などの技術の開発を阻害する懸念を述べていました。

これに関しては解釈が一部分かれるようでしたが、単純なビットコインのAからBへの高速送金が目的の場合は、中に入ってくるPayment Hubと呼ばれる存在は規制の対象外になる可能性が高いのではないかという話もでました。なので先日発表されたNayutaのサービスなどは規制範囲外になる可能性があります。

 

ただしDexのように異なる仮想通貨間の売買を仲介するような技術は、例えP2Pトラストレス分散化されていようが規制対象になる可能性がやはり高いということです。

 

分散技術を規制する意味自体についても少し議論になったのですが、「規制側に何もしないという選択肢はない」という現状を理解しつつも、技術の性質上規制したとしても犯罪者によるすり抜けはいくらでも出来るので、やはりあまり意味はないという自分の認識は変わりませんでした。

古い規制の常識を新しい技術にそのまま適用したとしても、期待するような効果は得られず市場を歪めるだけという典型的な例ともいえるかもしれません。法律が技術に全然追いつけてないのです。

 

規制は本当に事業者に負の影響をもたらすのか? 

 

自分の前回の記事の大きな主張の一つとして、「特にビットコイン/ブロックチェーン2.0の領域で画期的なサービスに挑戦する事業者」にとって今回の規制は長期的に足かせになる、というものがあったのですが、今回の議論でここの部分に関しては意見が割れました。

斎藤弁護士は、大部分の関連ビジネスは規制により影響は受けず、むしろ開発コミュニティーにとってもプラスになるはずだと主張していました。(資料のQ12を見てください)

確かに、業態によっては今回の規制は大きな影響はないでしょう。取引所は元々何かしらの規制は予想されていたので影響は限定的、また限られた環境内で運用されることを想定するプライベートブロックチェーンの技術の大部分はおそらく規制の影響を受けないでしょう。また、日本は規制が入る今の時点でも取引所とプライベートブロックチェーン以外の事業が元々あまり多くないという実態はあります。

 

ただし、新規性が高く、先鋭的な海外のプロジェクトの多くは何かしらのコイン/トークンを内包しているものが多く、今後そういう海外のサービスを使いづらくなったり、そもそも日本で同様のプロジェクトを始めづらくなる可能性もあり、やはりこの件に関して自分の懸念は消えませんし、今回の規制が事実上国内のブロックチェーン2.0領域を壊滅させる危険性もあると思っています。

例えば、分散クラウドシステム、「Storj」や「Sia」、分散予測市場「Augur」、ゲームアイテムのトークン化をする「Spells of Genesis」「Beyond the Void」などはプラットフォーム上に固有のトークンが存在し、規制によりこれらのトークンの販売が日本で難しくなり、日本から同様の事業を始めるインセンティブは大きくそがれることになります。

より具体的なところで言えば、自分はIndieSquareとしてカウンターパーティトークンを使ったウォレットやAPI、サービスを提供する事業をやっているのですが、今回の規制で少なからず影響を受ける事業者の一人です。トークンは様々な分野に応用可能で、例えばトークンをイベントのチケット代わりに発行して、トレード可能なEチケットそして販売したりすることも出来たりするのですが、今後そういうモデルは国内では難しくなり、実験や応用の幅がかなり制限されそうです。また他にはZaifのBitgirls(アイドルのトークン化)なども4月以降何かしらの変更を強いられるのではないでしょうか。

 

規制の詳細が一部まだはっきりしない部分も多く、当局や業界団体の運用次第では自分が懸念点としてあげたポイントも大きな問題にならない可能性も大いにありますが、そこの部分の当局との確認や折衝、コミュニケーション、もしくは弁護士との確認などのコストもスタートアップにとっては小さくなく、全体として2.0領域にとってのダメージは避けられないと思います。

 

結論


専門家の方たちと改めて深い議論をさせてもらい、一部自分が過剰に考えていた部分などもあったことを確認もできましたが、やはり「仮想通貨のホワイトリスト化の難しさ」「分散技術への不必要な規制」「ビットコイン/ブロックチェーン2.0領域の事業の阻害」などの点で、自分が前回の記事で指摘した懸念点の大筋は間違いではないと改めて思います。

 

ただし、「消費者保護」「業界の健全化」「大手参入、メディア露出などによる一般化」などのメリットが大きいのも間違いではなく、ユーザー、金融機関・大企業、取引所などの事業、プライベートブロックチェーンソリューション、その他の領域での起業家・開発者、など、どの視点からみるかでこの法律の評価は変わると思います。

 


個人的にはビットコイン/ブロックチェーンの革新性は単にトレードや支払い、Fintechに終始するものではなく、真に画期的な応用などは2.0の領域から生まれるのではないか、と前々から発言していますし、その視点から考えれば今回の法律への懸念はやはり小さくはないです。肯定側の意見も十分理解できますが、一般メディアでの受け売りPR的な記事などはある程度注意して見た方がいいでしょう。 

 

 

というわけで、しばらく規制の話に関してはみっちり議論したり、記事としてアウトプットできたりしたので、自分個人としてはこれで十分役割は果たしたかなと思います。これ以上詳しい内容について理解する必要がある人は、弁護士など専門家を雇うべきでしょう。

(ちなみに今回収録失敗したリベンジとして4月の施行直前にまた規制に関する討論会みたいなのを開こうという話も出てましたので、そちらに期待しましょう。多分自分そちらには参加できないですが…)

 

とりあえず自分としては規制の話はこれくらいにしておき、次回はビットコインの裏の世界と真のユースケースの話や、なんちゃって識者が勘違いしている「ビットコイン」「ブロックチェーン」の誤解の指摘記事などを書こうと思ってます。ある意味では規制というのは最もつまらない話の一つで、ビットコインの世界は本当はもっと予測不能で面白く、ワクワクさせてくれる世界ですから。

それでは。

 

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ビットコインについて「ビットコインを語ろう2.0」のブログを中心に、特に非技術者に向けて様々なメディア、講演会などで情報発信している。専門はビットコインのブロックチェーン技術の通貨以外への応用ビットコイン2.0と呼ばれる分野。日本のビットコイン業界を世界に追いつかせるべく、国内、海外の複数のプロジェクトに参画中。
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